田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

孫太郎尊/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-02-11 08:18:50 | Weblog
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右手でナースコール。

左手でコウジの手をしっかりとにぎっていた。

いつもの病室とちがう。

なんの変哲もない病室。

冬の薔薇がかざってあり。

間接照明にてらされている。

影のない明るすぎる部屋。

でも理沙子が目にしているのは。

奇跡だ。

もう助からない。

植物人間のまま。

ずっと。ずっと。

このままbedで。

すごすことになる。

とおもっていたの。

それが。それが。

「どうしました。理沙子さん」

看護師の弓削さんがはしりこんできた。

「これは……奇跡だわ」

けっして理系のものがくちにしてはいけないことば。

理沙子も泣きながらもういちどおもった。

奇跡だわ。

神に祈ってよかった。

いや、栃木の岩船山は仏だ。

孫太郎尊はカルラに似た仏像だ。

(わたし毎日、いのった。

だれにもいわずに、祈った。

だれかにはなして――。

それをカッペナスひとがいると。

霊験あらたかな仏の、神の。

救いはやってこない。

カッペナスというのは栃木地方の方言だ。

『けなす』。

悪口をいう。

そしる。

の意味をつよめた方言だ。

母方のヒイオバアチャンにきいていたことが。

奇跡となってあらわれたのだ。

タキ、オバアチャンのいうとおりに。

祈った。

孫太郎さん。

タスケテください。

いまあなたに。

あなたの救いをねがっているのは。

栃木の但馬屋の。

タキのヒイ孫の川村理沙子です。

わたしはどうなってもいい。

どうか。

わたしの。

彼を。

たすけてください。

高見広治を。

たすけてください)

そう。

祈り。

つづけてきた。 




one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。