重力レンズ効果の影響を受けたクエーサーの観測により、宇宙の膨張率が高い精度で求められたんですねー
その値は初期宇宙の観測から得られる膨張率に比べ、局所宇宙の膨張率が予想以上に速いことを示唆することに…
2つの値の間に見られる矛盾を説明するには、新たな物理が必要になるようですよ。
宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値
宇宙は誕生してから膨張し続けています。
その膨張率は“ハッブル定数”と呼ばれ、宇宙の年齢や構造を理解するうえで重要なパラメーターになるんですねー
ただ、定数とは言っても、複数の手法によって導かれた値には食い違いが見られているので、正確な値を調べたり違いの原因を探ったりする研究が進められています。
今回の研究を進めているのは、ドイツ・マックス・プランク物理学研究所と台湾中央研究院天文及び天体物理研究所のチーム“HOLiCOW”。
ハッブル定数の値を調べるため、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡を用いて、約30億光年から65億光年彼方に位置する6個のクエーサーを観測しています。
クエーサーは銀河中心のブラックホールに物質が落ち込むことで輝いていて、遠方にあるにもかかわらず明るく見える天体。
重力レンズ効果
ある天体の重力がレンズのような役割を果たして、より遠方の天体からの光を曲げたり、増幅したりする現象を“重力レンズ効果”といいます。
たとえば、遠方のクエーサーの手前に大質量の銀河があると、銀河がレンズ源として働き、背景のクエーサーの像が複数に分かれたり、アーク状に引き伸ばされたりします。
一般にレンズとなる銀河は、完全に球形の歪みを生み出すことはできず、またレンズとなった銀河とクエーサーとは完全に一直線には並びません。
なので、背景のクエーサーの複数の像から届く光は、それぞれわずかに異なる距離の経路を辿ることになるんですねー
そして、クエーサーの輝きが時間によって変化すると、異なる像が異なる時刻に明滅する様子を見ることになり、その時間の遅れは光がやってくる経路の長さに依存することになります。
この遅れは宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値と直接的に関係していて、複数の像の間での時間的遅れを正確に測ることで、高い精度で“ハッブル定数”を確かめることができます。
より精度が高い“ハッブル定数”を得る研究
今回観測された6個のクエーサーの手前(地球とクエーサーとの間)にはそれぞれ別の銀河が存在していて、その銀河による“重力レンズ効果”を受けてクエーサーからの光は複数の像に分かれて見えていました。
各像からの光はわずかに異なる経路をたどって地球に到達しているので、光が到達するタイミングも異なっています。
この時間差は経路の差を反映し、経路の差はレンズ源となる銀河の物質分布やクエーサーと銀河それぞれの距離に依存しているので、時間差からは天体までの距離を推定することができます。
こうして得られた距離と、赤方偏移の観測から得られる銀河の後退速度との関係から、研究チームが導き出した“ハッブル定数”の値は73㎞/s/Mpc。
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。
これは、銀河が地球から1Mpc(約326万光年)遠くなるごとに、宇宙の膨張に伴って銀河が遠ざかっていく速度が秒速73kmずつ大きくなることを意味します。
研究チームでは3年前にも同様の手法で“ハッブル定数”を導き出していました。
でも、より精度が高い値が得られたのが今回の研究でした。
この値は、変光星や超新星の観測をもとにした研究成果の1つである74km/s/Mpcには近いもの。
でも、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”による宇宙背景放射の観測から導かれた67km/s/Mpcと比べると大きいものでした。
今回の研究は、地球から比較的近い宇宙の観測データから“現在の宇宙の膨張率”を導いたものでした。
でも、“プランク”の結果は誕生から約38万年後の宇宙の観測から導いた“現在の宇宙の膨張率”です。
本来は、どちらの求め方でも同じ値が得られるはず… でも、そうなっていないんですねー
今回の結果から分かってきたのは、両者の間に偶然や誤差ではない食い違いが存在すること。
この可能性が3年前の研究よりもさらに高まったことになります。
2つの値の間に見られる矛盾を説明するには、新たな物理が必要になるようですよ。
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その値は初期宇宙の観測から得られる膨張率に比べ、局所宇宙の膨張率が予想以上に速いことを示唆することに…
