俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

1強9弱

2012-12-22 09:32:44 | Weblog
 衆院選は自民党の圧勝に終わった。マスコミも指摘していることだがこの選挙は小選挙区制の欠陥がモロに出たと思える。自民党は43.0%の得票率だったが79.0%の議席を得た。またすっかり自民党の分派のようになった公明党は僅か1.5%の得票率で3.0%の議席を得た。その結果として死に票率は56.0%だ。
 前回の2009年の衆院選の小選挙区では民主党が47.4%の得票率で73.7%の議席を得、前々回は自民党が47.8%の得票率で73.0%の議席を得ている。毎回、雪崩現象が起こって特定の政党が大勝してしまっている。
 今回の選挙の比例区を見れば自民党の得票率は27.6%しか無い。この程度の支持しか得ていない政党が全議席の61.3%を占めることを有権者が望んだとは思えない。得票と議席のギャップが酷過ぎる。
 こんな小選挙区制度は民意を反映しない。ほんの僅かの差が大きな差を生むような制度は独裁制に繋がりかねない。
 日本の民衆は賢い。世論操作をしない限り大きく偏ることは無い。しかしこんな選挙制度では民意に背いて特定の政党が大きな権力を握って、任期の4年間やりたい放題になってしまう。
 中選挙区制度ではこんな妙なことにはならなかった。大阪の定数5人のある選挙区では自社公民共の5党が仲良く1議席ずつを分け合ったことさえあった。小選挙区制と比べて中選挙区制のほうが遥かに民意を反映し死に票も少ない。
 中選挙区制で選ばれた多数の党の議員が合従連衡を繰り返せば極端な政治は排除されるし、是々非々の姿勢が硬直した政策を否定して柔軟な政治を促す。民主主義は危険な制度だが小選挙区制は特に酷い。これは思想弾圧だ。

唐入り

2012-12-22 09:02:59 | Weblog
 天下統一を果たした時点で豊臣秀吉は困り果てた。それまでの貴重な人材が余剰人員になってしまったからだ。
 当時の日本は多分世界最強の軍隊を持っていた。しかしこの武力集団は戦闘のスペシャリストだ。現代の自衛隊とは違って土木工事や災害救助には使えない無用の長物だ。そこで秀吉が選んだ対策は中国征服だ。朝鮮出兵はそのためのプロセスであって目的はあくまで「唐入り」つまり明王朝の征服だ。
 侵略の是非を問おうとは思わない。当時の価値観では強い国が弱い国を支配するのは当然のことだった。しかし日本軍は朝鮮・明の連合軍に敗れた。余剰人員の活用と領土拡張という一石二鳥の作戦は虚しく潰えた。
 過剰な武力が災いを齎すことは人体でも起こる。免疫という強力な防衛力が暴走することがある。アレルギー反応がそれだ。免疫力は常に病原菌と戦っている。ところが日本が清潔になり過ぎると戦う相手がいなくなる。そのために戦う必要の無い相手と勝手に戦い始める。
 今ではすっかり国民病ともなっている花粉症だが、杉花粉症の第一号患者が日光市で確認されたのは昭和38年、東京オリンピックの前の年だ。多分、当初は奇病として扱われたことだろう。今では国民の約30%が患っていると言われている。
 病原性大腸菌Oー157の被害が増えたのは無害の大腸菌が減ったせいではないだろうか。Oー157の生命力は普通の大腸菌よりも劣っているそうだ。通常なら生存競争で淘汰される筈の菌だが、普通の大腸菌が減ったからこんな迷惑な大腸菌が繁殖するようになったのだろう。人類は細菌と共存すべきなのだろう。清潔であり過ぎることが災いを招く。