part1 トワイライト/インクの匂い 栃木芙蓉高校文芸部
10
携帯がチャクメロを奏でた。
「ジイチャン……? 玉川堂で墨かったから。それに大文字の般若心経のお手本サービスだって」
墨があれほど高価なものとは……とおもいだしていると、低めた声がつたわってきた。
「龍、お吸(おきゅう)さんのおでましらしい。外でハンターがほえている」
文子が枕草子を暗唱しているのを後に、龍之介は巴波をとびだした。走れば10分とはかからない。
11
「机くん、どうしたのかしら」
暗唱をやめて文子が龍之介を目で追いかけた。
「文子センパイは机さんに気があるんですか」
それまで会話に参加できないでいた二人が同時に同じことをいった。
「由果と繭そんなこときくなよ。まあ、あれだけのイケメンだからな」
それもしかたないだろう。というような顔を植木がした。
「わたしは、鷹ちゃんみたいに、ゴツゴツした風貌がたのもしいわ」
「バァーカ。知美にほめられたってうれしくないし」
「どうして映らなかったのかな」
奥本がまた首をかしげた。たしかに人影があった。それがまったくなにも映っていない。
「植木さんもみましたよね」
「みただけではない。ゴロまいていたんだ。下野のヤッラいつからあんなにつよくなったのだ。机がこなければおれひとりではヤバかった」
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携帯がチャクメロを奏でた。
「ジイチャン……? 玉川堂で墨かったから。それに大文字の般若心経のお手本サービスだって」
墨があれほど高価なものとは……とおもいだしていると、低めた声がつたわってきた。
「龍、お吸(おきゅう)さんのおでましらしい。外でハンターがほえている」
文子が枕草子を暗唱しているのを後に、龍之介は巴波をとびだした。走れば10分とはかからない。
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「机くん、どうしたのかしら」
暗唱をやめて文子が龍之介を目で追いかけた。
「文子センパイは机さんに気があるんですか」
それまで会話に参加できないでいた二人が同時に同じことをいった。
「由果と繭そんなこときくなよ。まあ、あれだけのイケメンだからな」
それもしかたないだろう。というような顔を植木がした。
「わたしは、鷹ちゃんみたいに、ゴツゴツした風貌がたのもしいわ」
「バァーカ。知美にほめられたってうれしくないし」
「どうして映らなかったのかな」
奥本がまた首をかしげた。たしかに人影があった。それがまったくなにも映っていない。
「植木さんもみましたよね」
「みただけではない。ゴロまいていたんだ。下野のヤッラいつからあんなにつよくなったのだ。机がこなければおれひとりではヤバかった」