私がこのお祭りを最初に知ったのは、
当時愛読していた坂東眞砂子さんのエッセイ集でした。
土俗神への信仰心を中心に、
日本各地に伝わる風習や民俗を題材にした小説を多く世に出されています。
目には見えない何か、しかしその何かの存在を肯定しないと、
どうにも説明できない不可解が世の中には存在する。
人智をはるかに超えたその存在への畏怖の念がやがて信仰となり、
その土地の祀りごととなっていく。
地方を旅すると、あらためて驚かされます。
これほどまでに小さな島国「日本」において、
数多くの風習が存在すること。
そして、これだけ情報量が散乱する現代においても、
その風土でしか育まれない異文化が数多く息づいていることに。
『身辺怪記』と題したお話の中に、
「秋葉まつり」の紹介が載っていました。
初めて目にしたこのお祭りを作者はこんなふうに表現していました。
「まるで、それは人の首が飛んだかのようだった」。
祭りのハイライトでもある「鳥毛」といわれる花形役。
長さ7メートル、黒い羽の塊を尖端に乗せた槍を若者ふたりが投げ合う大技です。
猛禽類が羽を広げたような舞も披露しながら、身体をしならせ槍を放ちます。
その槍先の鳥毛が、人間の黒髪に見えたというのです。
平家の落ち武者が移り住んだという伝説も相まって、
想像を掻き立てられました。
青空に血しぶきあげながら、黒髪をなびかせ舞い上がる無言の塊。
いつか見てみたい。
さて、私にとっては10年ぶり2度目の訪問です。
山肌にへばりつくように猫の額ほどのうねうね道を
男衆200人ほどが練り歩きます。
その行列が目前を通過するまで1時間近く、
段々畑のあぜ道でひたすら待ちました。
でもまったくその時間が苦痛でないのです。
道化師役の油売りが、前座を務め、見物人を盛り上げます。
ユーモラスな動きと甲高いホホーという奇声をあげながら、火除けのお守りを売り歩きます。
春のような日差し、白梅の香り、軒先でお酒を飲む村人の赤ら顔、
化粧を施された童子のハニカミ、遠くから聞こえる御囃子の音、
年長者に従う若人の雄叫び、土佐弁のキーキー
普段静寂の山に囲まれた村が、
今日だけは一年に一度のこの祭りを祝う歓喜に包まれるのです。
そこに身を置くだけで、私たち観光客もおのずと高揚していきます。
「ああそうだ、この記憶どこかで」
デジャ・ヴー
それぞれが心に留める祭りの風景が浮かび上がります。
いつか、どこかで見た景色。
「祭り」は人の暮らしであり営み。
遠いふるさとへの追憶が人々を祭りへと駆り立てるのかもしれません。
田舎のお弁当もこんなところでいただくと美味しいものですね!
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