朝早く電話が鳴った。兄嫁からの電話だった。兄が今朝早く風呂場で倒れ亡くなったと言う。たった一人の兄。驚いて声が出ない。涙も出ない。ただ受話器を手に呆然と立ち尽くした。
通夜と葬儀の時間などを知らせるために娘の職場に電話した。娘の声を聞いいた途端に涙が止まらなくなり、声はかすれ用件を十分に伝えることが出来ない。娘が何度もよく分からないと問いなおしてきた。
兄は12歳、私が10歳の時に父が亡くなった。亨年37歳。それ以来2つ違いの兄は自分にとっての父親役となった。兄は12歳の時に、少しでも母を助けようと就職した。今なら中学2年生というところだ。大変な苦労があったことだろう。
兄はもういない。兄弟喧嘩は何度かあったがそれも遠い昔の思い出となってしまった。今年5月には義父が亡くなっている。わが家の大切な大黒柱とも言うべき2本の大きな柱が今年相次いで倒れてしまった。
晩年にさしかかって残された時間はそう多くない。いつか閉じざるを得ない生ではあるが、大黒柱に支えられた生活が一転して船頭のいない生活に変わってしまい戸惑うばかり。
あと少しでよい。支えて欲しかった。心からの冥福をお祈りしよう。