ロック探偵のMY GENERATION

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図書館に文庫本を置くべきじゃない?

2017-10-15 18:32:38 | 小説
図書館に文庫本を置くのをやめるべきなのか、という議論が最近おこっています。
文庫本は出版社にとって収益の柱であり、図書館に文庫本がおいてあることが、文庫本の売り上げを圧迫している……という問題提起です。

はたして、そうなんでしょうか?


この類の議論で、私がいつも思い出すエピソードがあります。


それは音楽の話なのですが……

日本のレンタルショップで「洋楽CDは一年間レンタル禁止」というルールがあることをご存知でしょうか?

日本では、レンタルショップで多くの人がCDを借り、ダビングして聴いています。
それでCDが売れなくなってけしからんから、レンタルをやめろ……という圧力が海外のレコード会社からかけられました。
それで、洋楽は一年間レンタル禁止ということになったのです。

圧力をかけた側は、それによって売り上げが伸びることを期待したわけでしょう。

しかし、結果は逆でした。

むしろ、この措置は日本人の“洋楽離れ”を促したといわれます。
安い金額で手軽に聴けなくなったために、多くの日本人が洋楽自体を聴かないようになっていったのです(もちろん他にもさまざまな理由があるでしょうが、レンタル禁止措置も大きな原因でしょう)。

結果として、今では「一年間レンタル禁止」という規定は緩和されてきています。

完全になくなってはいないようですが、禁止するかしないかはレコード会社側に決定権があるということらしいです。



今回の図書館の問題も、この話に通ずるところがあるように思えます。

問題は、「タダで読めなくなったらお金を出して買うようになるのか?」ということです。

もちろん、安価とはいえお金を払うレンタルと無料というのは完全に同じとはいえませんが、それでも根底にあるのは同じ問題と思えます。

タダで本を読めなくなったら、多くの人は本を読まなくなるだけなんじゃないでしょうか。
そして、それが読書人口を減少させ、むしろ業界全体を縮小させていく……そんな逆効果になるおそれさえあるように思えます。

実際のところ、「タダで触れることができる」ルートが存在することがすそ野を広げる力というのはあなどれません。

その文脈では、違法なファイル共有ソフトでさえ、「タダで視聴できる機会を提供する」ことによって、むしろ音楽・映像ソフトの売り上げを上昇させる効果があるとも指摘されています。

図書館は、ただで本を読めることによって、さまざまな本に触れることができ、読書人口を増やす働きをしているのではないでしょうか。

お金を出さなければ読めない、となったら、子供たちが本の世界に入っていくハードルが高くなり、ますますスマホの世界から出てこなくなるのではないかと思えます。

そんなふうに考えると、図書館に文庫本を置かないようにするという措置が、出版業界の業績改善につながるかどうかは疑問です。


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