「生きることに疲れた」という言葉を時々聞く。
生きることに疲れるということは、肉体的に疲れたということではないだろう。
仕事をしすぎたとか、運動をしすぎたという意味ではないだろう。
肉体的に疲れたのであれば、休めば回復する。寝れば回復する。
しかし、生きることに疲れた時には、寝ても疲れは取れないし、だいたい、寝ようとしても寝つかれないことが多い。
生きることに疲れるということは、心身共に疲れるということであろうが、主に心が疲れたのであろう。
また生きることに疲れたということは、単に何かにショックを受けて疲れたということだけでもないだろう。
悲しい事件が続いて心理的に疲れたという意味だけではない。親しい人を失って疲れたという意味だけでもないだろう。
もう生きるのがイヤになったという意味で、「生きることに疲れた」と言う人が多いだろう。
生きることに疲れた人は、「生きるのがイヤ」と思いつつも、世の中に恨み辛(つら)みは残っている。
(加藤諦三)