銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

下見の必須チェックポイント

2009年07月12日 | のほほん同志Aの日常
梅雨の晴れ間、夏本番を思わせる暑い1日。
こんな日は、涼しい美術館や劇場でのんびり過ごすに限ります。
そこで、知人から先日おしえてもらった新しい美術館の下見に行くことに。

つい5日前、七夕の日にオープンしたばかりのBBプラザ美術館。
ルノワールやユトリロ、マリー・ローランサンらの油彩画を中心に、
ダリの彫刻、また日本画の小倉遊亀まで、
小規模ながら粒ぞろいの名品が展示されておりました。

もちろん下見ですから、
■駐車場の有無 ■トイレの位置や個数 ■エレベーターの位置 なども当然チェック。
けれども実は、その辺りの情報は、ホームページや電話で分かることがほとんど。
それならなぜ、わざわざ下見が必要かというと…

事前にお客さまに伝えておくべき「ひとこと」を見つけるためです。
思い描くイメージと現実との間には多かれ少なかれ、たいていギャップがあります。
そのギャップをちぢめる適切なひとことを、車内でお客さまに伝えておく。
これがあるのとないのとでは、第一印象が大きく変わるもの。
そしてこれだけは、電話でもホームページでも分からない。

それを一番思い知らされたのが、去年の夏のツアー。
出石(いずし)の町に数十年ぶりに復活した芝居小屋、
「永楽館」でのこけら落とし歌舞伎公演でした。

こけら落としのため、事前の下見はできず、電話で情報収集。
トイレや館内の設備など、ひととおりのことは聞いていたのですが…。

当日ふと不安にかられて、出石へと向かうバスの中から電話をしました。
「えーっと、もちろん空調は効いてますよね?」
するとなぜか先方、
「いや、空調と言いましても…」と、もごもご。さっぱり要領を得ない。

よくよく聞いて判明したのが、館内には大型のエアコンがないということ。
けれども、どうやら「昔ながらの空調」はあるらしい。

えー、昔ながらの空調ってなによ?

ご存じでしょうか。
内陸に位置する出石市は、兵庫県内でもっとも気温の上がる町。
そして、季節は8月。

車窓から見る出石の町は暑さでゆらめいていましたが、
お客さまは当然、館内は涼しいと思っているはず。
あわててマイクを握りました。

「最近のホールは空調が効きすぎて寒いことが多いですが、
 永楽館は昔ながらの芝居小屋ですので、空調も昔ながらのものだそうです…」

我ながら要領を得ない、不安をあおるだけの説明。でも、ないよりマシ。

ドキドキしながら木造の小屋に入ってわかりました、正体が。
ところどころにドデンと置いてある氷の塊。
(よく動物園の白熊がもらっているアレですね)
その後ろでは扇風機が首をふり、気持ちひんやりした風がそよそよと…。
これが、「昔ながらの空調」でした。

この日の教訓。
夏の劇場と美術館が涼しいとは限らない。

さて、最新のビル内にオープンしたBBプラザ美術館。
館内では冷房がガンガンに効き、しばらくいると寒くなるほど。
これなら車内で言うべきひとことは、「上着を一枚お持ち下さい」でOKです。

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歌舞伎ことはじめ

2009年07月12日 | のほほん同志Aの日常
本日、最終回だった TBSドラマ 『MR.BRAIN(ミスターブレイン)』。
キムタク主演、ほかにも豪華出演者が目白押しのなかで、
歌舞伎役者の市川海老蔵の存在感が際立っておりました。

今でこそ、知人には少し歌舞伎に詳しいふりをしてますが、
歌舞伎を初めて見たのは、まだ2年ちょっと前。
初心者には難しそう…というイメージと、
何といっても1万5千円を超えるお値段に、遠い遠い存在でした。

ところが2年前、あの海老蔵が大阪松竹座で『勧進帳』に出演すると知り、
見てみたいなと、初めて心が動きました。
しかも聞けば聞くほどその『勧進帳』、歴史的な舞台になるらしいことが判明。
というのは…

――元禄時代、江戸と上方の地で歌舞伎を大きく花開かせたのが、
初代市川團十郎と、同じく初代坂田藤十郎でした。
以来、江戸・上方の大名跡として名前は受け継がれながらも、
代々にわたり、決して同じ舞台に立つことのなかった「團十郎」と「藤十郎」。
その両者が、300年の時を超えて史上初競演をはたす舞台、
それがこの『勧進帳』だったのです。

そんな歴史的な舞台、ひとりで見るのはもったいない、お客さまにもご案内したいと、
ツアーを企画し、添乗でご一緒したのが、初めての「歌舞伎」体験でした。

團十郎の弁慶、藤十郎の義経、海老蔵の富樫――。
文字通り、しびれました。

團十郎と藤十郎のどっしりした存在感は言うに及ばず。
そして、海老蔵。
花があるとは、この人のことを言うのでしょう。
花道に現れるだけで、観客の目をくぎづけに。
声が響けば、客席からはため息が…。

終演後、舞台の熱気さめやらぬままバスに戻ってこられたお客さま。
私もすっかり興奮状態。
何せ300年越しの初競演。初心者には恐れ多いほどの名舞台でした。

以来、にわか歌舞伎ファンとなり、
こんぴら歌舞伎や京都の顔見世、建替え間近の銀座歌舞伎座など、
全国各地の劇場や芝居小屋へと、足を運ばせてもらいました。

こうなったのも、最初の出会いが強烈だったから。
第一印象とはやはり、大事なものです。


「銀のステッキ旅行」でもちょうど今、記念すべき初めてのツアーを企画中です。
次へとつながるかどうか、それはここでの第一印象しだい。心してかからねば。

まずは、「ぜひ参加したい」と期待していただける内容のものを。
そして、いざ本番で、期待以上の満足感を提供できるかどうか。

ちなみに、あのときの『勧進帳』に勝る舞台にはまだ出会えておりません。
それでもあの興奮を忘れられず、今後も劇場へと通いつづけることでしょう。

「最初のツアーがあんまり良すぎると、のちのちハードルが高くなるかも…」
そんな、お幸せで図々しい考えはこの際さておき、知恵をふりしぼります。

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