田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

栃木芙蓉高校文芸部  麻屋与志夫

2010-01-14 08:53:09 | Weblog
part1トワイライト/インクの匂い

7

ストロボの閃光には弱い。
下野高校のツッパリは、乱杭歯のあいだからシュと威嚇している。
金髪。
茶髪。
スキンヘッド。
そして最も古典的な刈り上げ頭にそりを入れたヤツ。
ツッパリスタイルのオンパレードだ。
だが襲ってこない。
光に目が眩んでいる。
このすきに逃げなければ。
奥本にもみえていない。
なんのために日夜、ゲームに励んでいるんだ。
ゲームの世界のvirtual realityを信じているのなら。
仮想現実の世界だけではない。
現実にも異界がダブっている。
人外魔境がその領域を広げていることをはやく認めてくれ。
龍之介はこころのなかでそうつぶやいている。
ヤッラの存在を信じれば、みえてくるはずだ。
信じようとしないから、みえないのだ。
ヤッラがいると信じればこの世の残酷な事件の裏にあるモノがみえてくる。

8

「あれっ。なにも映っていない」
三人は栃木名物ジャガイモ焼きそばがウリの店「巴波(うずま)」に入った。
奥本がトンキョウなこえをあげた。
「なんだよ、あいつらいつからオカマチャン趣味になったんだ。ネイルサロンにかようなんてゆるせない」
「そんなシャレタ店は栃木にはありませんよ、番長。あいつら宇都宮に行ってますよ」
「だれがネイルサロンに出入りしてるの? 番長、こっちの席にどうぞ」
奥まった仕切りの影から顔だけがのぞいた。
知美だった。
転校生の文子もいた。そのほか二人。
「ねえ、文芸部はこれで安泰よ。四人になったのよ。番長、こちらも転校生。山田文子さん」
 

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