2016年に日本でも上映された映画“オデッセイ(原題はThe Martian(火星の人))”では、マットデイモン演じる宇宙飛行士マーク・ワトニーが火星に一人取り残されて、ジャガイモを栽培しながらサバイバルを続けるシーンがあります。
NASAでは、2040年までに火星への最初の有人飛行を実現するとしていますが、このような長期ミッションでは克服すべき課題がいくつかあります。
その一つが、火星滞在中の食料をどう確保するのかという問題です。
もちろん、最初の有人探査では、必要となる物資は地球から運搬することになるはずです。
では、続けて行われる火星での長期滞在ミッションでも、物資は地球から運搬されるのでしょうか?
やはり、火星ミッションでの生活に必要な物資は、一部でも火星で賄う必要があるはずです。
今回の研究では、火星で農業を実現できるかどうかを検証するために、土壌や大気を調査する探査ローバー(探査車)“AgroMars”を提案しています。
火星の土壌を活用した宇宙農業
火星で農業を始めようとすると障害となるものがあります。
それは、地球の約1000分の6しかない気圧の低さや、摂氏マイナス153度からプラス20度の範囲内という極端な温度(差)、地球の約700倍もある高い放射線量といった過酷な環境条件です。
こうした困難に対処するため、土壌を必要としない“ハイドロポニックス(水耕栽培)”や“エアロポニックス(空中栽培)”の研究が進められています。
また、人工照明を備え、温度・湿度を調整できる特殊な“グリーンハウス”の実現や、過酷な環境でも農作物を生育できるようにする遺伝子工学の進展も、火星での農業を実現するための重要なカギとなるようです。
ただ、今回の研究では、こうしたハイドロポロニックスやエアロポロニックスとは別の角度から、火星での農業の可能性を追求しています。
火星の表面は、“レゴリス”と呼ばれる細かい砂状の物質の層で覆われています。
研究グループが探ろうしているのは、レゴリスによる“土壌”を活用して宇宙農業が実現できるかどうか。
映画オデッセイに近いやり方なのかもしれません。
火星の土壌を測定する探査車
今回の研究で提案しているのは、重量が約950キロの火星探査車“AgroMars”です。
NASAが運用中の“パーサビアランス”や“キュリオシティ”と似た性能を持つよう設計することが想定されています。
“AgroMars”の重量を考慮すると、打ち上げに必要なのは、20トン以上のペイロードを宇宙空間に輸送できるロケット。
スペースX社のファルコン9ロケットでの打ち上げを、研究グループでは想定しているようです。
“AgroMars”に搭載が想定されているのは、火星上の鉱物の組成を調べるための“X線・赤外線分光装置”、土性(※1)を調べるための“高解像度カメラ”、土壌が酸性なのかアルカリ性なのかを計る“pH計”、有機化合物の検出および分析のための“ガスクロマトグラフ質量分析計”などの科学装置です。
研究グループでは、これらのパラメータを計測することが、火星の土壌が農業に向いているかを検査するのに必要だと考えています。
ミッションは5つの段階に分けられています。
まず、準備段階としてミッションの目的を定義し、導入段階でコンポーネントの信頼性を検証した後に、打ち上げ段階で火星への安全かつ精密な着陸を実現。
“AgroMars”が現地で探査した土壌サンプルのデータを地球へ転送し、追加のデータ分析によって火星の土壌が農業に向いているかどうかの評価が下されることになります。
研究グループの試算では、“AgroMars”の開発や打ち上げに約22億ドル、火星探査に約5億ドル、合計27億ドル程度の費用が必要となるようです。
こうした費用には、“AgroMars”に電力を供給するための放射性同位体熱電気転換器(※2)の費用も含まれています。
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NASAでは、2040年までに火星への最初の有人飛行を実現するとしていますが、このような長期ミッションでは克服すべき課題がいくつかあります。
その一つが、火星滞在中の食料をどう確保するのかという問題です。
もちろん、最初の有人探査では、必要となる物資は地球から運搬することになるはずです。
では、続けて行われる火星での長期滞在ミッションでも、物資は地球から運搬されるのでしょうか?
