1936年の日本映画。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%8D%E5%9C%9F 全く聞いたことのない映画だったのですが、ひょんなことからタイトルと内容を知り、ダメもとでツタヤレンタルで調べてみたら、なんと貸し出し可能の映画になっていました。
主演は小杉勇と原節子。ヒロインは良家の娘で、小杉勇は農家の出。親同士の約束で、彼は幼い時にヒロインの家に養子として迎えられ、ゆくゆくはヒロインと結婚して家督を継ぐことになっていました。
昔はご大家によくあったパターン。親戚筋かあるいは血縁でなくても、優秀な婿を確保するため、幼い時に養子としてまず縁組してしまう。本人たちの意志やお互いの好悪よりなにより、家の存続が大事だった時代の慣習です。
小杉は養家の出資でヨーロッパ留学を果たし、帰国。ヨーロッパの個人主義や自由主義の影響を受けた彼は、自分の意志とは関係なく果たさねばならない婚姻に、難色を示すようになっています。
原節子の方は、小杉を兄のように慕い、彼の帰国を心待ちにしています。彼女は、婿のいない日本で花嫁修業にいそしみます。
小杉とともにドイツから同行したジャーナリストの女性に小杉は好意を持っているようなのですが、その女性は原節子や早川雪州扮する彼女の父親と接するうちに、ヨーロッパの個人主義や自由主義とは異なる日本独特の「思想」に関心を持ち、彼らの生き方に理解を示し始めます。
しかし、原節子は、小杉の心変わりにショックを受け、家出。着物に草履といういでたちで噴火口を目指します。彼女の後を追う、小杉。噴煙を上げる火口付近でほんとうに撮影したのかどうか不明ですが、このあたりの撮影はかなり力を入れた様子で、時間も長い。ドイツの山岳カメラマンとして有名な人が撮ったそうで、当時としてはかなりの迫力だっと思われます。
「新しき土」とは、満州の大地のこと。結局結ばれた二人は古いしがらみから逃れて、新天地満州で再出発、というところで映画は終了。当時の国策映画だと思うのですが、若き日の原節子のお相手が武骨な小杉勇、と言うところがどうもいただけません。展開も強引。でも、当時の人たちには、かなりインパクトのある映画だったのだろうな、とおもわれました。
この映画は、ある旧家を見学させてもらったときに見つけたチラシで知りました。
このチラシは、古い針箱の中に丁寧に折りたたまれてはいっていました。チラシには「常盤座」とあったので、多分映画館の名前なのでしょう。針箱の持ち主は、この旧家の現在の持ち主のおばあさま。大正初年くらいの生まれだということなので、映画のできたころは、多分25,6歳。嫁入りしたての頃にご覧になったのか。あの丁寧な畳み方から察するに、映画にずいぶん感銘を受けたのではないかしら。
親同士が決めた婚約をいったん破棄したあと、新たな気持ちで再び出会って結ばれた二人。当時の人たちには共感するところがあったのかもしれません。
個人の部屋などない昔の日本のこと。嫁の居場所は大家と言えどもなかったはず。大事なチラシをしまう場所は、針箱しかなかった。などなど、勝手にいろいろ想像をふくらませたことでした。
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