田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

経年劣化?/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-08 22:53:14 | Weblog
「恨む。恨んで、祟るぞ」

鬼の恨みのことばが勝道十哲の面々のみみにのこった。

まだまだ二荒の地には滝がたくさんある。

その滝の奥地に鬼の部族を封じ込めていく。

勝道の戦いはじまったばかりだった。


「蝦夷を撃つには下毛の地域からと覚悟していたが。

勝道殿が二荒山までは平定してくれたので助かり申した」

勝道の鬼封じの偉業は六十二歳になって報われた。

征夷大将軍。

坂の上田村麻呂と会見したおりに感謝されることになる鬼封じだ。

蝦夷の民の中にさらに怪しい部族が混じっていた。

鬼族だ。

人の肉をこのんでくらっていた。

それらのヤカラを仏の敵として勝道は退治をした。

「次はマツクラノ滝だ」

滝壺に追い落とされた鬼が吠えた。

「どうしておれたちにかかわる。

おれたちこそここの先住民族なのだ」

鬼は必死の形相でいどんできた。

勝道の弟子。

道珍が錫杖を鬼の胸につきたてた。

錫杖の頭で鐶がジャランとなった。

鬼の怨嗟の声が滝音にひびいた。


「そんなとこかもしれないな」

織部がくりかえした。

勝道上人の封印が経年劣化した。

勝道上人の結界が経年劣化した。


鬼が封印を解いた。

鬼が結界からでた。

そんなところだ。




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ああ、快感。



勝道上人/夕日の中の理沙子(2) 麻屋与志夫

2009-02-08 08:24:48 | Weblog
「そんなとこかもしれないな」

と受け入れてくれた。

そんなところ。

といわずに「そんなとこ」という方言のアクセントがうれしかった。

織部は覚醒連の所長より、恩師の顔になっていた。

勝道上人もこの下野は真岡の生まれだ。

この土地の訛りで説教をした。

弟子たちとも対話をはずませた。

この下野の薬師寺で僧侶の資格をゲットした。

難しくいえば、得度受戒という。

当時、僧侶試験はこの国では三か所しか会場はない。

奈良の東大寺。福岡の観世音寺。下野、栃木県の薬師寺。

下野の土地は文化レベルがたかかったのだ。

「日光が関東八州の鬼門にあたるのは事実だからな。

鬼門除けのお札を売っているくらいだ。

お札の裏には角大師の護符がついてる」

「それはしりませんでした」

勝道上人が男体山を開山するのに十五年の歳月を要した。

この時期、上人は土地の悪霊とたたかっていた。

征服したあとに寺を建立している。

悪霊を封印してこの下野の土地を巡回していたのだと翔太は理解している。

悪霊は鬼。

角のあるもの。

Vだったともいえる。


瀧尾古道の果て、白糸の滝壺まで鬼を追いつめた。

「この二荒の地に鬼がいるかぎり。

人の肉を食らうものがいたのでは。

真の意味でここが観音浄土。

補陀洛(ふだらく)の地とはいえない。

鬼よ地底に去れ」

滝の奥に鬼を押しこめた。

そしていつものように封印した。





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