俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

違い

2012-12-18 11:21:02 | Weblog
 「何でも美味しい」と言う人がいる。私が小学生の頃、学校給食を喜んで食べている同級生がいた。今ではかなり改善されているが、当時の給食は酷い物だった。そのシンボルが脱脂粉乳だ。アメリカで大量に発生する搾りかすの処理場として日本の学校給食が使われた。アメリカ人にとってのゴミが日本では食料とされた。不味くて吐き気を催させる代物だったがそれを喜んで飲んでいる人がいた。先生からは誉められていたが、多分正常な味覚を持ち合わせていなかったのだろう。脱脂粉乳のせいで味覚が狂った人は少なくなかろう。
 音楽の分からない人にとってはどの曲も同じようなものだ。だから流行っている曲が良い曲とされる。美の分からない人は著名な作家の作品を有難がる。善の基準が無くなれば「総て善し」となる。イワン・カラマーゾフの「神が無ければ総てが許される」はその典型だ。
 優劣を判定するためには能力が必要だ。その能力が備わっていなければ区別できない。人間はどの猿が賢いのか判別できるが、猿にはどの人間が賢いのか分からない。
 政治が分からない人は政治家を選ぶ能力が無い。だからそんな人は芸能人やスポーツ選手に投票する。彼らにとっては誰であろうと何党であろうと、違いが分からない。だから彼らにも分かる基準である馴染みがあるかどうかが判断基準になる。

脱デフレ

2012-12-18 10:53:48 | Weblog
 自民党の安倍総裁は2%の物価上昇を目標にすることによってデフレ脱却を図ろうとしているようだ。デフレを物価の下落と定義するならそれでも良かろう。しかし物価の下落は結果であって原因ではない。
 経済学者は数式を使うことが好きだ。数学的に「こうすればこうなる」と断言したがる。多くの場合、それは相関関係であって因果関係ではない。経済学と医学は因果関係と相関関係を混同し勝ちだ。
 「風邪が治れば熱が下がる」という事実から「熱を下げれば風邪は治る」と考えることは論理的にも医学的にも誤りだ。発熱はウィルスに対する攻撃であると同時に免疫力向上反応なので、薬で熱を下げれば病は悪化する。原因と結果を取り違えているからこんな馬鹿な医療が横行している。
 デフレのメカニズムは次のように説明される。景気の低迷→企業業績の悪化→賃下げ・雇用の減少→消費の低迷→物価の下落→企業業績の悪化→。これがデフレスパイラルと呼ばれるが「スパイラル」と呼ぶことで原因と結果を曖昧にしている。どれが原因か分からないのでスパイラルという言葉で逃げているようにも思える。まるで卵が先か鶏が先かの議論のようだ。
 物価を上げるだけでは景気は回復しない。雇用と賃金の上昇、そしてそれが齎す消費の好転を伴わなければスタグフレーションを招きかねない。
 安倍氏は楽観的なシナリオを描いているようだ。補修を含む公共事業→民間投資と雇用の創出→景気の回復→税収増→国家財政の再建。このように総てが思惑どおりになれば経済の問題は一挙に解決される。うまく行かなければ、将来世代へのツケが拡大する。これがうまく行くかどうかは分からないが、現役世代にとってマイナスになることは無かろう。