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公表されてきた「福音関連の評論」が一段落

2015-07-22 18:56:04 | モルモン教関連

[状況に照らして啓示を考察する。新しい「福音関連の評論」は現代のモルモニズムを如何に形成してゆくか]

2013年11月以降、2014年10月まで約1年間教会がLDS.orgに公表してきた、「福音に関する評論」(Gospel Topics Essay)は11篇に及び、現在一段落している。その評論をリストアップし、主なものをここで改めて簡単に振り返っておきたい。

1 モルモン教徒はクリスチャンか。2013/11/20
2 最初の示現の諸版。2013/11/20
3 人種と神権 2013/12/06
4 初期ユタ時代の多妻結婚と家族 2013/12/16
5 モルモン書の翻訳 2013/12/30
6 モルモン書とDNA研究 2014/01/31
7 神のようになることについて 2914.92.24
8 19世紀の末日聖徒の間における平和と暴力の問題 2014/05/13
9 アブラハム書の翻訳と史実性 2014/07/08
10 カートランドとノーブーにおける多妻結婚 2014/10/22
11 宣言と多妻結婚の終焉 2014/10/22

いずれも重要な事柄であるが、特に注目された難しい問題は次の6つではないかと思う。

① 最初の示現の諸版
   1832年 JSを訪れたのは「主」ひとりで、スミスは罪を赦された喜びを記録している。個人的な略式メモの形。
   1835年 この時の説明では、まずひとかたが現れ、ついでもうひとかたが現れたとなっていて、さらに多くの御使いを見たとも記している。
   1838年 こんにちに伝わるもの。高価な真珠にあるように神とイエスの二方が訪れ、どの教会にも加わってはならない、と告げられる。
   1842年 上記に同じ内容。ジョン・ウェントワースの求めに応じて会員外の読者を対象に簡潔、率直に説明している。
 LDS.org の評論では焦点(強調点)が異なるのであって、矛盾はないと説明している。

② 人種と神権 
 われわれ日本人の目には、黒人にも神権を与えるという1978年の啓示を繰り返したものであるが、四半世紀たっても白人種以外に対する偏見が教会内で消え去らないで、BYUの教授でさえ1978年以前の心情で公言する始末であった。それで、改めて教会はそのような立場に立つものではないと詳しい評論を発表した。その中で「今日,教会は過去に流布した、カインに下された神の「のろい」のしるしは,褐色の肌である,あるいは黒人はルシフェルとの前世の戦いにおいて,勇敢ではなかったので神権と神殿の祝福を差し止められている,・・などの見解を否定する」と明言している。

③ モルモン書の翻訳
 ジョセフ・スミスがモルモン書を翻訳する姿はイラストで描かれるなどして、イメージが定着しているが、この度の評論では、ジョセフが,「解訳器か聖見者の石のどちらかを帽子の中に入れ,外部からの光を遮断するためにその帽子に顔を押しつけて,その用具に現れた英語の言葉を読みあげた」記録があることを認めている。また、JSが昔遺失物や埋められた宝物を探すために、地中から見つけた小さな卵形の石(「聖見者の石」)を、聖文を翻訳するという崇高な目的のために用いるようになったこと、その時にはウリムとトミムと呼ばれた次第を説明している。

④ モルモン書とDNA研究
1980年代半ば以降、DNA研究によりアメリカ先住民がシベリア経由アジア系に起源を求めることができる、と専門誌に発表されるようになり、モルモン書の史実性が問われるようになった。そのことで研究者の立場に立ったオーストラリアの元監督が破門されるに至った。この問題に対して、弁明の論陣を張ったもの。集団遺伝学はまだ仮説であり、モルモン書に登場する人々の遺伝子が検出できない以上、モルモン書の信憑性を肯定も否定もできない、と述べている。

⑤ アブラハム書の翻訳と史実性
 パピルスの断片が1967年に教会に返還され、そこに記されているのは死者の書であって、高価な真珠の内容と一致しないことが明らかになって教会は守勢に立たされていた。パピルスから「翻訳」されたと伝えられてきて今もそうなっている(日本語訳印刷版)ことについて、ここで言う「翻訳」とは物質的な遺物を媒体として啓示を受けたもので、広い定義で受け止めるべきである、また断片はほかにも見つかっていないものがある、としている。
 
⑥ 末日聖徒イエス・キリスト教会における多妻結婚(英語で3回に分けて掲載されたもの)
 すでに知られていることが大部分であるが,ジョセフ・スミスが早い時点で1830年代半ばに女中であったファニー・アルジャーを多妻の最初の相手として娶ったこと、後に多妻の数が増え結局30-40人に達したこと、中には14歳の少女もいたことが記されていて、いろいろな説明があるものの読者に衝撃を与えるのではないだろうか。 

