私の好きな一句です。作者が洛陽に戻る友達に、別れに際して、「洛陽にいる私の友達が、あいつはどうしていると尋ねることがあったら、「氷心一片玉壷にあり」という心境でいると伝えてくれ。」と言うのです。
多分、たずねる友達は、きっと作者が寂しい思いをしているだろうと想像しながら聞くのだろうが、そんな心配は無用だ。何に惑わされることも無く、氷のように澄み切った心ですごしていると答えてくれと言うわけです。
その実際の気持ちがどうかは分からなくても、この一句に籠められた思いは本当に読む人の心を打つ。
似たような言葉「丹心一片」と言う言葉が良く使われているが、全く違う。勤皇の志士たちは好んでこの「丹心」を使った。天皇に対する忠誠心を示す言葉として使われていた。
「氷心」 氷には冷たい感じがあるけれど、「氷心」と「玉壷」とが一つとなって、何にも惑わせられない、端然とした昌齢の人柄が伝わってくる。