地球から約1000光年の距離にあるブラックホールが見つかりました。
このブラックホールは、これまでに知られている中では最も地球に近いもの。
2個の恒星と三重連星を構成しているようです。
1000光年彼方にある三重連星
ぼうえんきょう座の方向約1000光年彼方にある恒星“HR 6819(ぼうえんきょう座QV)”は、肉眼でも見ることができる5.3等級の天体です。
この星は“Be型星”と呼ばれるタイプの星で、比較的高温で青白く、輝線スペクトルを持つという特徴があります。
これまでの分光観測で分かっていたのは、“HR 6819”のスペクトルには、この“Be型星”とは別の“B3型”というスペクトル型の星の光が混ざっていること。
“HR 6819”は、“Be型星”と“B3型星”からなる連星であることを示唆していました。
今回の研究では、連星系の研究の一環としてヨーロッパ南天天文台の研究チームが“HR 6819”の観測を実施。
すると、“B3型星”の方のスペクトルに、わずかなふらつきがあることを見つけます。
このふらつきは何を意味しているのでしょうか?
考えられるのは“第3の天体”の存在です。
“B3型星”は、さらに別の“第3の天体”との連星になっているということです。
このことを確認するため研究チームは、南米チリのヨーロッパ南天天文台・ラシーヤ観測所にあるMPG/ESO 2.2m望遠鏡で数か月にわたる詳細な観測を実施。
その結果、“B3型星”と“第3の天体”とが、40日周期で回り合っていることを突き止めます。
今回の研究で分かってきたのは、内側に“B3型星”と“第3の天体”が回り合う連星系があり、さらにその外側を“Be型星”が公転していること。
そう、“HR 6819”は三重連星だということです。
“第3の天体”の正体
連星が回る周期が分かると、2個の天体の質量を求めることができます。
観測結果から見積もって分かった内側の連星の質量は、“B3型星”が太陽質量の約5倍以上、“第3の天体”は太陽質量の約4.2倍以上というもの。
通常、質量が太陽の4.2倍ほどの恒星は“B7型”という青白い星のスペクトルを持っています。
でも、“HR 6819”の光に“B7型”の星のスペクトルの特徴は全く見られず… “Be型星”と“B3型星”の光以外は含まれていませんでした。
このため、“第3の天体”の正体は普通の恒星ではないことになります。
恒星以外のコンパクトな天体の候補になるのは、巨大惑星や褐色矮星、もしくは白色矮星・中性子星・ブラックホールなどがあります。
恒星進化の理論で知られているのは、白色矮星は1.4太陽質量、中性子星だと2.6太陽質量以上のものは存在しないこと。
“第3の天体”の質量が太陽の4.2倍ほどなので、研究チームではブラックホール以外にあり得ないと結論付けています。
激しい活動を見せないブラックホール
一般的に、ブラックホールは強い重力で周囲の物質を吸い込むため、周りに降着円盤と呼ばれるガス円盤を形成します。
さらに、降着円盤の物質が激しく回転することで発熱しX線などを強く放射。
また、ブラックホールの自転軸の方向に強力なジェットを噴出するものもあります。
これまでに見つかっているブラックホールのほとんどでは、こうした激しい活動が見られています。
でも、今回見つかった“HR 6819”のブラックホールでは、周囲の環境と相互作用している様子が全く見られず…
まさに真っ黒の珍しいブラックホールでした。
これまでに、私たちの天の川銀河で見つかったブラックホールは20個ほど。
その中で最も太陽系に近いものでも約3000光年彼方、有名な“はくちょう座X-1”だと約6000光年彼方になります。
今回見つかった“HR 6819”の距離は地球から約1000光年彼方で、地球に近いブラックホールの記録を更新するものでした。
天の川銀河の年齢を考えれば、実際には膨大な数の恒星が一生終えてブラックホールになっているはず。
でも、激しい活動を見せないブラックホールだと、その存在に気付くことが難しいんですねー
では、こうした静穏なブラックホールは、天の川銀河のどこに隠れているのでしょうか?
この問題を解くヒントになるのが、今回地球の近くで見つかった“HR 6819”なのかもしれません。
“HR 6819”のような三重連星をたくさん見つけることができれば、近年“LIGO”などの重力波望遠鏡で検出されている、強い重力波を放出する激しい合体現象についても、謎を解く手がかりが得られるかもしれません。
三重連星系の内側の連星が“2個のブラックホール”か“ブラックホールと中性子星”というペアの場合に、こうした合体現象が起こりうると考える研究者もいます。
内側の連星に外側の星が接近遭遇することで、内側の連星の合体を引き起こし重力波が生じるそうです。
“HR 6819”のような多重連星系を研究することは、天体同士の衝突が多重連星系の中でどのように起こるのかを理解するのに役立ちそうですね。
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宇宙から重力波を観測するのに重要な天体! “ヘリウム白色矮星”の連星が見つかりました。
このブラックホールは、これまでに知られている中では最も地球に近いもの。
2個の恒星と三重連星を構成しているようです。
1000光年彼方にある三重連星
ぼうえんきょう座の方向約1000光年彼方にある恒星“HR 6819(ぼうえんきょう座QV)”は、肉眼でも見ることができる5.3等級の天体です。
この星は“Be型星”と呼ばれるタイプの星で、比較的高温で青白く、輝線スペクトルを持つという特徴があります。
ぼうえんきょう座の恒星“HR 6819”(中央の青い星)。1個の恒星に見えるが、実際には内側に恒星とブラックホールの連星があり、その外側にもう1つの恒星が回っている三重連星であることが分かった。(Credit: ESO/Digitized Sky Survey 2. Acknowledgement: Davide De Martin) |
“HR 6819”は、“Be型星”と“B3型星”からなる連星であることを示唆していました。
今回の研究では、連星系の研究の一環としてヨーロッパ南天天文台の研究チームが“HR 6819”の観測を実施。
すると、“B3型星”の方のスペクトルに、わずかなふらつきがあることを見つけます。
このふらつきは何を意味しているのでしょうか?
