菱村幸彦氏著『学校は変われるか』( 平成8年刊 (株)教育開発研究所 ) を、読んでいます。なだ氏の著作を読んだ後は、どんな本を読んでも、まともに感じるのでしょうか。ほっとするものがあります。略歴が、裏扉に書いてありますので、転記します。
「昭和9年岐阜県生まれ、昭和34年、京都大学法学部卒業。」「文部省に入り、教科書検定課長、高等学校教育課長、企画連絡課長、」「初中局審議官、初等中等教育局長などを歴任。」「現在、国立教育研究所長。」
文部省一筋の、高級官僚です。なだ氏や私のような、外野席の人間でなく、教育行政を担ってきた当事者です。文科省のトップ官僚といえば、今の私の頭に浮かぶのは、反日・左翼の前川喜平氏くらいですから、氏がどのような考えをしているか、興味津々でした。
1 ページ目の「はじめに」では、予想に反し真面目な意見が述べられています。
「社会の変化に関して、よく『三化け』と言われることがある。」「内容は人により異なるが、一般的には、国際化、情報化、」「高齢化などを、指すことが多い。」「この伝で言うと、今教育は『五化け』の過程にあると、言えるのではないか。」
「スリム化、柔軟化、脱イデオロギー化、少子化、」「国際化、情報化である。」「激しく変動する社会の中で、今学校は、大きく変わろうとしている。」「一般社会における規制緩和や、地方分権の動きは、」「教育の柔軟化を、促している。」「さらに最近のいじめや、不登校の問題は、」「義務教育のあり方そのものに、柔軟な対応を、要請するだろう。」
さすが第一線にいた役人らしく、問題点を整理し、要領良く伝えてくれます。取り止めのない雑談でしかなかった、なだ氏の著作とは、レベルが違うようです。
「さらに、世界的なイデオロギーの崩壊は、政治における保革の対立を解消した。」「そうした政治状況の中で、戦後50年続いた、教育界のイデオロギー対立も、」「ようやく終焉しつつある。」「教育の脱イデオロギー化は、国旗、国歌などに見る、」「不毛な教育論争を、終わりにするに違いない。」
ずいぶん楽観的な予測ですが、教育界の脱イデオロギー化は今も進まず、返って巧妙になっています。イデオロギーを前面に出すことをやめた代わりに、「日本国憲法」を悪用し、反日・左翼学者とマスコミが、日本崩壊に日々いそしんでいます。
氏の楽観論の背景にあるのは、日本政治の大きな変革でした。今度は確認していますから、間違いありませんが、平成8年の出版なので、ソ連は既に崩壊しています。しかしそれ以上に、平成6年から、平成7年の8月まで続いた、村山内閣が、氏の著作に大きな影響を及ぼしているようです。自社さ連立政権の村山内閣は、私には日本の政治を歪めた、実りのない内閣ですが、菱村氏には、別の意味があったようです。
ネットで検索しますと、二つの事実が見つかりました。
1. 村山内閣による、社会党の路線変更
「 村山は、所信表明演説で自衛隊を認め、」「安保反対が党是である、社会党の党首として、」「党大会で安保を認めないなら、自分は総理をやめると言い、」「党是を捨てた。」
「なんでも反対」の社会党は、いざ政権の座につき、国際社会と対峙する段になりますと、非現実的な党是では、政治ができないことに気づきました。「安保反対」「自衛隊は違憲」など口に出せば、まずもって、同盟国のアメリカに相手にされません。
当時の日教組は、社会党と共産党が支持母体でしたから、社会党の党是が変わると、日教組の「闘争方針」も当然変わりました。
2 日教組の路線変更
「 平成6年には、日本社会党の路線変更に伴い、」「それまで社会党を支持していた、日本教職員組合も方針を変更し、」「文部省(現在の文部科学省)と、協調路線をとることに決定し、文部省と和解した。」
社会党の協調路線を拒否する共産党は、過激派教師をまとめて、全日本教職員組合協議会 ( 全日教 ) を結成し、以後日教組は二つの組織に分裂します。平成26年の文科省の調査によりますと、衰退していく、二つの組織の実態がよく分かります。
日教組 全日教
組合員数 25万3千人 2万人
組織率 24.7% 2%
話が横道にそれますが、現在の日教組が、どんな状況にあるのかをネットで検索してみました。分かりやすく、箇条書きにします。
1. 日教組は、日本の教員、学校職員による労働組合の連合体である。
2. 教職員組合としては、日本最大の組織である。
3. 日本労働組合連合会 ( 連合 ) 、公務公共サービス労働組合連合会 ( 公務労協 )、教育インターナショナル ( EI ) に加盟している。
4. かっては旧社会党と共産党、平成30年現在は、立憲民主党と社会民主党の支持団体の一つである。両党に、組織内候補を輩出している。
5. 南京大虐殺、従軍慰安婦等の特亜妄想を垂れ流し、すべてが嘘とばれた後は開き直る、人間の成り損ないの集合体である。
反日・左翼野党である、立憲民主党と社民党 ( 旧社会党 ) を、依然として支持している組織だと言うことを、確認しました。このネット情報を提供した人は、私と同様の「反日・左翼嫌い」らしく、最後の 5.の説明には、苦笑いたしました。
次回は日教組の協調路線について、菱村氏の意見を紹介しようと思います。鷲野一之氏の著書も、同じ時期に出版され、「協調路線」に関する意見を述べていました。いずれも、現在の私たちにとって、参考になる意見ですから、労を厭わず紹介いたします。息子たちと、「ねこ庭」を訪問される方々のお役に立てば良いと、願いを込めます。