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謎に包まれた“暗黒矮小銀河”を微弱な電波の検出から発見

2017年03月01日 | 銀河・銀河団
“暗黒矮小銀河”からの微弱な光と考えられるシグナルを、
アルマ望遠鏡が世界で初めて検出しました。

謎に包まれた“暗黒矮小銀河”の正体が、
この観測結果を手がかりに解明されるのかもしれません。


観測されて来なかった銀河

天の川銀河の約1000分の1以下の質量しかない矮小銀河は、
理論上は宇宙に多く存在していると考えられています。

でも、観測されている数は予測よりもずっと少ないんですねー

その理由の1つとして推測されているのが、
ほとんど光っていない“暗黒矮小銀河”が、宇宙にはたくさん潜んでいるということ。

なので、“暗黒矮小銀河”の正体を解明するには、
銀河からの微弱な光を直接とらえたり、“重力レンズ効果”を利用して、
銀河の質量を測定したりする必要があります。


光の曲がり具合を見る

天体の重力によって光が曲げられる現象を重力レンズ効果といいます。
  重力レンズ効果とは、恒星や銀河などが発する光が、
  途中にある天体などの重力がレンズのような役割を果たすことで、
  曲げられたり、その結果として複数の経路を通過することにより、
  恒星や銀河が発した光の像が複数に見える現象。


  初観測! 重力レンズによる超新星の多重像
    

光の曲がり具合などを観測することによって、
レンズとなる天体の存在や、その質量を知ることができるんですねー
重力レンズ効果による光路の曲がり。
単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像に分かれて見える。

今回、研究グループは、
地球から114億光年離れた“おうし座”方向の重力天体“MG 0414+0534”を、
アルマ望遠鏡で観測しています。

“MG 0414+0534”は、単一の光源が手前の銀河の重力レンズ効果によって、
4つのレンズ像として見えている天体です。

ただ、この4つのレンズ像には、理論予測と異なる明るさの違いがあり、
大きな質量を持つ銀河による重力レンズ効果だけでは、
この明るさの比を説明できませんでした。

そこで考えられるのが、
「“暗黒矮小銀河”も小さなレンズとして働いている」
ということでした。


微弱な電波の起源

観測の結果、
冷たいチリ(小さな岩や氷の粒)によるものと考えられる微弱な電波が、
1つのレンズ像のすぐそばで検出されます。

そして、そのチリの方向、
約60~80光年先のところに“暗黒矮小銀河”があると仮定すると、
レンズ像の明るさの比や、可視光線で観測されているレンズ像の減光を、
説明できることが分かりました。
アルマ望遠鏡による“MG 0414+0534”のサブミリ波画像。
4つのレンズ像(A1、A2、B、C)と、
赤い円内が“暗黒矮小銀河”由来の光と考えられる。

そう、微弱な電波の起源は“暗黒矮小銀河”だとする証拠が見つかったんですねー

今後必要になるのは、重力レンズ像のわずかな歪みから、
“暗黒矮小銀河”までの距離や質量分布などを測定すること。

より高い解像度の観測を行えば、
“暗黒矮小銀河”の正体の解明に向けた研究は、さらに進みそうですね。


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