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ハビタブルゾーン内を公転していても大気や水は存在しない? 太陽よりも低温で暗い恒星に左右される系外惑星の環境

2023年01月09日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
図1.“プロキシマ・ケンタウリ”を公転する“プロキシマ・ケンタウリb”(イメージ図)。(Credit: ESO)
図1.“プロキシマ・ケンタウリ”を公転する“プロキシマ・ケンタウリb”(イメージ図)。(Credit: ESO)

本当にハビタブルなの? 恒星の活動にも右される系外惑星の環境

地球に住む私たちから見て太陽の次に近い恒星は、地球から約4.3光年の距離にある“プロキシンマ・ケンタウリ”です。
 恒星の中でも太陽系に近い約4.2光年の距離にある赤色矮星“プロキシマ・ケンタウリ”。この“プロキシマ・ケンタウリ”を公転している地球サイズの“プロキシマ・ケンタウリb”は、2016年に発見された系外惑星。“プロキシマ・ケンタウリb”は11.2日周期で公転し、その重力に引っ張られて中央の“プロキシマ・ケンタウリ”も11.2日の周期でぶれている。主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づくことになる。この動く速度(視線速度)に応じて変化する恒星のスペクトルを読み取ることで検出されたのが、惑星“プロキシマ・ケンタウリb”の存在だった。
“プロキシマ・ケンタウリ”で発見された太陽系外惑星“プロキシマ・ケンタウリb”は、ハビタブルゾーンにある地球型惑星として注目されています。
 “ハビタブルゾーン”とは、主星(恒星)からの距離が程良く、惑星の表面に液体の水が安定的に存在できる領域。この領域にある惑星では生命が居住可能だと考えられている。太陽系の場合は地球から火星軌道が“ハビタブルゾーン”にあたる。
ただ、ハビタブルゾーンを公転する惑星の表面に、必ずしも液体の水があるとは限らないんですねー
特に重要になるのが大気の存在です。

水は蒸発しやすい物質であり、表面で液体の水が維持されるにはある程度の厚い大気が必要になります。

そして、大気が維持されるかどうかは、ある程度の重力とともに、恒星の活動にも左右されます。
恒星の放射圧が強ければ、惑星から大気が逃げてしまう可能性があるからです。

“プロキシマ・ケンタウリb”は、地球以上の質量を持つと推定されているので、大気を維持するのに十分な重力はあるはず。
ただ、周回する“プロキシマ・ケンタウリ”が赤色矮星という小さな恒星であることが問題になってきます。
 スペイン・カナリア天体物理研究所のチームにより、“プロキシマ・ケンタウリb”の質量は地球の1.17倍前後(下限値)という値が得られている。
一般に、恒星は質量が小さいほど放射量が少なくなるので、ハビタブルゾーンは恒星に近くなってしまいます。
“プロキシマ・ケンタウリb”の場合だと、中心星“プロキシマ・ケンタウリ”までの距離は地球から太陽までの約20分の1しかありません。

一方で、恒星は質量が小さいほど半径も小さくなり、表面から中心核(コア)までの距離は短くなります。
そう、中心核の激しい活動が表面に現れやすくなるんですねー

恒星の中心核では激しい磁気活動があり、強い磁場は電気を帯びた粒子を加速させ、恒星の表面から噴き出させます。
これが恒星風で、太陽の場合は太陽風と呼ばれています。

このような粒子が惑星の大気にぶつかると、大気を構成する分子が加速され、惑星の重力を振り切って逃げだす原動力になります。

大きい恒星のハビタブルゾーン内では、そのような現象に遭遇することは滅多にありません。
でも、小さい恒星のハビタブルゾーン内では、惑星は激しい恒星風に常時さらされてしまいます。

このため、本当にハビタブル(生命が居住可能)かどうかは議論の余地があります。

地球と比べて最大1000倍の恒星風にさらされている“プロキシマ・ケンタウリb”に大気は存在しない…

ほとんどの場合、特定の恒星の磁気活動を知ることはできません。

それでも、一部の観測可能な恒星の磁気活動を元に、他の恒星の磁気活動を推定することはできます。
ただ、これが正しいかどうかは分かりませんでした。

近年、“プロキシマ・ケンタウリ”の観測値が積み重ねられたことで、磁気活動を直接モデル化できる“ZDI(ゼーマン・ドップラー・イメージング)”を“プロキシマ・ケンタウリ”の研究に利用できるようになったんですねー

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのCecilia Garraffoさんの研究チームは、“プロキシマ・ケンタウリ”の観測データを元に、“ZDI”を用いた磁気活動のモデル化を検証しています。
図2.今回の研究で構築された“プロキシマ・ケンタウリ”の磁気圏。左からZDIモデル、代替モデル、両者の組み合わせによるもの。(Credit: Garraffo, et.al.)
図2.今回の研究で構築された“プロキシマ・ケンタウリ”の磁気圏。左からZDIモデル、代替モデル、両者の組み合わせによるもの。(Credit: Garraffo, et.al.)
その結果、“プロキシマ・ケンタウリ”の磁気活動について詳細なモデルが構築され、“プロキシマ・ケンタウリb”は地球と比較して平均値でも100~300倍、“プロキシマ・ケンタウリ”の活動サイクル(7年周期)のピーク時には、地球の1000倍もの恒星風にさらされると推定されました。

この値では、惑星の表面にある大気や水は短期間で蒸発しきってしまうことに…
なので、“プロキシマ・ケンタウリb”はハビタブルゾーン内を公転しているにもかかわらず、不毛の惑星である可能性が高いことが分かりました。

“プロキシマ・ケンタウリ”のように小さな恒星は、大きな恒星よりも数多く存在すると考えられています。
その中には、ハビタブルゾーン内にあると推定される系外惑星がいくつも見つかっています。

でも、それら系外惑星の居住可能性については、再考する必要があるのかもしれません。
太陽よりも表面温度が低く光度も暗い“赤色矮星”の場合だと、まずは大気を維持するメカニズムが重要なんですね。


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