阿蘇のお山は今日も噴煙を噴き上げている。兄の通夜は底冷えのする寒い夜だった。沢山の方々に参列していただいた。亡き兄も喜んだことだろう。
通夜の席でのご導師のお説教。
高い木の上で1人の仙人が修行していた。下を通りかかった僧侶が「何のために苦しい行をなさるのですか」と尋ねると、仙人は「200年生きるためだ」と答えられた。さらに僧侶が「200年たったら、それからはどうなさるのですか」と聞くと、「それからは」と聞いて仙人はすぐに木を降りられたそうだ。生あるものにはいつか生を閉じざるを得ないときが必ずやってくる。その日まで変わらぬ日常生活を送ることが大切です。と。
亨年81歳の兄の交友の広さには驚いた。横浜や名古屋から駆け付けてこられた友人がおられた。人づきあいがよいとはいえぬ兄だったが、日頃の生活では友を大切にされていたことがよく分かる。
葬儀の日は青空の広がるよい天気、阿蘇の噴煙を間近に見る熊本市の戸島斎場で荼毘にふされた。阿蘇は兄と私が生を受けた地でもある。空高く舞う阿蘇の噴煙は多分兄を悼んでの事ではなかろうか。
合掌