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火星へ探査に行くとしたら (その2) 人類にとって初めての大規模遠征

2016年01月13日 | 火星の探査
火星へのミッションは、
人類にとっては初めてとなる、宇宙への大規模遠征隊になります。

そのため、宇宙飛行士と積荷を火星に運ぶのに、
5機も宇宙船が必要になると考えられています。

また一部の積み荷は、複数のパーツに分割されていて、
宇宙飛行士が到着した後に組み立てられることになります。

でも火星上昇機“MAV”は、そうは行きません。

チリの舞う火星で宇宙服を着てエンジン積載作業を行い、
その船体で一度きりの離陸に挑むのは、難易度が高すぎるんですねー

なので、火星ミッションにおいてMAVは、
「分割できない最大のペイロード」になり、重量は18トンになる見込みです。

これまでに人類が火星表面に送った最も重いものでも、
探査車“キュリオシティ”の1トンであることを考えると、
“MAV”を送り込むことは、かなり難しいミッションと言えます。


重くなると難しくなるのはなぜ?

理由は、火星の大気が薄いことにあります。
地球の場合、着陸カプセルが基本的に空気抵抗を利用して減速します。

でも、火星の大気の濃さは地球の100分の1…
火星への大気圏突入時にカプセルが燃え尽きることはあっても、
十分な減速を期待することはできないんですねー
摩擦熱が生じるほどには十分濃い火星の大気も、
MAVとその着陸機のような巨大な物体を、
パラシュートを使って減速させるには薄すぎる。

極超音速インフレータブル空力減速機(HIAD)などの技術開発に、
NASAが取り組んでいるのはこのためです。

HIADは巨大な円錐状の膨張式熱シールドで、減速システムとしても機能します。

火星大気圏突入時に、
この熱シールとが展開され、着陸機は極超音速から超音速まで減速。
その後ロケットエンジンを始動して、着陸を制御することになります。
膨張式のシールドのおかげで、MAVは音速の2.5倍から3倍まで減速。
減速するとシールドは分離し、
下降モジュールに搭載されたロケットエンジンを使いながら降下する。

そして着陸には、5~7トンの推進剤が必要になります。

一方、MAVが火星から離陸して重力圏を脱出し、
宇宙飛行士と積荷を地球帰に輸送するのに必要となる推進剤が33トン。

こんな量を事前に送ることは出来ないので、
現地で推進剤を作り出すことが必要にななるんですね。   (つづく


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