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宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値
宇宙は誕生してから膨張し続けています。
その膨張率は“ハッブル定数”と呼ばれ、宇宙の年齢や構造を理解するうえで重要なパラメーターになるんですねー
ただ、定数とは言っても、複数の手法によって導かれた値には食い違いが見られているので、正確な値を調べたり違いの原因を探ったりする研究が進められています。
今回の研究を進めているのは、ドイツ・マックス・プランク物理学研究所と台湾中央研究院天文及び天体物理研究所のチーム“HOLiCOW”。
ハッブル定数の値を調べるため、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡を用いて、約30億光年から65億光年彼方に位置する6個のクエーサーを観測しています。
クエーサーは銀河中心のブラックホールに物質が落ち込むことで輝いていて、遠方にあるにもかかわらず明るく見える天体。
ハッブル宇宙望遠鏡とケック望遠鏡で撮影された、重力レンズ効果の影響を受けた6つのクエーサー |
重力レンズ効果
ある天体の重力がレンズのような役割を果たして、より遠方の天体からの光を曲げたり、増幅したりする現象を“重力レンズ効果”といいます。
たとえば、遠方のクエーサーの手前に大質量の銀河があると、銀河がレンズ源として働き、背景のクエーサーの像が複数に分かれたり、アーク状に引き伸ばされたりします。
一般にレンズとなる銀河は、完全に球形の歪みを生み出すことはできず、またレンズとなった銀河とクエーサーとは完全に一直線には並びません。
なので、背景のクエーサーの複数の像から届く光は、それぞれわずかに異なる距離の経路を辿ることになるんですねー
そして、クエーサーの輝きが時間によって変化すると、異なる像が異なる時刻に明滅する様子を見ることになり、その時間の遅れは光がやってくる経路の長さに依存することになります。
この遅れは宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値と直接的に関係していて、複数の像の間での時間的遅れを正確に測ることで、高い精度で“ハッブル定数”を確かめることができます。
より精度が高い“ハッブル定数”を得る研究
今回観測された6個のクエーサーの手前(地球とクエーサーとの間)にはそれぞれ別の銀河が存在していて、その銀河による“重力レンズ効果”を受けてクエーサーからの光は複数の像に分かれて見えていました。
各像からの光はわずかに異なる経路をたどって地球に到達しているので、光が到達するタイミングも異なっています。
この時間差は経路の差を反映し、経路の差はレンズ源となる銀河の物質分布やクエーサーと銀河それぞれの距離に依存しているので、時間差からは天体までの距離を推定することができます。
こうして得られた距離と、赤方偏移の観測から得られる銀河の後退速度との関係から、研究チームが導き出した“ハッブル定数”の値は73㎞/s/Mpc。
膨張する宇宙の中では、遠方の天体ほど高速で遠ざかっていくので、天体からの光が引き伸ばされてスペクトル全体が低周波側(色で言えば赤い方)にズレてしまう。この現象を赤方偏移といい、この量が大きいほど遠方の天体ということになる。
これは、銀河が地球から1Mpc(約326万光年)遠くなるごとに、宇宙の膨張に伴って銀河が遠ざかっていく速度が秒速73kmずつ大きくなることを意味します。
研究チームでは3年前にも同様の手法で“ハッブル定数”を導き出していました。
でも、より精度が高い値が得られたのが今回の研究でした。
この値は、変光星や超新星の観測をもとにした研究成果の1つである74km/s/Mpcには近いもの。
でも、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”による宇宙背景放射の観測から導かれた67km/s/Mpcと比べると大きいものでした。
今回の研究は、地球から比較的近い宇宙の観測データから“現在の宇宙の膨張率”を導いたものでした。
でも、“プランク”の結果は誕生から約38万年後の宇宙の観測から導いた“現在の宇宙の膨張率”です。
本来は、どちらの求め方でも同じ値が得られるはず… でも、そうなっていないんですねー
今回の結果から分かってきたのは、両者の間に偶然や誤差ではない食い違いが存在すること。
この可能性が3年前の研究よりもさらに高まったことになります。
2つの値の間に見られる矛盾を説明するには、新たな物理が必要になるようですよ。
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