「佐々木酒造店」
「もう一度閖上で酒造りを」
工夫をこらした仮設蔵で再起を誓う兄弟の想い
閖上の海岸から1.5km。佐々木酒造店はこの地で150年余の歴史を持つ造り酒屋。兄・洋さんは蔵の統括を担う専務、弟・淳平さんは杜氏を担当。兄弟が二人三脚で酒造りに取り組んでいたところに、2011年3月11日に発災した東日本大震災で生まれた高さ5mの津波が容赦なく押し寄せ、蔵も店舗も押し流し、すべての施設設備が全壊した。
それでも「酒造りをやめない。必ず蔵を再建する」と宣言した2人のもとに、全国から次々と支援が届いた。佐々木専務は当時の心境をこう説明する。
「阪神淡路大震災で大きな被害をこうむった蔵元さんからは、『蔵や地酒はその土地の文化。文化を失えば町も消えてしまう。くじけず、いまできることを少しずつ積み重ねましょう』というメッセージをいただき、ずいぶん支えになりました」
震災の翌年、県内や九州の焼酎藏からの機材の寄贈を受け、名取市復興工業団地にて酒造りを再開した。温度管理がしやすいよう断熱効果の高いウレタン材で壁面全体を覆った。温度、湿度、衛生管理など酒造りに必要な条件をクリアするため、さまざまな方からの支援を受けた蔵だった。
震災の翌年(2012年12月)から酒造りを再開したのは、名取市復興工業団地(名取市下余田)内の仮設の酒蔵。温度管理がしやすいよう断熱効果の高いウレタン材で壁面全体を覆った工場内に、県内の蔵や九州の焼酎蔵から寄贈を受けた機材が整然と並ぶ。
「日本酒の歴史において、仮設蔵での醸造はかつてなかったはずです。温度、湿度、衛生管理がカギを握る酒づくりを、果たしてこの環境下でできるのか、そんなところからのスタートでした。だからこの仮設蔵にはさまざまな方からの支援とアイデアが詰まっています。何年先かわからないけど、絶対閖上に帰って酒を造ります。どんなことがあっても気持ちさえ折れなければ何とかなることを震災で学びました」
故郷の復興に想いを馳せ、新天地で一歩を踏み出した2人の瞳には、力強い意思が漲っていた。
「創業の地、閖上での復活」
酒は地域の力水
故郷閖上の復興が進み道路が敷かれ電柱が立つ2017年頃、本格的に酒蔵の再建を考えられるようになった。自分たちの造りたい宮城の酒をイメージし、兄弟二人で各地の酒蔵を巡り新しい酒蔵の設計図を引くと、いよいよ創業の地・閖上に酒蔵を建設。2019 年10月1日、日本酒の日に蔵開きをおこない本格的な再建を遂げた。「宮城、閖上に寄り添う酒造り」を掲げ、地域の力水となる「宝船浪の音」を醸し続ける。
佐々木酒造店 宮城県名取市閖上中央一丁目12番地の3
*https://miyagisake.jp/kuramoto/sasaki/ より
代表銘柄
宝船浪の音 純米酒
特 徴 1回火入れ・瓶貯蔵・氷温貯蔵・澄ましろ過
製法上の分類 本格清酒(純米酒)
香りのタイプ 爽やかな果実様香ほのかなタイプ
味の濃さ判定 やや軽快
味のやわらかさ判定 キレがある
お薦めの飲み方 冷やして・常温・ぬるめの燗
その他 原料米 宮城県産米100%
精米歩合 65%
酸度 1.8
アミノ酸度 1.0
グルコース濃度 0.8
日本酒度 +2
アルコール度数 15度
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます