1月6日 水曜日
●夢をみた。
おおきなロープ工場の中を逃走していた。
機械がオイルやグリスで黒々と不気味な光をはなっていた。
追いかけてくるのは吸血鬼だった。
助けをもとめても職工はふりかえりもしない。
完全に無視されている。
いや、わたしのことが見えないのだ。
●わたしは天井にとびあがった。
梁にとびついた。
はるか下を吸血鬼が蠢いている。
吸血鬼には機械を操作している男は見えていないらしい。
あるいは関心がないのか。
●このままでは発見される。
わたしは目もくらむような高さを梁を伝った移動を開始した。
吸血鬼がわたしのあげた幽かな音をききつける。
兇暴な鈎爪がぐっと迫ってくる。
なぜか爪だけが迫ってくる。
わたし天窓から屋根にでた。
●山の尾根を歩いて逃げている。
工場の屋根がふいに山の尾根にかわっていた。
「どこに逃げても、むだだ、ムダダ」
という吸血鬼の声が天空からおちてくる。
そして巨大なコウモリに成った吸血鬼が襲ってくる。
開いた口からのぞいているのは頑丈な乱杭歯だ。
鉄格子みたいだ。
現にだれか囚われている。
鉄格子に両手をかけて揺すっている。
「ここからだしてくれ。たすけてくれぇ」
顔が見えているのに、見知らぬ顔だ。
声には聞きおぼえがある。
でも名前が思い出せない。
●陽炎のように男の影が揺らめきながら消えていく。
吸血鬼に血をすわれて、とうの昔に死んでいる男らしい。
『君の名は』
なんて、わたしはよびかけている。
むろん、応えがもどってくるわけはない。
●恫喝するように吸血鬼が吠えた。
ふいにわたしは悟った。
あの吸血鬼の口の中の男はわたしだ。
わたしは死んでいる。
死んでいるのだ。
まぎれもなくあれはわたしだ。
●川の狭い土手を幼児が走っている。
それをわたしが追いかけている。
まだ生きているのか???
幼児が川におちそうだ。
滑落する。
それが予感されている。
なんとか助けようと幼児と伴走しているのだが。
手をのばしてもなかなかとどかない。
●幼児をかかえて川を流れている。
狭い川だ。
岸には苔や水草が生えている。
ぬるぬるしてとりつくことができない。
●これは産道だ。
わたしたちは、母の胎内から生まれでようとしているのだ。
●わたしは幼児を固く抱きしめた。
ニャと幼児が泣いた。
わたしは猫のブラッキをきつくだきしめていた。
寝床で寝ていた。
でも必死になって幼児を抱きしめている感覚は両手にのこっていた。
いつまでも消えなかった。
●夢をみた。
おおきなロープ工場の中を逃走していた。
機械がオイルやグリスで黒々と不気味な光をはなっていた。
追いかけてくるのは吸血鬼だった。
助けをもとめても職工はふりかえりもしない。
完全に無視されている。
いや、わたしのことが見えないのだ。
●わたしは天井にとびあがった。
梁にとびついた。
はるか下を吸血鬼が蠢いている。
吸血鬼には機械を操作している男は見えていないらしい。
あるいは関心がないのか。
●このままでは発見される。
わたしは目もくらむような高さを梁を伝った移動を開始した。
吸血鬼がわたしのあげた幽かな音をききつける。
兇暴な鈎爪がぐっと迫ってくる。
なぜか爪だけが迫ってくる。
わたし天窓から屋根にでた。
●山の尾根を歩いて逃げている。
工場の屋根がふいに山の尾根にかわっていた。
「どこに逃げても、むだだ、ムダダ」
という吸血鬼の声が天空からおちてくる。
そして巨大なコウモリに成った吸血鬼が襲ってくる。
開いた口からのぞいているのは頑丈な乱杭歯だ。
鉄格子みたいだ。
現にだれか囚われている。
鉄格子に両手をかけて揺すっている。
「ここからだしてくれ。たすけてくれぇ」
顔が見えているのに、見知らぬ顔だ。
声には聞きおぼえがある。
でも名前が思い出せない。
●陽炎のように男の影が揺らめきながら消えていく。
吸血鬼に血をすわれて、とうの昔に死んでいる男らしい。
『君の名は』
なんて、わたしはよびかけている。
むろん、応えがもどってくるわけはない。
●恫喝するように吸血鬼が吠えた。
ふいにわたしは悟った。
あの吸血鬼の口の中の男はわたしだ。
わたしは死んでいる。
死んでいるのだ。
まぎれもなくあれはわたしだ。
●川の狭い土手を幼児が走っている。
それをわたしが追いかけている。
まだ生きているのか???
幼児が川におちそうだ。
滑落する。
それが予感されている。
なんとか助けようと幼児と伴走しているのだが。
手をのばしてもなかなかとどかない。
●幼児をかかえて川を流れている。
狭い川だ。
岸には苔や水草が生えている。
ぬるぬるしてとりつくことができない。
●これは産道だ。
わたしたちは、母の胎内から生まれでようとしているのだ。
●わたしは幼児を固く抱きしめた。
ニャと幼児が泣いた。
わたしは猫のブラッキをきつくだきしめていた。
寝床で寝ていた。
でも必死になって幼児を抱きしめている感覚は両手にのこっていた。
いつまでも消えなかった。