田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

トワイライト/インクの匂い 麻屋与志夫

2010-01-16 09:35:45 | Weblog
part1 トワイライト/インクの匂い 栃木芙蓉高校文芸部

13

文子のことばと同時に、世界は沈黙が支配した。
五人は動きをとめた。
まだ、焼きそばを食べていた丸く太った繭などは、
ソバが二三本口からたれている。
それでも、声が出たのは繭がはやかった。
「あそこ。あそこ、だれも住んでいない荒れ屋敷よ」
一息にいってしまってから。
皿までたれていたソバを。
ズルッとのみこんだ。
「はいどうぞ」
こんどはソバをのどにつまらせて目を白黒させる。
由果のさしだしたお冷をのんでやっとおちついた。
「わあ、それ机センパイのお冷よ。
間接キスだ。
キスしちゃったよ――繭ちゃん。
机センパイとキスした……」
いわれた繭はほほを真っ赤に染めた。
 
14

紫色の雲を朱色に染めていた夕映えが消えた。
おぼろ月が荒れ果てた庭を照らしていた。
黒く古民家がある。
地元では大平のお化け屋敷としてしられている。
祖父と龍之介の仮住まいだ。
妖しい殺気がふきよせてきた。
龍之介は太陽神、摩利支天の穏形にはいる。
『大般若経』をこころで唱えながら芝門をくぐった。


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one bite please 一噛みして。おねがい。

トワイライト/インクの匂い  麻屋与志夫

2010-01-16 00:33:43 | Weblog
part1 トワイライト/インクの匂い 栃木芙蓉高校文芸部

12

「この焼きそばおいしかった」
「文子にキニイッテもらえてれしいわ。
ご当地グルメ、
B級グルメ焼きそば部門ナンバーワンの。
栃木のジャガイモ焼きそばなんだから」
「こんなにおいしい焼きそばを食べたのはじめて」
「うわぁ。うれしいな」
由果と繭が知美の言葉に同調する。
栃木名物をほめてもらえて、ウレシイ、っという顔をしてたいる。
満面二人とも笑みをうかべて文子をみつめている。綺麗なひと。
奥本はそれどころではない。
被写体が映らないのは――。
№1カメラのせい。
№2腕が鈍った。ぼくが悪い。
№3あそこにはだれもいなかった。
そんなことはない。
番長も下野高校の影番と戦ったといっている。
転校生の机君だってなにかカマエテいた。
敵の腕をナイダようにみえた。
ぼくの目はだませないぞ。
そうだ……だからあそこにいたのは《vampire》
バンパイア。
という叫びに――。
「ラーメンブームの次は焼きそばブームがくるのよ」
といっていた知美が箸をとりおとした。
「スミマセン。ぼく机のあとを追います」
「バカね。どこに住んでるのかしってるの」
「知美さんは、しってるの」
「しってるわけないし」
「だれかっていっても、
だめだよね。
同じクラスのぼくらがまだきいていないんだから」
「あらそんなことないわよ。
わたししっている。
職員室でおたがいに自己紹介したときにきいた。
大平神社の鳥居の手前のお化け屋敷。
だ、そうですよ」

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