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太古の温暖な火星環境では生命の材料分子が効率的に生成されていた! “大気の光化学モデル”を用いて発見

2024年03月01日 | 火星の探査
今回の研究では、太古の火星大気に含まれる、アミノ酸などの生命材料分子の原料となる重要分子“ホルムアルデヒド”の生成量を推定しています。

用いられたのは、“大気の光化学モデル”という、大気中の化学物質の反応と変化を計算するためのモデル。
その結果、ホルムアルデヒド分子が太古の火星の温暖な時代に、継続的に生成されていたことが示されました。

この研究成果は、東北大学大学院 理学研究科 地球物理学専攻の小山俊吾大学院生、同・寺田直樹教授、同・理学研究科 地学専攻の古川善博准教授たちの共同研究チームによるもの。
詳細は、英オンライン総合学術誌“Scientific Reports”に掲載されました。
図1.太古の温暖な火星でホルムアルデヒド(H2CO)が大気中で生成され、海の中で生命の材料分子に変換されるプロセスの概念図。(Credit: Shungo Koyama)
図1.太古の温暖な火星でホルムアルデヒド(H2CO)が大気中で生成され、海の中で生命の材料分子に変換されるプロセスの概念図。(Credit: Shungo Koyama)


太古の火星に存在した温暖な環境

現在の火星は、赤道付近なら夏場に0℃を上回ることもあります。
でも、平均すると約-70度という、地球上と比べてとても寒冷な環境になっています。

ただ、火星の表面には、水が流れた跡と考えられる地形“バレーネットワーク”が残されていたり、鉱物中の地球化学的な証拠から、約38~36億年前の太古の火星には、液体の水や海が存在し得る温暖な時代があったと考えられています。

また、火星は地球よりも小型なので、惑星として出来上がった直後の全面が溶融したマグマオーシャンの時代から地球よりも早く冷え、生命が存在し得る温暖な環境になったと見られています。
そのような太古の火星では、液体の水の存在から、地球よりも先に生命が発生した可能性があると考えている科学者もいます。

でも、地球型の生命が誕生するのに必須なのは、水に加え、アミノ酸などの生命の材料分子です。
そう、単に液体の水があるだけでは生命の誕生は不可能なんですねー

なので、火星における生命の可能性を解明するには、生命の材料分子が存在する可能性を明らかにする必要があります。

そこで、カギを握るのが、生命の材料分子である糖やアミノ酸の原料となる重要な分子として知られるホルムアルデヒドです。
でも、太古の火星でホルムアルデヒドがどのくらい生成し得るかは、これまで分かっていませんでした。


温暖な時期に限って生命の材料分子が継続的に生成されていた

今回の研究では、“大気の光化学モデル”を用いて、太古の火星大気を模した条件下で、ホルムアルデヒドの生成量を計算しています。

計算の結果として導き出されたのは、火山から噴出される水素が一定以上存在すれば、約40億年前から30億年前の広い時代で、多くのホルムアルデヒドが大気中の化学反応によって生成されていたこと。
特に、約38~36億年前の温暖な時期に、ホルムアルデヒドが最も効率的に生成されることが示されました。

また、生命の起源に重要な役割を果たしたと考えられている、“リボ核酸(RNA)”の構成要素“リボース”という糖についても調査しています。

この研究では、今回計算されたホルムアルデヒドの生成量を元に、これまで行われてきたホルムアルデヒドから糖を合成する化学反応“ホルモース反応”の実験データを組み合わせ、太古の火星の海中における“リボース”の生成量を推定。
その結果、太古の火星の温暖な時期に限って、“リボース”に代表される生命の材料分子である糖が継続的に生成されていた可能性が示されました。

火星は、人類がこれまで最も多くの探査機や着陸機、探査車などを送り込んできた惑星です。
現在も複数の探査機や着陸機、探査車が軌道上と地表で活動中で、NASAが送り込んだ“キュリオシティ”や“パーサビアランス”などの探査車による地質調査によって、今回推定された時代の有機物の特徴も明らかにされつつあります。

今後、研究チームでは、今回生成することが推定できたホルムアルデヒドの同位体などの特徴から、当時の地層に堆積した有機物の特徴を推定。
これを、探査によって得られたデータと比較することで、当時の火星でどのように有機物生成が進んだのかを、より詳細に明らかにしたいと考えています。

その一環として、火星表面の地形や推定した当時の気候情報と組み合わせ、火星のどこで生命材料分子ができやすかったのかを、明らかにすることに挑むそうです。


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