以上、教会員にとってこれまで聞いてきた理解とは異なる、必ずしも快くない内容が含まれている。米国でも会員たちは容易に信じられず、大管長会がこれについて何か言ってくれるまでは受け入れられないと逡巡している。それに対して、教会歴史家で七十人であるステイーブン・E・スノウ長老が、大管長会と十二使徒会の承認を得たもので教会の公式サイトに掲載されている、教会員はよく学んで欲しい、と述べている。

ただ、多くの会員は読んでもすぐには掲載された意味が分からないかもしれない。いずれもかなり長文で、多くが既知の内容で構成されているからである。評論公表の意義を理解するためには、この一連の文章が掲載された背景を知って、外部のメディアのように鋭い目で見る必要がある。(背景とはネット上に教会にとって好ましくない情報があふれ、対応を迫られたこと)。どの項目も信仰者が受ける衝撃が大きくならないように、研究者や外部の指摘を含みながらも微妙に文言を和らげ調整して編集されている。

なお、「福音に関する評論」は教会の公式サイトlds.org.jpn に行き、順次「聖文と研究」「福音のテーマ」「福音のテーマの論文」「論文を研究する」とクリックし、9つの論文リストから選んで読むことができる。

参考 当ブログの記事
2005.12.23 生成的発展を遂げた見神録
2014.06.08 声明「人種(問題)と神権」の要点
2006.02.20 DNAとモルモン書の問題
2014.11.13 モルモン教会、ジョセフ・スミスの多妻を公的に認める


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44 コメント

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Unknown (鯖の味噌煮)
2015-07-23 00:49:15
① 最初の示現の諸版
>LDS.org の評論では焦点(強調点)が異なるのであって、矛盾はないと説明している。

で、NJ氏も矛盾を感じないんでしょ?何か問題があるんですか?


④ モルモン書とDNA研究
モルモン書に登場する人々の子孫の遺伝子であれば検出可能です。生ける神の予言者は以下のように末日聖徒に宣言しました。
--------------------------------------
「南太平洋諸島に住む聖徒たちに向かって,〔スペンサー・W・〕キンボール大管長は次のように語った。『教会の大管長であるジョセフ・F・スミス大管長はこのように報告しています。「ニュージーランドから来た兄弟姉妹の皆さん,皆さんに知っていただきたいのです。皆さんはハゴスの末裔です。」
ニュージーランドの聖徒たちはこれを聞いて安心しました。主の預言者が語ったのです。
--------------------------------------
http://ldschurch.jp/bc/content/Japan/gospel-library/manuals/institute/institute-bom-student-manual.pdf
(インスティチュート『モルモン書』生徒用資料 p.248)


② 人種と神権
生ける神の予言者は使徒時代に総大会で以下のように末日聖徒に教えています。NJ氏がヒンクレーが総大会で語ったことを元に教会の十字架への姿勢への根拠とするなら、当然以下の説教も教会の姿勢であることを認められるはずです。
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「レーマン人の時代は近い。何年もの間、レーマン人は喜ばしい成長を遂げ、今や約束されたように、『皮 膚の色が白くて喜ばしい民』になりつつある。・・・20名のレーマン人宣教師の写真を見ると、その中の15名は非ラテン系の白人のように皮膚が白く、残りの5名は褐色であるが同じく喜ばしい民である。ユタの里親プログラムに参加している子供たちは、インディアン指定居住地のホーガン(土と木の枝で作り、泥や芝でおおったインディアンの住居)に住む自分の兄弟や姉妹たちよりも、白い皮膚をしていることがよくある。
・・・ユタの町のある医者はインディアンの少年を2年間自宅に預かったが、その少年は居住地から里子として来たばかりの弟よりもいくらか白くなっていたとのことである。これらの若い教会員は、『皮膚の色が白くて喜ばしい民』へと変わりつつある」
--------------------------------------
(1960年総大会 スペンサー・W・キンボール)
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Unknown (ジョン・ドゥ)
2015-07-23 01:49:30
そういやNJ氏って日ユ同祖論にしばしば言及されてましたね。好きなんでしょうか。なんだか笑えます。
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Unknown (鯖の味噌煮)
2015-07-23 07:25:24
1960年総大会のキンボール長老の説教は以下の場所で読めます。BYUのサイトです。
http://scriptures.byu.edu/gettalk.php?ID=1091&era=yes
エンサインのバックナンバーは公式サイト上には存在しません。

なおここでキンボール長老はインディアンという語を使っています。ネイティブ・アメリカンとは呼んでいません。しかしだからと言ってキンボール長老が差別主義者だったかとは言えません。1960年当時、ネイティブ・アメリカンという語は誰も使っておらず、おそらく世界中の人が彼らをアメリカ・インディアンと呼んでいました。

ただし、同様に『1960年当時だから』という理屈でもってキンボール長老が使ったレーマン人の皮膚が白くなるという表現を、『彼が古い考えに支配されていたのであり教会の意向とは違う』とは言えないことは理解できますでしょうか?

