田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鬼門/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-06 13:49:20 | Weblog
6

その強い麻のにおいを翔太は嗅いだ。

圧倒的な、いがらっぽい麻のにおいがする。

枯れ草が腐ったような臭気。

危険だ。Vがコウフンしている。

噛みつく気だ。Vが翔太の気配にふりかえった。

両眼が赤光を放っている。さきほどより、輝度が高い。

追いつめられていたセキュリティがよろけた。

一瞬Vの目の恐怖が、その威力が翔太にむけられたからだ。

立て。逃げろ。翔太は声なき声で命令した。

Vがちかよってくる。

Vの眼光の束縛から解き放たれた三人がよろよろとあるきだす。

それをヤクザのふたりがはばむ。

人間同士の戦いならセキュリティの側に分がある。

ほうっておいても結果はみえている。

Vが非常にゆったりとした動作で近寄ってくる。

翔太はプチプチシートをその進路になげた。

麻の実を播いた。なんの反応もない。

「おれにはそんなものはきかない」

Vがせせら笑っている。

翔太は紫外線銃を放射した。

「ムダダ。むだだ。むだだ」

びくともしない。

「おれはday walkerだ。昼でも歩けるのだ」

ヤクザを拘束したセキュリテがVにむかう。

かれらには、Vの真の姿が見えていない。

Vほんとうの怖さがわかっていない。

血のような赤い目も見えていないのかもしれない。

翔太はあせった。

全精力を掌に集めた。

両手をVに向け「闘」と気合とともに念波をたたきつけた。

Vが数メートルとばされた。

その先は屋上のガードレールの外。

Vは巨大な羽根をひろげて夜空を滑空していく。

「なんだあれは」

「ハングライダーでも隠しておいたのでしょう」

そんな説明では納得しなしいと思ったが。

「用意周到なヤツダ」

という、返事が戻ってきた。

見えないものには、なにも見えていないのだ。

このとき、翔太は街の上空が暗雲にとざされているのを見ていた。

夜の暗さではない。

翔太は闇に意識を集中した。

Vの飛びさったのは日光の方角だった。

北東の方角だ。

丑寅の方角だ。

すなわち、鬼門。

栃木県は北関東の北端。

宇都宮と神沼は。

東京から見れば鬼門にあたるところに位置している。

その線を長くのばせば日光につきあたる。

宇都宮にVが群れているのは……。




one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。