goo blog サービス終了のお知らせ 

ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

学校崩壊 - 9 ( 憲法9条と自衛隊 )

2020-11-02 20:34:01 | 徒然の記

 氏は際どい議論を避け、誰もが知っている話に終始していると、私にはそう思えてなりません。

 102ページで、氏は政府が憲法を改正せず、解釈ですり抜けて来たため、どのような問題が生じたかを、生徒と共に考え、4つの問題点に整理します。

 1. 自衛隊が憲法違反であることを、ほとんどの国民が知っている。

  「そのため国民の多数は、国民を守ってくれる自衛隊を、公然と尊敬することをしていないから、隊員の士気が低下すると言う問題がある。侵略された時、本当に守ってくれるのかと言う、心配がある。」

 2. 相手の国を攻撃するだけの武力は、持たないことになっている。

  「したがって主として、核攻撃に対しては、アメリカ軍に頼ることになる。アメリカ軍が、本当に守ってくれるのかと言う問題と、それで本当の独立国と言えるのか、と言う問題が出てくる。」 

 3. 国際貢献について、PKO ( 国連平和維持活動 ) には踏み出したが、PKF ( 国連平和維持軍 ) には参加できない。

  「したがって、日本は外国から非難されると言う問題が出てくる。」

 4. 無理な解釈をしているため、法律が不備になっている。

  「現実的な侵略に対し、有効な行動が取れるのかと言う問題がある。さらに自衛隊へのコントロールが不十分で、暴走する恐れが残っている。」

 以上4つの問題点は、どれも「日本国憲法」の悪法たる核心を捉えています。しかし教師である氏が、政府、マスコミ、野党、日教組へと、余計な忖度をしているため、解決の足しになりません。

 憲法への取り組み姿勢が、最初からおよび腰で、間違ったアプローチをしていますから、核心へ迫っても、先へ踏み込む勇気がありません。こうなって来ますと、氏は教師というより、風見鶏の政治家に近い気配を感じさせます。

 先ずもって、 「1. 自衛隊が憲法違反であることを、ほとんどの国民が知っている。」と言う、この認識からして間違いです。自衛隊が憲法違反なのでなく、自衛隊を違法にする憲法が、おかしいのです。この前提を述べる勇気がないのですから、あとは全て言葉の遊びになってしまいます。

 「憲法違反の自衛隊だから、国民が敬意を払わない。」と言うのは、看過できない事実です。外国が侵略して来た時、本当に守ってくれるだろうかと、そんな心配をするのなら、おかしな憲法を変えようと、氏はなぜ生徒に提案しないのでしょう。自衛隊などと言うから、ボーイスカウトの少年救助隊みたいな響きですが、現実には、隊員は軍の兵士であり、領土と国民を守るため、日々命がけの厳しい訓練に励んでいます。

 他国を見れば分かりますが、国民は軍人に敬意を払っています。憲法違反の軍隊など、日本以外にはありません。隊員の士気が低下するのは当然でしょう。問題提起してことが終わったとする、氏の姿勢は、厳しい言い方になりますが、反日・左翼の野党と同じレベルです。

 2.、3.、4. 番目の問題は、日本の危機を示す、緊急の課題ですが、切迫感がどこにもありません。「アメリカに守ってもらって、果たして独立国と言えるのか」と、疑問を呈していますが、「独立国と言えない」と、述べる勇気、と言うより、氏の思考には、最初から国際社会への認識が欠落しています。

 国際社会で孤立している日本を、生徒に説明せず、与えられた「悪法」を是認した上で、日本の防衛問題を考えるところが、そもそもの間違いなのに、読者が気づかないとでも思っているのでしょうか。

 PKFに参加できない自衛隊が、外国から非難され、国防に関する法律が不備だらけだと、そこまで生徒に検討させたのなら、教師として正論を言うべきでしょう。

 「自衛隊がおかしいのでなく、憲法がおかしいのです。」「今はいろいろな障害がありますが、皆が大人になる時までには、」「憲法を改正しましょう。」「これが、日本を再生する道です。」

 自分が教師だったとしたら、教室で、そのように言えるかと考えますと、ためらいはあります。しかし私なら、少なくとも、こんな虚しい著作を、得意げになって出版することはしません。

 ほんの一部の紹介しかできませんでしたが、次回は、書評の総まとめをし、終わろうと思います。私の偏見も混じると思いますので、興味のない方はスルーしてください。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

学校崩壊 - 7 ( 憲法9条の授業 )

2020-11-02 12:38:06 | 徒然の記

 氏はどんな気持ちで、この章を叙述しているのでしょう。保守と呼ばれ、国を愛する私のような人間が、失望と軽蔑の念で読むとは、考えてもいないようです。

 「ちなみにこの段階で、自分が何派か、手を挙げさせてみると、」「圧倒的に、『 2.の個人で抵抗する派 』が多かった。」「『 1.のあきらめ派 』は、二、三人、」「『 3.の信頼派 』も、同じくらいだった。」

