国際宇宙ステーションの日本実験棟“きぼう”に設置されているX線観測装置“MAXI”。
この装置のデータから、世界初となるX線CCDでの軟X線全天マップが作成されたんですねー
そして、見えてきたのが非常に大きく広がった軟X線の巨大構造でした。
この巨大構造、まだ詳しい起源は分かっていないようです。
軟X線領域での全天マップ
宇宙のあらゆる方向から地球にやってくる電磁波の強さを描き出した“全天マップ”は、天文学で重要なデータの一つになります。
有名なのは、ビッグバンの熱放射の名残りであるマイクロ波を全天に渡って観測したもの。
NASAの“COBE”や“WMAP”、ヨーロッパ宇宙機関の“プランク”などの天文衛星で得られた宇宙マイクロ波背景放射の全天マップです。
一方、X線についても、いくつかの全天マップが過去に得られています。
ドイツのX線観測衛星“ROSAT”で、軟X線の全天マップが作られたのは1990年代のことでした。
ただ、この“ROSAT”の全天マップには、“太陽風電荷交換反応”のX線が混ざっていることが後の研究で分かります。
遠い宇宙からのX線放射だけではなかったんですねー
その後、日本の“あすか”や“すざく”、NASAの“チャンドラ”、ヨーロッパ宇宙機関の“XMMニュートン”などのX線天文衛星が打ち上げられます。
でも、これらの衛星のX線望遠鏡は視野が狭く、広い範囲を観測するのには向かいないもの…
このため、軟X線領域での全天マップは長い間“ROSAT”のデータしか利用できない状況でした。
世界初のX線CCDで得られた軟X線全天マップ
一方、国際宇宙ステーションの日本実験棟“きぼう”でも、2009年からX線の観測装置が稼働していました。
約90分で地球を一周する国際宇宙ステーションの動きを利用して、宇宙の全方向のX線をモニターする全天X線監視装置“MAXI”です。
今回、JAXA宇宙科学研究所の“MAXI”プロジェクトチームは、新しい軟X線の全天マップを公開。
2009年8月~2011年8月の2年間に“MAXI”のX線CCDカメラ“SSC”で観測されたデータを元にしたマップでした。
“SSC”の特徴はX線の検出にCCDを採用していること。
“ROSAT”で使われた比例計数管よりもX線のエネルギー分解能が良く、遠くの宇宙からのX線と地球近辺の“太陽風電荷交換反応”に由来するX線とを区別し易くなっています。
また、“MAXI”は国際宇宙ステーションの周回に合わせて天空を繰り返しスキャンしています。
なので、最終的には1000回分以上の観測データを合成することができ、全天に渡って滑らかなマップを作ることができました。
X線CCDで得られた軟X線の全天マップは世界初の成果でした。
軟X線の巨大構造
今回得られた全天マップでは、ブラックホールや中性子星などの点源のX線天体の他にもとらえられていたものがありました。
それは、赤色で表されるエネルギーの低い、広がりを持ったX線の分布です。
プロジェクトチームでは、この広がったX線源のうち、特に天の川銀河の北側に円弧状に広がる“ノース・ポーラー・スパー”と呼ばれる構造のエネルギースペクトルを調査。
その結果、この広がったX線源は約100万度の高温プラズマであり、地球近辺での“太陽風電荷交換反応”によるX線ではないことが確かめられました。
また、今回の全天マップの中央部分に写っていたのが、天の川銀河の中心部や“ノース・ポーラー・スパー”を含む、非常に大きく広がった軟X線の巨大構造でした。
この軟X線巨大構造は“ROSAT”の全天マップにもみられるもので、これとほぼ同じ領域にはガンマ線を放射する“フェルミバブル”と呼ばれる大きな構造も見つかっています。
この巨大構造の正体として考えられているのは、天の川銀河に分布する大規模な高温プラズマなんですが、まだ詳しい起源は分かっていません。
軟X線巨大構造のうち、特にX線が強い領域は天の川銀河面よりやや北寄りの位置を中心に分布していました。
このことから、巨大構造は地球に比較的近い距離にある超新星残骸が見えているものかもしれないとプロジェクトチームでは考えています。
ただ、弱いX線を放射している部分まで含めると、銀河面に対して南北にほぼ対象に広がっているように見えるんですねー
天の川銀河の中心ブラックホールが過去に激しい活動をしていた名残りという可能性もあります。
今後期待されるのは、“MAXI”のX線CCDカメラ“SSC”で観測されたデータの解析がさらに進められ、こうした全天に広がるX線構造の起源が解明されること。
さらに、次世代のX線観測装置による研究が加わると実現できそうですね。
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“MAXI”だから出来た! X線新星の活動開始から収束までの変化全体を観測
この装置のデータから、世界初となるX線CCDでの軟X線全天マップが作成されたんですねー
そして、見えてきたのが非常に大きく広がった軟X線の巨大構造でした。
この巨大構造、まだ詳しい起源は分かっていないようです。