考えられるのは“第3の天体”の存在です。
“B3型星”は、さらに別の“第3の天体”との連星になっているということです。
このことを確認するため研究チームは、南米チリのヨーロッパ南天天文台・ラシーヤ観測所にあるMPG/ESO 2.2m望遠鏡で数か月にわたる詳細な観測を実施。
その結果、“B3型星”と“第3の天体”とが、40日周期で回り合っていることを突き止めます。
今回の研究で分かってきたのは、内側に“B3型星”と“第3の天体”が回り合う連星系があり、さらにその外側を“Be型星”が公転していること。
そう、“HR 6819”は三重連星だということです。
三重連星系“HR 6819”のイメージ図。内側に“B3型”の恒星(水色の軌跡)と、ブラックホール(赤い軌跡)との連星系があり、40日周期で互いの周りを回っている。ブラックホールには激しい活動性が見られないので光では見えない。その外側をもう一つの“Be型星”が回っている(水色の大きな軌跡)。(Credit: ESO/L. Calçada) |
“第3の天体”の正体
連星が回る周期が分かると、2個の天体の質量を求めることができます。
観測結果から見積もって分かった内側の連星の質量は、“B3型星”が太陽質量の約5倍以上、“第3の天体”は太陽質量の約4.2倍以上というもの。
通常、質量が太陽の4.2倍ほどの恒星は“B7型”という青白い星のスペクトルを持っています。
でも、“HR 6819”の光に“B7型”の星のスペクトルの特徴は全く見られず… “Be型星”と“B3型星”の光以外は含まれていませんでした。
このため、“第3の天体”の正体は普通の恒星ではないことになります。
恒星以外のコンパクトな天体の候補になるのは、巨大惑星や褐色矮星、もしくは白色矮星・中性子星・ブラックホールなどがあります。
恒星進化の理論で知られているのは、白色矮星は1.4太陽質量、中性子星だと2.6太陽質量以上のものは存在しないこと。
“第3の天体”の質量が太陽の4.2倍ほどなので、研究チームではブラックホール以外にあり得ないと結論付けています。
激しい活動を見せないブラックホール
一般的に、ブラックホールは強い重力で周囲の物質を吸い込むため、周りに降着円盤と呼ばれるガス円盤を形成します。
さらに、降着円盤の物質が激しく回転することで発熱しX線などを強く放射。
また、ブラックホールの自転軸の方向に強力なジェットを噴出するものもあります。
これまでに見つかっているブラックホールのほとんどでは、こうした激しい活動が見られています。
でも、今回見つかった“HR 6819”のブラックホールでは、周囲の環境と相互作用している様子が全く見られず…
まさに真っ黒の珍しいブラックホールでした。
これまでに、私たちの天の川銀河で見つかったブラックホールは20個ほど。
その中で最も太陽系に近いものでも約3000光年彼方、有名な“はくちょう座X-1”だと約6000光年彼方になります。
今回見つかった“HR 6819”の距離は地球から約1000光年彼方で、地球に近いブラックホールの記録を更新するものでした。
天の川銀河の年齢を考えれば、実際には膨大な数の恒星が一生終えてブラックホールになっているはず。
でも、激しい活動を見せないブラックホールだと、その存在に気付くことが難しいんですねー
では、こうした静穏なブラックホールは、天の川銀河のどこに隠れているのでしょうか?
この問題を解くヒントになるのが、今回地球の近くで見つかった“HR 6819”なのかもしれません。
“HR 6819”のような三重連星をたくさん見つけることができれば、近年“LIGO”などの重力波望遠鏡で検出されている、強い重力波を放出する激しい合体現象についても、謎を解く手がかりが得られるかもしれません。
三重連星系の内側の連星が“2個のブラックホール”か“ブラックホールと中性子星”というペアの場合に、こうした合体現象が起こりうると考える研究者もいます。
内側の連星に外側の星が接近遭遇することで、内側の連星の合体を引き起こし重力波が生じるそうです。
“HR 6819”のような多重連星系を研究することは、天体同士の衝突が多重連星系の中でどのように起こるのかを理解するのに役立ちそうですね。
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