田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

パパラッチを探せ  麻屋与志夫

2010-01-21 07:36:17 | Weblog
part2 パパラッチを探せ  栃木芙蓉高校文芸部(小説)

6

「逃げようとするなよ」
龍之介は吉沢の耳もとでいった。
「それは、こっちのセリフだ」
下館が獲物をイタぶるようにいった。
耳ざとい奴だ。

それとも唇を読むことができるのか。
だいたい、いまどきのヤクザで。
大菩薩峠の知識があるなんて。
ただものではない。

おいおい、そんなに落ちついていていいのかよ。
ヤバイことになっているのだ。
下館が吉沢を傷つけても……と……triggerをひいたらどうする。

みればその人差し指が光っている。

あのときとおなじだ。
たまたま植木が薄暮(とわいらいと)の広場で乱闘していた。
スケットとした。
あのときの。
相手とおなじだ。

閉店した空間だ。
なにを商っていた店なのか。
プラスチック製の安物の棚がいくつか置きざりにされている。
明かりはついていない。
それこそ、薄暮のようだ。
奥にはドアがある。
ロックされている。
逃げるなら、入ってきたシャッターの潜り扉しかない。
「おおかたの見当はついている。
机くんは奥本くんを探しにきた。
そうだろうが」
「あなたたちでしたか。
探す手間がはぶけました」
「そんな態度でいいのかな。
いつでも吉沢もろさも撃つことはできるのだからな」
「下館さん、かんべんしてクレッけ。
許してくれてもよかっぺな」
吉沢が真っ青になった。
ガクガク。
ふるえている。



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