銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

お守りパスポート

2015年02月01日 | のほほん同志Aの日常
二十歳になった夏、沢木耕太郎さんの『深夜特急』にいたく影響されて
ヨーロッパへのひとり旅に出かけました。

ベルリンから入って、1ヶ月後にローマから帰国。
決まっているのはそれだけで、あとは気の向くまま足の向くまま。

勇ましく出発したのに、初日の宿も決まっていないまま、
ベルリン空港にぽつんと取り残されたときの不安。

その後も若い女性(!)のひとり旅ゆえ、それなりに怖い思いもしつつ、
往復の航空券と『地球の歩き方』と好奇心だけを頼りに
ヨーロッパを歩きまわりました。

いえ、頼りにしたのは、それだけではありませんでした。

日本国旅券――パスポートです。

スペインの南端からは、アフリカ大陸が見えました。
眺めているうちに、どうしても海を越えて渡ってみたくなり、一晩悩んだすえ、
アルヘシラスという小さな港町からモロッコへと渡るフェリーに乗り込みました。

フェリーのなかはすでに異文明で、
えらいとこ来てしまったなぁ…とドギマギしながら
パスポートをぼんやり見つめていて、はっとしました。

表紙を開けたところに書かれた文字。

 日本国民である本旅券の所持人を
 通路故障なく旅行させ、かつ、
 同人に必要な保護扶養を与えられるよう、
 関係の諸官に要請する。

        
        日本国外務大臣


それを読んだとき私はひどく感動し、心の底から安堵したのです。
よかった、守られている――と。


二十歳の旅の延長上に、きっと今があります。

毎月のようにともに旅するパスポート、
今日、表紙を開けて、久しぶりにあの文字に目を走らせました。

あれ、文言が変わってしまったのかな

そう思うほど、その言葉からは何も響いてきませんでした。



<追記>
こういうとき、あの人ならどう言うのだろうと訊いてみたくなります。

そのひとりが、脚本家の野島伸司さん。

昨年読んで感銘を受けた野島さんの小説、
『スヌスムムリクの恋人』の一節を読みかえしました。

「自己責任ってなんだろう?
 僕らは若い。希望や夢や好奇心に溢れている。
 それは時には危険を顧みない探究心だったり、冒険だったりもする…」
 

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