やはり、火星ミッションでの生活に必要な物資は、一部でも火星で賄う必要があるはずです。
今回の研究では、火星で農業を実現できるかどうかを検証するために、土壌や大気を調査する探査ローバー(探査車)“AgroMars”を提案しています。
この研究は、フランス高等科学技術学院のSamuel Duarte Dos Santosさんが率いる研究グループが進めています。
火星の土壌を活用した宇宙農業
火星で農業を始めようとすると障害となるものがあります。
それは、地球の約1000分の6しかない気圧の低さや、摂氏マイナス153度からプラス20度の範囲内という極端な温度(差)、地球の約700倍もある高い放射線量といった過酷な環境条件です。
こうした困難に対処するため、土壌を必要としない“ハイドロポニックス(水耕栽培)”や“エアロポニックス(空中栽培)”の研究が進められています。
また、人工照明を備え、温度・湿度を調整できる特殊な“グリーンハウス”の実現や、過酷な環境でも農作物を生育できるようにする遺伝子工学の進展も、火星での農業を実現するための重要なカギとなるようです。
図1.火星で作物を育てる温室のコンセプト。LED照明と水耕栽培の利用を想定している。(Credit: NASA/SAIC) |
火星の表面は、“レゴリス”と呼ばれる細かい砂状の物質の層で覆われています。
研究グループが探ろうしているのは、レゴリスによる“土壌”を活用して宇宙農業が実現できるかどうか。
映画オデッセイに近いやり方なのかもしれません。
火星の土壌を測定する探査車
今回の研究で提案しているのは、重量が約950キロの火星探査車“AgroMars”です。
NASAが運用中の“パーサビアランス”や“キュリオシティ”と似た性能を持つよう設計することが想定されています。
図2.研究グループが提案する火星探査車“AgroMars”。火星の土壌や大気を調査するために使用される。(Credit: M. Duarte dos Santos, et al. ) |
スペースX社のファルコン9ロケットでの打ち上げを、研究グループでは想定しているようです。
“AgroMars”に搭載が想定されているのは、火星上の鉱物の組成を調べるための“X線・赤外線分光装置”、土性(※1)を調べるための“高解像度カメラ”、土壌が酸性なのかアルカリ性なのかを計る“pH計”、有機化合物の検出および分析のための“ガスクロマトグラフ質量分析計”などの科学装置です。
研究グループでは、これらのパラメータを計測することが、火星の土壌が農業に向いているかを検査するのに必要だと考えています。
※1.どの程度水分を含む(含みうる)のか、粒の粗さ、吸収出来る養分の量など、土壌性質のこと。
さらに、土性の計測を助けるドリルも“AgroMars”に搭載することが計画されています。ミッションは5つの段階に分けられています。
まず、準備段階としてミッションの目的を定義し、導入段階でコンポーネントの信頼性を検証した後に、打ち上げ段階で火星への安全かつ精密な着陸を実現。
“AgroMars”が現地で探査した土壌サンプルのデータを地球へ転送し、追加のデータ分析によって火星の土壌が農業に向いているかどうかの評価が下されることになります。
研究グループの試算では、“AgroMars”の開発や打ち上げに約22億ドル、火星探査に約5億ドル、合計27億ドル程度の費用が必要となるようです。
こうした費用には、“AgroMars”に電力を供給するための放射性同位体熱電気転換器(※2)の費用も含まれています。
※2.放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope Thermoelectric Generator; RTG)は、放射性同位体の崩壊時に発生する熱エネルギーを電気エネルギーに変換する原子力電池の一種。
“AgroMars”によるミッションを取り上げた宇宙開発・天文学ニュースサイト“Universe Today”は、ミッションが成功するかどうかは不明だが、火星に恒久的な基地を建設するのであれば、“AgroMars”のように火星の環境を理解することが必要だと記事を締めくくっています。こちらの記事もどうぞ
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