ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

ロック探偵の誕生を振り返る

2018-10-22 16:24:01 | 過去記事
過去記事の振り返りです。

制作裏話を書いたものになってます。

『ホテル・カリフォルニアの殺人』制作裏話 ~ロック探偵はいかにして誕生したか~
これまで、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』の内容紹介をしてきました。しかし、あらすじに関しては、大まかなことはもう書きました。これ以上書くと、ネタバレになってしまいます。......


和田慎二『ピグマリオ』

2018-10-20 21:43:18 | 漫画
今回は、漫画についての記事です。

以前、さくらももこさんの訃報に関して書きましたが、今回は、少女漫画つながりということで、『ピグマリオ』という漫画について書きます。

『ピグマリオ』は、故・和田慎二先生が白泉社の『花とゆめ』という雑誌に連載していた漫画。

和田慎二先生といえば『スケバン刑事』が有名ですが、『ピグマリオ』は、その『スケバン刑事』よりもずっと前、学生時代から基本的な構想があったという作品です。
アニメ化もされていて、私はアニメでこの作品を知りました。そのアニメ版は、あまりクオリティがよくないということで打ち切りとなり、そのまま今にいたるまで封印されてしまっているようですが……しかし私は、そのアニメからコミックのほうを読むようになり、全巻読んでいました。小学校4、5年生ぐらいのことだと思いますが、そのころ結構はまっていた作品ですね。

内容は、メデューサによって母親を石にされてしまった王子が、母をもとの姿に戻すべく、メデューサを倒すための旅に出る……というもの。神々や魔物、ドラゴンなども出てくる、正統派のファンタジーとなっています。
『ピグマリオ』というタイトルは、“ピグマリオン効果”などで知られるピグマリオンの伝説からとられたもので、石化した人を生身の人間にする……ということで、こういうタイトルになってるようです。

原作の連載が始まったのはだいぶ昔で、もう私が生まれる前のことなんですが、ずっと後になって、メディアファクトリーというところから新装版のコミックが出ています。
今回、それを入手しました。



ひさびさに読み返そうとしたところ、かつて全巻そろっていたはずの白泉社コミックスが今どこに埋もれているのかがわからず……この新装版を買いました。

このメディアファクトリー版では、できるだけ連載時の形にしようということで、カラーページや二色刷なども再現。また、和田先生による書き下ろしの部分もあります。カラーページの再現があるだけでも、この版をゲットする価値はありました。ただ、原稿が紛失してしまっている部分もあるようで、カラーを再現できていないページもありますが……

最近、昔みてたアニメや漫画を見返すということをよくやってるんですが、やはり懐かしいですね。
とりわけ『ピグマリオ』は、私のルーツの部分に大きな影響を与えているんだな……ということを、今回あらためて認識させられました。


西日本新聞の記事を振り返る

2018-10-18 16:10:56 | 過去記事
去年の記事の振り返りです。

そういえば、そんなこともありました。

拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』を、西日本新聞に紹介してもらいました。
拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』を、西日本新聞に紹介してもらいました。筑後地方の地方面という扱いですが、少しでも多くの人の目に留まってほしいと思います。もう何度も書......


呪われた夜を振り返る

2018-10-15 21:54:29 | 過去記事
過去記事の振り返りです。

『ホテル・カリフォルニアの殺人』に関する記事ではありませんが、一応関連があるということで……

イーグルス「呪われた夜」(Eagles,"One of These Nights")

昨日は身辺雑記のようなことを書きましたが、今日は、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』に登場する曲を紹介するシリーズを書いていきます。今回は、順番通りに、第三章の章題となってい......


アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』

2018-10-13 18:09:50 | 小説
アガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』という本を読みました。

……正確にいうと、アマゾン・オーディブルで聴きました。


なぜ今頃アガサ・クリスティーなのかと思うかもしれませんが……

私もミステリーでデビューした人間なのですが、実はミステリーを読むようになったのはそれほど昔のことではありません。
それなりに読んではいるつもりですが、ミステリー読者歴が浅く、インプットの絶対量が不足していることは否めないところ。ここはひとつ、きちんとミステリーの勉強もしておいたほうがいいな……ということで、古典作品を読んでおこうという自分内キャンペーンをやっていて、その一環でアガサ・クリスティーというわけです。

(以下、ネタバレは避けるように書くつもりですが、場合によっては書かれていることがネタバレにつながる重要な手がかりとなるかもしれません。未読の方はご注意を)

この作品は、エルキュール・ポワロが出てくるシリーズ。

ある日ポワロのもとに犯罪を予告する手紙が送られ、その予告どおりに殺人が行われます。
事件が起きた土地、そして、被害者の名前はAではじまっており、そこから、前代未聞のアルファベット順殺人事件が展開していくのです。

トリックというようなものはあまりありませんが、肝になるのは“なぜ”という動機の部分ですね。
「〇を隠すなら……」という、ミステリーの一つの定石で、ある程度ミステリーを読み込んでいる読者なら、そのことに気づくのは難しくないでしょう。実際のところ、「連続性を強調した不可解な連続殺人」という設定からだけでも、容易にそのことは想像されるのです。連続性を過度に強調する背後にはそういう意図があるんではないかと考えられ、アルファベット順の殺人というのはまさにそこにはまっています。
この構図は、かのコナン・ドイルも多用したものであって、現代にいたるまで変奏され続けている、ミステリーの基本形の一つといえるでしょう。
それは、悪くいえば「ありきたり」ということにもなります。当然その基本形だけではよろしくないので、そこにアレンジをくわえていくことになります。
一番のポイントになるのは、犯人がポワロに送り付けた予告状でしょう。
この手紙が、読者へのミスディレクションや、犯人が誰かということを隠す意味で、重要な役割を果たしています。ポワロがこの手紙の“奇妙さ”に気づき、その意味を解き明かし、そこから謎解きにつなげていくロジックが、この作品の最大の見どころではないでしょうか。そうして終盤で起きるどんでん返しは、アガサ・クリスティー女史の面目躍如といったところでしょう。

ただ、一つ気になるのは、心理を軸にした部分。
夢の分析とか、いまでいうプロファイリングみたいな手法です。その当時のはやりなのか、そういうところでは現代からみるといささかあやしげな心理学が展開されているようにも思えます。それが犯人に関するミスディレクションにもからんでくるんですが、そのあたりはちょっと危うい感じがします。
しかし、中盤でポワロが「善意のある殺人者」みたいなことをいっているのも、ちゃんと伏線になってるんですね。これはプロファイリング的な意味であたっているのではなくて、犯人の真意をとらえているという意味でですが……そういう点でいうと、プロファイリング的な心理分析は謎解きのメインではなく、あくまでも補助的なものということになるのかもしれません。

ともかくも、ミステリーの古典として一読の価値はあると感じる作品でした。