まだ学生の頃、初めて行く美容院で
「こんな感じにして下さい」と
ピカソの絵のポストカードを渡したことがあります。
別に奇をてらったわけじゃなく、
その絵の女性の髪形を、素朴にステキだなぁと思ったまで。
もの静かな男性の店長さん、ちょっと間をおいてからひとこと。
「――抽象画を持ってこられた方は、初めてです」
そうは言いながらも、見事、私のイメージする雰囲気に仕上げてくれました。
こんな古い話を思い出したのは、
今日、久しぶりに似たような経験をしたから。
にわかホームページ担当者として、Webデザイナーの方と
トップページのデザインをどうするか、打ち合わせていたときのこと。
「イメージは、昔の船旅なんです。アンデルセンの『雪の女王』に出てくるような」
また分かりにくい…。自分でもそう思う。
こういう場合、たいてい私の頭のなかのイメージは、まだぽやんとしています。
人に伝えたくとも、的確に伝える言葉も表現も出てこない。
イラストを描いてみせようにも、絵は字よりもさらに下手。
時間さえたてば頭のなかの「ぽやん」は、
やがてくっきり浮かび上がってくるのだけれど。
こんなときは仕方がない。
イメージを呼び起こしたものや、それを部分的に表現する言葉のきれはしなど、
何でもいい、とにかく手がかりとなるものを相手に投げて、待ってみる。
この場合、そのキーワードが、アンデルセンの『雪の女王』と船の旅。
待つこと数時間。
――返ってきたものを見て驚きました。
まさにイメージ通り、まるで頭のなかをそのまま現像したかのよう。
『雪の女王』に出てくる「昔の船旅」は、
セピア色に焼けた海図と羅針盤になっていました。
その絵を見て、ふと思いあたることがありました。
4月まで勤めていた旅行会社での最後の仕事となったのが、小笠原諸島への添乗。
かつて「ボニンアイランド」と呼ばれた小笠原は、
東京の芝浦港から「小笠原丸」に揺られて25時間! はるか南方の海上に位置します。
長い船旅の途中、特別に入れてもらった操縦室からは、見渡すかぎりの大海原。
エンジン音に驚いたトビウオが、ポーンポーンと飛んでいき…。
コンピュータ制御のモニターがずらりと並ぶなかで、
ふと目がとまったのは、奥の机に広げられた航海図と、
その上に転がる特別仕様の大きなコンパス。
1時間ごとの航路をミリ単位で記録した航海図に見入っていると、
船長がやってきて教えてくれました。
「こんな時代になっても、昔ながらの海図とコンパス、
この2つが航海をするうえで欠かせないんですよ」
…そうか、これだったのか。「ぽやん」の正体は。
――海図と羅針盤。
全体を広く見渡す目と、進むべき方向を定める指針。
「銀のステッキ旅行」の舵取りをはじめようという今、
新しい船出を飾るホームページに
これほどふさわしいデザインは、ほかになかったのかもしれません。
「こんな感じにして下さい」と
ピカソの絵のポストカードを渡したことがあります。
別に奇をてらったわけじゃなく、
その絵の女性の髪形を、素朴にステキだなぁと思ったまで。
もの静かな男性の店長さん、ちょっと間をおいてからひとこと。
「――抽象画を持ってこられた方は、初めてです」
そうは言いながらも、見事、私のイメージする雰囲気に仕上げてくれました。
こんな古い話を思い出したのは、
今日、久しぶりに似たような経験をしたから。
にわかホームページ担当者として、Webデザイナーの方と
トップページのデザインをどうするか、打ち合わせていたときのこと。
「イメージは、昔の船旅なんです。アンデルセンの『雪の女王』に出てくるような」
また分かりにくい…。自分でもそう思う。
こういう場合、たいてい私の頭のなかのイメージは、まだぽやんとしています。
人に伝えたくとも、的確に伝える言葉も表現も出てこない。
イラストを描いてみせようにも、絵は字よりもさらに下手。
時間さえたてば頭のなかの「ぽやん」は、
やがてくっきり浮かび上がってくるのだけれど。
こんなときは仕方がない。
イメージを呼び起こしたものや、それを部分的に表現する言葉のきれはしなど、
何でもいい、とにかく手がかりとなるものを相手に投げて、待ってみる。
この場合、そのキーワードが、アンデルセンの『雪の女王』と船の旅。
待つこと数時間。
――返ってきたものを見て驚きました。
まさにイメージ通り、まるで頭のなかをそのまま現像したかのよう。
『雪の女王』に出てくる「昔の船旅」は、
セピア色に焼けた海図と羅針盤になっていました。
その絵を見て、ふと思いあたることがありました。
4月まで勤めていた旅行会社での最後の仕事となったのが、小笠原諸島への添乗。
かつて「ボニンアイランド」と呼ばれた小笠原は、
東京の芝浦港から「小笠原丸」に揺られて25時間! はるか南方の海上に位置します。
長い船旅の途中、特別に入れてもらった操縦室からは、見渡すかぎりの大海原。
エンジン音に驚いたトビウオが、ポーンポーンと飛んでいき…。
コンピュータ制御のモニターがずらりと並ぶなかで、
ふと目がとまったのは、奥の机に広げられた航海図と、
その上に転がる特別仕様の大きなコンパス。
1時間ごとの航路をミリ単位で記録した航海図に見入っていると、
船長がやってきて教えてくれました。
「こんな時代になっても、昔ながらの海図とコンパス、
この2つが航海をするうえで欠かせないんですよ」
…そうか、これだったのか。「ぽやん」の正体は。
――海図と羅針盤。
全体を広く見渡す目と、進むべき方向を定める指針。
「銀のステッキ旅行」の舵取りをはじめようという今、
新しい船出を飾るホームページに
これほどふさわしいデザインは、ほかになかったのかもしれません。