3
右手でナースコール。
左手でコウジの手をしっかりとにぎっていた。
いつもの病室とちがう。
なんの変哲もない病室。
冬の薔薇がかざってあり。
間接照明にてらされている。
影のない明るすぎる部屋。
でも理沙子が目にしているのは。
奇跡だ。
もう助からない。
植物人間のまま。
ずっと。ずっと。
このままbedで。
すごすことになる。
とおもっていたの。
それが。それが。
「どうしました。理沙子さん」
看護師の弓削さんがはしりこんできた。
「これは……奇跡だわ」
けっして理系のものがくちにしてはいけないことば。
理沙子も泣きながらもういちどおもった。
奇跡だわ。
神に祈ってよかった。
いや、栃木の岩船山は仏だ。
孫太郎尊はカルラに似た仏像だ。
(わたし毎日、いのった。
だれにもいわずに、祈った。
だれかにはなして――。
それをカッペナスひとがいると。
霊験あらたかな仏の、神の。
救いはやってこない。
カッペナスというのは栃木地方の方言だ。
『けなす』。
悪口をいう。
そしる。
の意味をつよめた方言だ。
母方のヒイオバアチャンにきいていたことが。
奇跡となってあらわれたのだ。
タキ、オバアチャンのいうとおりに。
祈った。
孫太郎さん。
タスケテください。
いまあなたに。
あなたの救いをねがっているのは。
栃木の但馬屋の。
タキのヒイ孫の川村理沙子です。
わたしはどうなってもいい。
どうか。
わたしの。
彼を。
たすけてください。
高見広治を。
たすけてください)
そう。
祈り。
つづけてきた。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓

ああ、快感。
右手でナースコール。
左手でコウジの手をしっかりとにぎっていた。
いつもの病室とちがう。
なんの変哲もない病室。
冬の薔薇がかざってあり。
間接照明にてらされている。
影のない明るすぎる部屋。
でも理沙子が目にしているのは。
奇跡だ。
もう助からない。
植物人間のまま。
ずっと。ずっと。
このままbedで。
すごすことになる。
とおもっていたの。
それが。それが。
「どうしました。理沙子さん」
看護師の弓削さんがはしりこんできた。
「これは……奇跡だわ」
けっして理系のものがくちにしてはいけないことば。
理沙子も泣きながらもういちどおもった。
奇跡だわ。
神に祈ってよかった。
いや、栃木の岩船山は仏だ。
孫太郎尊はカルラに似た仏像だ。
(わたし毎日、いのった。
だれにもいわずに、祈った。
だれかにはなして――。
それをカッペナスひとがいると。
霊験あらたかな仏の、神の。
救いはやってこない。
カッペナスというのは栃木地方の方言だ。
『けなす』。
悪口をいう。
そしる。
の意味をつよめた方言だ。
母方のヒイオバアチャンにきいていたことが。
奇跡となってあらわれたのだ。
タキ、オバアチャンのいうとおりに。
祈った。
孫太郎さん。
タスケテください。
いまあなたに。
あなたの救いをねがっているのは。
栃木の但馬屋の。
タキのヒイ孫の川村理沙子です。
わたしはどうなってもいい。
どうか。
わたしの。
彼を。
たすけてください。
高見広治を。
たすけてください)
そう。
祈り。
つづけてきた。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓

ああ、快感。