進化の進んだ大きな銀河では、星の形成が穏やかになります。
でも、これは理論研究から分かってきたことで、実際の観測で実証したわけではないんですねー
そこで、今回の研究で解き明かそうとしているのは、これまで実証されていなかった進化の進んだ大きい銀河内部での星形成について。
アルマ望遠鏡による高解像度の観測から分かってきたのは、星形成活動の多様性が星の材料になる低温で高密度なガス雲そのものの性質にあるということでした。
星形成のサイクルを調べるプロジェクト
宇宙には様々な大きさや形の銀河があり、それら銀河内での星が作られる期間や作られ方も多様なんですねー
過去数十年にわたる研究でも、銀河の大きさによって銀河内部での星の作られ方に違いがあることが明らかになっています。
なかでも大きくて進化の進んだ銀河では、星の材料になるガス雲、いわゆる“星の工場”の効率が悪くなっているので、理論研究では星形成が穏やかになるようです。 ただ、実際の観測によって実証されたわけではありません。
それは、約10万光年の大きさを持つ銀河全体に対して、ガス雲のサイズは数十~数百光年と非常に小さく観測することが難しくなるから…
でも、高い感度と解像度を併せ持つアルマ望遠鏡なら、数百万光年~数千万光年の距離にある銀河の中の個々のガス雲の分布も描き出すことができます。
その能力を活かし、正面から観測できる渦巻銀河をターゲットにした研究プロジェクトが“PHANGS-ALMA”です。
“PHANGS-ALMA”では現在までに計750時間の観測を行い、74個の渦巻銀河から3万個のガス雲のデータを取得。
研究チームは、これらのデータをもとに銀河の大きさや年齢、内部のガスの運動によって星形成のサイクルがどのように変化するのかに迫ろうとしています。
“PHANGS-ALMA”で撮影された6つの渦巻銀河。 星の材料になるガスが放つ電波がとらえられていて、 渦巻状に広がるガス雲の詳細な様子まで分かる。 |
星の形成はガス雲そのものの性質にある
星形成の現場では、星の誕生をきっかけにガス雲が破壊される現象が起こっていることも知られています。
若くて巨大な星から放出される強烈な光やガス(星風)、あるいは短命な巨大星の死“超新星爆発”によりガス雲が破壊されるんですねー
“PHANGS-ALMA”の観測では、生まれたばかりの星たちが周囲のガス雲をすぐに壊してしまう現象も確認されました。
そこで研究チームが考えたのは、星形成活動の多様性は、星の材料になる低温で高密度なガス雲そのものの性質にあるということ。
異なるタイプの銀河でガス雲破壊のプロセスがどのように進むのかを調べていけば、星形成効率にどのような影響を与えているかが分かるのかもしれません。
研究チームの計画はアルマ望遠鏡の他にもあります。
現在、ヨーロッパ南天天文台の8メートル望遠鏡VLTのカメラ“MUSE”をつかった“PHANGS-MUSE”計画、ハッブル宇宙望遠居を使った“PHANGS-HST”計画が進行中なんですねー
これらの観測を合わせることで、星の材料になる低温ガスの分布とその動き、さらに高温ガスと星の分布までをとらえ、銀河の中での星の作られ方の違いとその原因を解き明かそうとしています。
天文学の研究では、宇宙の進化をそのまま観測することはできません。
でも、異なるサイズや年齢の銀河に含まれる何万個もの星形成の現場を観測して、銀河がどのように進化するのかを推測することはできます。
この観測に“PHANGS-ALMA”などの研究プロジェクトが必要なんですねー
うお座の渦巻銀河“M74”。 アルマ望遠鏡(オレンジ)とハッブル宇宙望遠鏡(青)のデータを 合成した擬似カラー画像。 |
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すごく貴重な映像ですね。
アルマ望遠鏡は視力6000に相当する性能があるそうですよ。
惑星系誕生の現場なんかもとらえています。