軟X線領域での全天マップ
宇宙のあらゆる方向から地球にやってくる電磁波の強さを描き出した“全天マップ”は、天文学で重要なデータの一つになります。
有名なのは、ビッグバンの熱放射の名残りであるマイクロ波を全天に渡って観測したもの。
NASAの“COBE”や“WMAP”、ヨーロッパ宇宙機関の“プランク”などの天文衛星で得られた宇宙マイクロ波背景放射の全天マップです。
宇宙マイクロ波背景放射のマップは、宇宙の成り立ちや性質について様々な情報をもたらし、ノーベル賞の受賞にもつながった。
一方、X線についても、いくつかの全天マップが過去に得られています。
ドイツのX線観測衛星“ROSAT”で、軟X線の全天マップが作られたのは1990年代のことでした。
軟X線は光子のエネルギーが1キロ電子ボルト前後のX線。
ただ、この“ROSAT”の全天マップには、“太陽風電荷交換反応”のX線が混ざっていることが後の研究で分かります。
遠い宇宙からのX線放射だけではなかったんですねー
“太陽風電荷交換反応”とは、地球の近くに存在する中性原子に太陽風のイオンが衝突し発生する電荷交換現象。
その後、日本の“あすか”や“すざく”、NASAの“チャンドラ”、ヨーロッパ宇宙機関の“XMMニュートン”などのX線天文衛星が打ち上げられます。
でも、これらの衛星のX線望遠鏡は視野が狭く、広い範囲を観測するのには向かいないもの…
このため、軟X線領域での全天マップは長い間“ROSAT”のデータしか利用できない状況でした。
世界初のX線CCDで得られた軟X線全天マップ
一方、国際宇宙ステーションの日本実験棟“きぼう”でも、2009年からX線の観測装置が稼働していました。
約90分で地球を一周する国際宇宙ステーションの動きを利用して、宇宙の全方向のX線をモニターする全天X線監視装置“MAXI”です。
今回、JAXA宇宙科学研究所の“MAXI”プロジェクトチームは、新しい軟X線の全天マップを公開。
2009年8月~2011年8月の2年間に“MAXI”のX線CCDカメラ“SSC”で観測されたデータを元にしたマップでした。
“SSC”の特徴はX線の検出にCCDを採用していること。
“ROSAT”で使われた比例計数管よりもX線のエネルギー分解能が良く、遠くの宇宙からのX線と地球近辺の“太陽風電荷交換反応”に由来するX線とを区別し易くなっています。
また、“MAXI”は国際宇宙ステーションの周回に合わせて天空を繰り返しスキャンしています。
なので、最終的には1000回分以上の観測データを合成することができ、全天に渡って滑らかなマップを作ることができました。
X線CCDで得られた軟X線の全天マップは世界初の成果でした。
軟X線の巨大構造
今回得られた全天マップでは、ブラックホールや中性子星などの点源のX線天体の他にもとらえられていたものがありました。
それは、赤色で表されるエネルギーの低い、広がりを持ったX線の分布です。
プロジェクトチームでは、この広がったX線源のうち、特に天の川銀河の北側に円弧状に広がる“ノース・ポーラー・スパー”と呼ばれる構造のエネルギースペクトルを調査。
その結果、この広がったX線源は約100万度の高温プラズマであり、地球近辺での“太陽風電荷交換反応”によるX線ではないことが確かめられました。
また、今回の全天マップの中央部分に写っていたのが、天の川銀河の中心部や“ノース・ポーラー・スパー”を含む、非常に大きく広がった軟X線の巨大構造でした。
この軟X線巨大構造は“ROSAT”の全天マップにもみられるもので、これとほぼ同じ領域にはガンマ線を放射する“フェルミバブル”と呼ばれる大きな構造も見つかっています。
この巨大構造の正体として考えられているのは、天の川銀河に分布する大規模な高温プラズマなんですが、まだ詳しい起源は分かっていません。
“MAXI”のX線CCDカメラ“SSC”で得られた0.7~1キロ電子ボルトのX線強度マップ(上図の赤色の成分を、エネルギーによってさらに細かく色分けしたもの)。天の川銀河面に沿って“ぼ座超新星残骸”や“はくちょう座スーパーバブル”などの構造が存在している。銀河中心部には大きく広がったX線構造が存在している。(Credit: 2020 RIKEN/JAXA/MAXI team) |
このことから、巨大構造は地球に比較的近い距離にある超新星残骸が見えているものかもしれないとプロジェクトチームでは考えています。
ただ、弱いX線を放射している部分まで含めると、銀河面に対して南北にほぼ対象に広がっているように見えるんですねー
天の川銀河の中心ブラックホールが過去に激しい活動をしていた名残りという可能性もあります。
今後期待されるのは、“MAXI”のX線CCDカメラ“SSC”で観測されたデータの解析がさらに進められ、こうした全天に広がるX線構造の起源が解明されること。
さらに、次世代のX線観測装置による研究が加わると実現できそうですね。
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