レーマン人とその歴史については、末日聖徒イエス・キリスト教会の聖典である『モルモン書』にのみ書かれたことであり、その正当な解釈をなしうることができ、生ける神から直接の啓示を受けている預言者であると全世界の末日聖徒が賛成の意思を右手の挙手で示すキンボール大管長(当時は使徒)の言葉であるからです。

公式な聖典に関して、公式な総大会で生ける神の予言者が引用した説教を『それは古い考え方だから』と退けるのであれば、いったい何をもって教会の公式な姿勢を示すのでしょうか?

世間の受けが良いかどうかを基準にして、自分の勝手な思いのままに、これは公式、あれは非公式と選り分けているのなら、それは不誠実です。それがあなたがたの『研究』なのですか?
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Unknown (教会員)
2015-07-23 09:26:14
公式・非公式とえり分けるも何も、そもそも教会の公式の教義自体が子供でも理解できるような、非常に単純明確で驚くほど数が少ない(それ以上の大部分は未確定な論、つまり強制的に信じなくても良いようなものばかり)なのです。

モルモンの教義は、一般キリスト教のよう複雑怪奇ではなくても良いのがなぜ分からないのだろう。

モルモン書を含めて聖典に書いてあっても、また右手で支持された予言者の偉い一人が公式の場で、あるいは書籍でひとたびこう述べたなら、注目すべきであっても、だからと言って直ちに教会の教義に決定ともならないし、救われるために信じなくてはならないことにもならないです。 

本当に賢明な教会員は神が召された預言者は完璧であって一つも間違わないとは信じておらず、批判してはならないと信じています。

そのことが分かる良い例が、①~⑥ってことでしょ。時代が進めば教会も成熟してきて、コメントも合理的にできるようになってくるならそれは歓迎すべきことです。 

それを無理やり「不信仰」に結び付けたい人々がいて、困ります。

先の十字架かゲッセマネか論にしたって、「耐え難い苦痛はゲッセマネ」であったからと言って、イエスの十字架の死が軽減されてどうでもいいことにはならないでしょう。聖餐の水が重要か水が重要かなんて、まともな教会員は分けて考えないですよね。

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訂正 (教会員)
2015-07-23 09:31:29
聖餐の水が重要か水が重要か→聖餐の水が重要かパンが重要かに訂正します。

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一部レス (NJ(沼野))
2015-07-23 09:58:28
すぐ上の「教会員」さん、コメントに感謝致します。

>ジョン・ドゥ さん

私は日ユ同祖論に賛成していません。民間神話のようなものと思っています。

>鯖(さば)の味噌煮さん、

エンサイン誌は本家のlds.org に1971年以来45年分が掲載されています。
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Unknown (ジョン・ドゥ)
2015-07-23 10:32:58
NJさんはキリスト教批判で有名な佐倉哲氏のサイトにメールを送られていますが、何の脈絡もなく日ユ同祖論を持ち出されて、佐倉氏は当惑されたのではないかと思います。

少なくともNJさんにとってキリスト教と日ユ同祖論は同レベルなのだと感じます。
(www.j-world.com/usr/sakura/replies/bible/bible54.html)
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Unknown (Unknown)
2015-07-23 12:44:35
「今日,教会は過去に流布した、カインに下された神の「のろい」のしるしは,褐色の肌である,あるいは黒人はルシフェルとの前世の戦いにおいて,勇敢ではなかったので神権と神殿の祝福を差し止められている,・・などの見解を否定する」と明言している。

2013年度版の聖典は、いったいなんだったの
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Unknown (Unknown)
2015-07-23 13:13:22
教会員さんへ

モルモンの教義は一般のキリスト教に比べてどうのこうのって、物識顔で口にする末日聖徒は多いけど、キリスト教会の教義をまともに知ってる末日聖徒なんていないでしょ。

私は改宗して35年だけどそんな人、一人も出会ったことないわね。
あなたはどれ程知ってるの?
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Unknown (Unknown)
2015-07-23 19:07:28
たとえばカトリックは過去の異端審問や種々の差別について教皇が謝罪してるんだよね。『過去のことだから』なんて言い逃れしない。

それを見て末日聖徒は彼らの潔い態度に倣うどころか、『またカトリックが悪事を認めましたね』と手を叩いて喜び、『モルモンは異端審問とは関係ないから』と他人のふり、普段はあれほどモルモンをキリスト教に認めないことをけしからんって言ってるのにね。

キリスト教に加わるってことは先人たちの過ちも甘んじて受け入れることなんだよ。末日聖徒にそれは永久に出来ない。

だって他人の罪に関わらず、シミのない衣を着て天国の特等席をもらいましょうと言うのがモルモン教義だからね。ファーストクラスで永遠の生命を!さぞかし快適だろうね?

ああ、ごめんなさい、知的モルモンの方々は来世なんて信じてないのでしたね。頓珍漢なことを言ってすみません。
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