アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

ひつじ村の兄弟

2021-08-08 16:21:35 | 映画とドラマと本と絵画

  アイスランドの映画。https://luckynow.pics/hrutar/ 地味な映画だろうとは思いましたが、アイスランドの映画は初めてなので、借りました。

  代々、羊の飼育をなりわいにしている小さな村が舞台。主人公は一人暮らしの男性老人で、かれもやはり羊を飼っています。やせた寒々しい土地で、羊を相手に暮らす彼の隣には、兄がすんでいます。でも彼らはなんと40年以上口をきいていない。

  村の毎年恒例(らしい)羊の品評会で、兄は一等賞を取ります。しかし、その夜、弟は兄が取得した羊に伝染病の兆候が出ているのを発見します。話はここから。伝染病は蔓延の恐れがあるため、村の羊すべてに殺処分命令が下されます。騒然となった村の人たち。生活費は支給されますが、この先いつまた同じ危険がやってくるかわからない。比較的若い一組の夫婦は、廃業して村を去ることを決意します。その決意に対して、村人は引き留めるだけの強い意志を持てません。

  村人の一人がはき捨てるように言った一言。「2年後、新しい羊が来ても、どうせホルモン剤まみれのやつにきまってる」

  他の村人は押し黙るばかり。

  主人公兄弟の羊は、先祖代々受け継がれてきた優良な種。たぶん、村の他の家の羊も、それぞれ自家繁殖させた優秀な羊なのでしょう。でも、日本でも欧米でも、いまや一般の家畜は、ホルモン剤などの投与が当たり前になっているといいます。「ホルモン剤まみれ」の家畜ということばからは、「伝統的な飼育法で育てることができなくなっている」酪農の現状がほんのちょっとだけ、想像できます。でも、深くは描きません。

  一方、一見従順に家畜保健の行政の指導に従っているかに見える弟。兄は終始反抗的です。しかし、実は弟は、自分だけの秘密の仕事を始めたのでした。

  風景はほぼかわらず、雪の山々。木はほとんどなくて、草も、牧草くらいらしい。電子レンジは出てきますが、テレビは出てこなかったように思います。「結婚は?」と問われ、「(村に)女がいないから」と答えた弟。過疎の村に残る女性は極めて少なかったのでしょう。

  説明部分の極めて少ない映画ですが、「現在」の一端が、きちんと描かれていました。伝染病の蔓延は、気候変動とも関係があるのかも。抑えたタッチが最後まで続くので、想像の域を出ませんが。

  印象的なのは、主人公兄弟と村人たちの着ているセーター。質のいい羊の毛で編んだ厚手のセーターは、とてもあたたかそうでした。このセーターも、日本の着物同様、代々受け継がれているものかもしれません。このセーターが、彼らの大事にする羊と羊の飼い方の象徴のように思えたことでした。

コメント
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