 「授業の第三段階は、圧倒的多数だった、『 2.の個人で抵抗する派 』を、もう少し深く考えることにした。

 生徒たちの意見が、「前もって軍隊を持っておくこと」と、「国民が武装しておくこと」の、どちらかが必要ということに集約されていたため、この点をさらに検討することにしたと説明します。

 「先ず憲法のもとで、国民総武装が可能かということを検討したが、」「結局、現在の憲法では、無理だということになった。」

 氏が教師として、というより、それ以前に日本人として、いかに不適格な人間であるかが、この叙述で分かりました。他国が侵略してきた場合を、生徒に考えさせているというのなら、国の存亡が危機の時です。憲法解釈をしている余地などありません。こういう時に氏が教えるべきは、世界の他の国々の事例でしょう。

 過去のフランスやノルウェー、あるいは現在の世界でも、他国の侵略に対して、国民は武器を取って抵抗するのです。それを、彼らは「レジスタンス」と呼び、命を顧みず、一丸となって戦います。これが国を守るということであり、家族愛、同胞愛、愛国心であると教えるのが、本当の勉強でしょう。

 最悪の「日本国憲法」に疑問を抱かず、当然あるものと是認しているから、このような結論が導き出されます。占領軍が作った、翻訳文の憲法を、なぜ「不動のもの」として、固定化し安心しているのか、驚きでしかない氏の授業です。

 「残るのは、前もって軍隊を持っておくという方法である。」「日本は、この方法をとった。」「これが自衛隊であると説明し、次の段階に進んだ。」

 これでは、朝日新聞の「慰安婦捏造報道」を越える、ひどい説明です。「前もって軍隊を持つというのが、現在の自衛隊 ?」・・どこから、こんなバカな意見が出てくるのでしょう。21年前の出版当時、読者から、疑問や抗議の意見はなかったのでしょうか。

 政府は自衛隊を軍隊でないと、国民に説明するため、「戦車」を「特車」、「軍」を「隊」と言い換え、どれだけ四苦八苦したのか、氏自身が、正しく知らないのかもしれません。自衛隊について教えるのなら、警察予備隊、保安隊、自衛隊と、変化していった過去の事実を、きちんと勉強しておくべきです。作られたきっかけは、朝鮮戦争の勃発で、マッカーサーが指令を出した時からです。いったい、この事実のどこから、「前もって、日本が作った」という説明が出てくるのでしょう。

 次の文章は、何度読んでも、私には理解できない、杜撰な「ごまかし」です。

 「先ず自衛隊が生まれるまでの歴史を復習し、現在の自衛隊の戦力を、」「資料を使って教えた。」「そして、憲法9条と自衛隊の関係について、考えることにした。」「明らかに矛盾していることは、生徒たちのほとんどが理解しているから、」「矛盾をどうするかという、質問をした。」

 そして今回も、三つの答えが出ます。

 1. 自衛隊は憲法違反だから、自衛隊をなくす。

 2. 憲法を改正する。

 3. 解釈で切り抜ける。

 「 1. の意見は、『 1.のあきらめ派 』、『 3.の信頼派 』と同じなので除外し、」「 2. と3. を検討することとした。」「現実に、日本政府は、2. の立場をとらず、」「 3. の立場でこれまでやってきており、それは多数の国民に支持されているということである。」「つまり、生徒の多数派と、同じ選択をしたことになる。」

 なんという無難な、なんという無責任な結論へ、結びつけたと言えば良いのでしょうか。ここまで形式的な解釈で、国の重要問題を片付けるというのならば、私も形式面から反論したくなります。国民が、敗戦後変わらず支持している自民党について、氏はその党是を知らないのでしょうか。

 1. 自民党は、結党以来「憲法改正」を党是としている。

 2. 国民は、「憲法改正」を党是としている自民党を支持している。

 3. 自民党と、国民の多くは、「憲法改正」を望んでいるが、現実の困難さを理解し、「解釈変更」の小手先政策を、致し方なく是認している。

 改憲政党である自民党に、国民が安定多数を与え続けていた事実を、形式的に見れば、氏の説明より、私の解釈の方が妥当性があると思えてなりません。それでなければ、氏の著書出版後20年になろうとする時、「憲法改正」を旗印にした安倍内閣が、間違った政策を沢山したにもかかわらず、国民から、圧倒的支持を得た理由が説明できません。

 政府が憲法解釈で切り抜けたことを、国民の多数が支持したきたという説明は、とんでもない間違いです。というより、反日・朝日に劣らない、「手前勝手な」屁理屈で、生徒に教える事実ではありません。まさに機を見るに敏な、元東大生の模範解答で、こういう意見を言う限り、氏は反日・左翼マスコミから攻撃されず、左翼系学者からも野党からも、批判されません。当時は一大勢力だった。反日・左翼の日教組からも、睨まれない意見です。

 このまま続けたいのですが、スペースがなくなりましたので、残りは次回といたします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする