NJWindow(J)

モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。

モルモン書邦訳4種 (訳例を追加 一部更新 )

2012-01-08 21:40:43 | モルモン教関連
末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会)の聖典モルモン書の邦訳も現在4種存在するようになっている。

古い順に記すと次のようになる。

1 「モルモン経」明治訳1909(明治42)年10月 生田広治訳
 明治訳について佐藤龍猪は次のように書いている。「その訳はまことに立派なもので、必ず名のある専門の英学者の手によって成ったものであることを確信させられました。」この評の通り、格調高い文語訳である。
 訳例 「此世に於ける生涯は試練の時期と成り、神に逢ふ用意をなすべき時期となり」(アルマ12:24)
 「人は如何ばかり勉め励むとも、其救わるるは偏に神の恩恵に頼る(よる)」(ⅡN 25:23)

2 「モルモン経」昭和訳1957(昭和32)年 5月 佐藤龍猪訳
 明治訳が優れた文語訳であったのに対し、漢字を大幅に少なくし、仮名遣い、用語の変更など現代の口語訳にしている。明治訳を構文面で踏襲した個所も多く、前訳を参考にしている。なお、イエスや天使の語る言葉は文語に留めている。
 訳例 「この世の生涯は試しの時期となり、神に逢う用意をする時期となり」(アルマ12:24)
 「人がどんなに勉め励んでも、その救われるのはひとえに神のめぐみによる」(ⅡN 25:23)

3 「モルモン書」平成訳1995(平成7)年8月 東京管理本部翻訳課黄木信と一般会員であった沼野治郎他。昭和訳以来40年近くたち、改訂の必要が生じていた。それまで文語であった「教義と聖約」の現代語訳と合わせてこの時全般的な聖典の改訂が行われた。
 訳例 「この世の生涯は試しの状態、すなわち神にお会いする用意をする時期、・・となった」(アルマ12:24)
 「わたしたちが最善を尽くした後、神の恵みによって救われる」(ⅡN 25:23)

4 「モルモン書」平成改訂版 2009(平成21)年4月 東京管理本部
 細部の改訂を試みているが、「翻訳が(1995年平成訳と)大きく変わるわけではない」(リアホナ09年4月号)と断っている。明治訳以来100周年に当たるのを記念して、内容というより装丁上版組などを主として改訂したもので、パソコン(DTP)組版となっている。
 訳例 「この世の生涯は試しの状態、すなわち神にお会いする用意をする時期、・・となった」(アルマ12:24)
 「わたしたちが自分の行なえることをすべて行なった後に、神の恵みによって救われる」(ⅡN 25:23)

なお、明治期アルマ・O・テイラーが最初に翻訳を完成させていたが、口語訳では当時聖典として威厳に欠けるとして日の目を見ていない。私はこのテイラ―訳がどんなものであったか大変興味を持っているがまだその存在について聞いていない。ちょうど聖書のギュラフ訳に相当するであろうか。ともあれ邦訳モルモン書も本文批評と翻訳の変遷・比較が研究対象となり始めている。

例えば、訳例の二つ目で明治訳、昭和訳が「恵み(grace)」重視であるのに対し、平成訳、平成改訂版では「行ない」重視に変わっている。この部分の英語は it is by grace that we are saved, after all we can do である。英文を見る限り強調構文で grace (恵み)が強調されている。

各翻訳の英語原文は、1. 1879年版、(or 1905年版) 2. 1952年版 (実際は1920 edition)、 3. 1981年版、 4.同1981年版である。

参考文献
・Book of Mormon Critical Text, A Tool for Scholarly Reference, III Helaman - Moroni, FARMS, 1987
・リアホナ誌 2009年4月号 チャーチニュース欄 p. 8
・Murray L. Nichols, “History of the Japanese Mission of the L.D.S. Church 1901-1924,” MA Thesis, Brigham Young University, 1957
・モルモンフォーラム誌 15号(1995年 秋季)ニュース欄 モルモン経の翻訳 改訂される  
・佐藤龍猪、「聖徒の道」誌1957年7月号
・高木信二、W.マッキンタイヤ「日本末日聖徒史」ビーハイブ出版、1996年
  


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
モルモン経 (オムナイ)
2012-01-11 12:25:10
英文のモルモン書が欽定訳に習った文である以上、
日本語も文語体のままで。。と思うのは時代錯誤でしょうか(~~)

生田広治さんの文体はそれほど素晴らしい。
やはり専門の翻訳家に任せたほうが心に響くかもと思います。

そういえば明治訳、昭和訳とも改定版が出ていますから、正確には6種?になるのでしょうか。

文語訳のポケットサイズという珍しいモルモン経もコレクションとして所蔵してます(^^)

恵みと行いの強調の違い参考になりました。
久しぶりに読み比べてみます。
返信する
こんにちは (NJ)
2012-01-11 17:07:10
明治訳、昭和訳に改訂版があるとすれば、それもきちんと把握したいですね。ここに少し、あそこに少しとさみだれ式で微細なものであれば、「注」程度でもいいですが。この二つの改訂版について御存じでしたら教えてください。

昭和訳、途中でIIN 2:23 の改訂が行われていると推測しています。万国博覧会が行われた1970年版はきっと変わっているとみています。もしどなたかお持ちでしたら調べて教えてほしいと思っています。(中国語は1970年に行ない重視版になっています。)

文語訳のポケット版の存在は知りませんでした。
返信する
勘違い? (オムナイ)
2012-01-11 21:23:27
あれ?改訂について、わたくしの思い込み、勘違いかも。。
失礼しました。

http://www.babelbible.net/pdf/pdfmari.cgi?mode=right&type=2&keyword=

↑こちらに、明治訳、昭和訳のデータがありました。

返信する
驚き (NJ)
2012-01-11 21:47:47
こんな頁があるのですね。クルアーンもある。
返信する
「モルモン経」のPDF (上羽慶)
2016-04-30 10:51:22
明治時代の翻訳には興味ありますが、何をすればそれを手に入れますか?
返信する
明治42年発行のモルモン經は、 (たまWEB)
2016-04-30 15:16:28
PDFで
http://www.babelbible.net/pdf/manual/morjb.pdf

上記、オムナイさんの紹介サイトから、リンク先が・・・


返信する

コメントを投稿