田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

新連載 栃木芙蓉高校文芸部  麻屋与志夫

2010-01-11 07:31:37 | Weblog
part1 トワイライト/インクの匂い

2

「ねえ、机君は、どこから転校してきたの」
「学校だったら早稲田実業。住んでいた場所だったら西早稲田の鶴巻町」
「わぁ、ハンカチ王子の出た高校だ。彼って早稲田のキャプテンになったのよね」
「サインもらって」
「サインほしい」
昼休みになっていた。
机は女生徒に取囲まれていた。
龍之介はさして迷惑にはかんじていない。
いやむしろ、女生徒の質問にていねいに応えとている。
質問が一巡するとすっくとたちあがった。
「どこへいくの」
「校内の様子わかるの?」
「案内してあげようか」
ひとりで行かしてなるものか。
という雰囲気で女生徒が声をとばす。
「nature call me.」というのが机の返事。
「案内するよ」
それまで、質問は女生徒にまかせておいた。
しびれをきらしていた新聞部の奥本が後を追った。

「あれってどういう意味なの」
「雉撃ちにいくって意味」
「それって、どういう意味」
奥本の後ろでそんな会話がかわされていた。

3

「校内を案内するよ。そのまえに一枚。いいかな。転校生の紹介を学校新聞『うずま』に載せたいから」
机はVサインで応えた。
あんがい、ノリヤスイのかもしれない。
龍之介の変わり身の早い反応にダット一歩前に奥本はコケタ。
二人がいるのは渡り廊下だ。
そのさきには受験シーズンでケバダッテいる三年生の教室がある。
奥本は避けてとおるつもりだった。
「ヤバイよ」
廊下を音を立てて近づいてくる集団がある。
「いちばん会いたかないセンパイ。番長の植木さん」
小声でいう。
引き返すとなにかいわれそうだ。
コワモテ。
身長180。体重は90くらいありそうだ。
今年の干支の寅に似ている。
それもまさに猛虎だ。
「おう、新聞部。そちらさんはみなれぬ顔だな」
「あっ、こちらは転校生の――」
「学生仁義を切らせてもらいます。わたし生国は東京です。名だけ綺麗な墨田川で湯あみしてノガミ生まれの野上育ち机龍之介です。ハンカチ王子でしられた早稲田実業から転校してきました。よろしくおねがいします」
奥本はこんどは唖然として口をあいたままだ。
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