植物と自然2 2月増大号 ムラサキ特集 1978 Vol 12 No.2 p53より
邦産ムラサキ園芸栽培の実際 伊賀達紀(著述・野草研究家)
1.はじめに
邦産ムラサキの栽培は難しいといわれているが、その難点の解決なしでは、ムラサキの栽培は成り立たない。
第1の難点は、種子の入手が難しいということである。これは、現在邦産ムラサキを栽培している人の尽力
に待つよりほかはない。そして、多量の種子の確保ができれば大胆な試作が可能となり、栽培技術の向上や、自生地
の再興にもつながってくる。第2には邦産ムラサキの種子の発芽率が低いことである。しかし、これは洋種
ムラサキの良い発芽率と比較して考えられ得る場合が、かなり含まれていると思われるが、種子を大切にするあま
り、採取したものをそのまま播種し、発芽率を低下させていることが多い。第3には、移植を嫌うことである。
長い主根を持つムラサキでは当然のことであるが、移植の時期、用土などに留意することにより、ほとんど枯死
することはなく、山採り品のような成株でも、葉を2枚程度切り戻しすれば、まず間違いなく活着する。
第4は栽培邦産ムラサキの寿命が野生のものと比較して、甚だしく短命であることで、これが邦産ムラサキの最
大難点である。この問題は根腐れ防止の方法が解決されなければならないのであるが、現在のところ完全な対策
はなく、栽培ムラサキの生育年数は主に3年までであり、4年以上はきわめて少なくその半ばで枯死する。鉢栽培
の場合はさらに短く、鉢に移植後2年である。したがって結実の状態も、分果の半数は未熟種子となると思わね
ばならない。
栽培ムラサキでは、2年後の主根の長さは80cm以上となるものがある。この割合で肥大伸長を続けたら4、5年後の
主根の巨大さは大変なものになってしまう事になる。つまり、それまでに当然腐敗が生ずる。主根の更新が行わ
れ、主根に代わり側根が発達すると考えられれば、栽培ムラサキも3年では枯死しないのであるが、残念な
がら主根の更新がなく、枯死してしまう。野生品、栽培品を問わず、ムラサキの成株切り戻して、活着させた場
合は主根の更新が行われ、ムラサキはさらに生き続けられるが、開花結実が園芸栽培の目的であってみれば、こんな
作業のみ行ってばかりはいられない。多くの開花と多量の分果ができて、明年への継承が十分可能である現在の栽培
法で、一応可としなければならない。昭和52年8月、東京地方の長雨のためか、例年になくムラサキは不作であっ
た。6月以後に開花を始めた花壇の分は、未熟な分果が多かった。それでも、ムラサキ成株100株余りより、完熟し
た種子が7,390粒採種できた。この他に譲渡分が約300余、採種の際に地上に落下したものが相当ある。
このような大規模な花壇ならずとも、数本のムラサキが完全に生育されれば、毎年の愛育にさしつかえなく、十分
楽しめると思う。この点では野生ムラサキを採種してしまうより、種子より栽培してゆく方が、安定した良結果が得
られる。
(アンダーライン部分はブログ担当者が引いたものである。)
「現在はネットを介して多くの方に色々な形でムラサキの種が出回っているように思われる。当ブログでもムラサキ
の種の販売をしていて、発芽に付いてもかなり高い発芽率を確認している。問題は「日本ムラサキ」の確認である、
洋種ムラサキとはっきりしている場合はそれはそれで良いのだが、いわゆる「亜種ムラサキ草」と云われる
日本ムラサキと洋種ムラサキとの交配種の存在である。ほとんど見分けがつかないと云われているが純白の花芯に幾
分か黄色味掛かっているのは「亜種ムラサキ草」と思われるが写真でしか見たことがないので素人には解らない。染
料にもならないと聞いている。」
邦産ムラサキ園芸栽培の実際 伊賀達紀(著述・野草研究家)
1.はじめに
邦産ムラサキの栽培は難しいといわれているが、その難点の解決なしでは、ムラサキの栽培は成り立たない。
第1の難点は、種子の入手が難しいということである。これは、現在邦産ムラサキを栽培している人の尽力
に待つよりほかはない。そして、多量の種子の確保ができれば大胆な試作が可能となり、栽培技術の向上や、自生地
の再興にもつながってくる。第2には邦産ムラサキの種子の発芽率が低いことである。しかし、これは洋種
ムラサキの良い発芽率と比較して考えられ得る場合が、かなり含まれていると思われるが、種子を大切にするあま
り、採取したものをそのまま播種し、発芽率を低下させていることが多い。第3には、移植を嫌うことである。
長い主根を持つムラサキでは当然のことであるが、移植の時期、用土などに留意することにより、ほとんど枯死
することはなく、山採り品のような成株でも、葉を2枚程度切り戻しすれば、まず間違いなく活着する。
第4は栽培邦産ムラサキの寿命が野生のものと比較して、甚だしく短命であることで、これが邦産ムラサキの最
大難点である。この問題は根腐れ防止の方法が解決されなければならないのであるが、現在のところ完全な対策
はなく、栽培ムラサキの生育年数は主に3年までであり、4年以上はきわめて少なくその半ばで枯死する。鉢栽培
の場合はさらに短く、鉢に移植後2年である。したがって結実の状態も、分果の半数は未熟種子となると思わね
ばならない。
栽培ムラサキでは、2年後の主根の長さは80cm以上となるものがある。この割合で肥大伸長を続けたら4、5年後の
主根の巨大さは大変なものになってしまう事になる。つまり、それまでに当然腐敗が生ずる。主根の更新が行わ
れ、主根に代わり側根が発達すると考えられれば、栽培ムラサキも3年では枯死しないのであるが、残念な
がら主根の更新がなく、枯死してしまう。野生品、栽培品を問わず、ムラサキの成株切り戻して、活着させた場
合は主根の更新が行われ、ムラサキはさらに生き続けられるが、開花結実が園芸栽培の目的であってみれば、こんな
作業のみ行ってばかりはいられない。多くの開花と多量の分果ができて、明年への継承が十分可能である現在の栽培
法で、一応可としなければならない。昭和52年8月、東京地方の長雨のためか、例年になくムラサキは不作であっ
た。6月以後に開花を始めた花壇の分は、未熟な分果が多かった。それでも、ムラサキ成株100株余りより、完熟し
た種子が7,390粒採種できた。この他に譲渡分が約300余、採種の際に地上に落下したものが相当ある。
このような大規模な花壇ならずとも、数本のムラサキが完全に生育されれば、毎年の愛育にさしつかえなく、十分
楽しめると思う。この点では野生ムラサキを採種してしまうより、種子より栽培してゆく方が、安定した良結果が得
られる。
(アンダーライン部分はブログ担当者が引いたものである。)
「現在はネットを介して多くの方に色々な形でムラサキの種が出回っているように思われる。当ブログでもムラサキ
の種の販売をしていて、発芽に付いてもかなり高い発芽率を確認している。問題は「日本ムラサキ」の確認である、
洋種ムラサキとはっきりしている場合はそれはそれで良いのだが、いわゆる「亜種ムラサキ草」と云われる
日本ムラサキと洋種ムラサキとの交配種の存在である。ほとんど見分けがつかないと云われているが純白の花芯に幾
分か黄色味掛かっているのは「亜種ムラサキ草」と思われるが写真でしか見たことがないので素人には解らない。染
料にもならないと聞いている。」