part1 トワイライト/インクの匂い 栃木芙蓉高校文芸部
13
文子のことばと同時に、世界は沈黙が支配した。
五人は動きをとめた。
まだ、焼きそばを食べていた丸く太った繭などは、
ソバが二三本口からたれている。
それでも、声が出たのは繭がはやかった。
「あそこ。あそこ、だれも住んでいない荒れ屋敷よ」
一息にいってしまってから。
皿までたれていたソバを。
ズルッとのみこんだ。
「はいどうぞ」
こんどはソバをのどにつまらせて目を白黒させる。
由果のさしだしたお冷をのんでやっとおちついた。
「わあ、それ机センパイのお冷よ。
間接キスだ。
キスしちゃったよ――繭ちゃん。
机センパイとキスした……」
いわれた繭はほほを真っ赤に染めた。
14
紫色の雲を朱色に染めていた夕映えが消えた。
おぼろ月が荒れ果てた庭を照らしていた。
黒く古民家がある。
地元では大平のお化け屋敷としてしられている。
祖父と龍之介の仮住まいだ。
妖しい殺気がふきよせてきた。
龍之介は太陽神、摩利支天の穏形にはいる。
『大般若経』をこころで唱えながら芝門をくぐった。
one bite please 一噛みして。おねがい。
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文子のことばと同時に、世界は沈黙が支配した。
五人は動きをとめた。
まだ、焼きそばを食べていた丸く太った繭などは、
ソバが二三本口からたれている。
それでも、声が出たのは繭がはやかった。
「あそこ。あそこ、だれも住んでいない荒れ屋敷よ」
一息にいってしまってから。
皿までたれていたソバを。
ズルッとのみこんだ。
「はいどうぞ」
こんどはソバをのどにつまらせて目を白黒させる。
由果のさしだしたお冷をのんでやっとおちついた。
「わあ、それ机センパイのお冷よ。
間接キスだ。
キスしちゃったよ――繭ちゃん。
机センパイとキスした……」
いわれた繭はほほを真っ赤に染めた。
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紫色の雲を朱色に染めていた夕映えが消えた。
おぼろ月が荒れ果てた庭を照らしていた。
黒く古民家がある。
地元では大平のお化け屋敷としてしられている。
祖父と龍之介の仮住まいだ。
妖しい殺気がふきよせてきた。
龍之介は太陽神、摩利支天の穏形にはいる。
『大般若経』をこころで唱えながら芝門をくぐった。
one bite please 一噛みして。おねがい。