田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

新連載 栃木芙蓉高校文芸部 麻屋与志夫

2010-01-10 22:25:57 | Weblog
   栃木芙蓉高校文芸部 Part 1 トワイライト/インクの匂い

1

その朝、私立栃木芙蓉高校二年B組は二人の転校生を迎えた。
「山田文子さん。名前に文の字が入っているくらいだから、もしかしたら……とおもって期待したのだが、そのとおりだった。文学少女だった。文芸部に入部してくれることになった」
担任の国語教師大野隆一先生が満面笑みを浮かべている。
文芸部は廃部寸前。
だいたい文学少女なんて絶滅危惧種だ。
文芸部の部長のわたしがいうのだからまちがいない。
それにしても美少女だぁ。
ビジァル系の子は文才のほうはどうなのかしら。
一番後ろの席から石原知美は手をあげた。
「歓迎するわ」先生ににらまれた。
そうだ、男子生徒の紹介がまだ済んでいなかった。
といった表情に先生はなった。
「机龍之介くん。中里介山の『大菩薩峠』の主人公とまったく同じ名前だ。龍之介も名前どおり剣道部に入部希望なのだが、この高校には無い。まだどこの部にはいるかはきめてないらしい」
教室の中がざわめいた。
とくに女子生徒がポウット頬をそめている。
これまた美形。先月終わったばかりの、フジテレビで放映された『東京DOGS』の小栗旬に似ている。

龍之介は闇のかすかなざわめきを体感していた。
教室の中には闇の波動をだしているそれらしい生徒はいない。
黒く泡立つ悪意の波は外からうちよせているのか? わからない。
龍之介の目線のさきには太平山があった。
あの麓の富田。
上田秋成の『青頭巾』で知られている。
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初笑い 麻屋与志夫

2010-01-10 17:42:42 | Weblog
1月10日 日曜日

●今回はカミサン同伴で例弊使街道への旅にでた。

いや長い散歩というべきだろう。

●「この道、日光へ行くのに通らないよね」

えっ、とわたしはカメラを手にした彼女をみた。

しげしげと、はじめての人をみる眼差しになっている。

「どうして」

彼女はすましている。

周りの風景にこころをうばわれている。

「ここは……日光街道なんだけど」

「えっ、じゃここは日光に行く道なの」

とカミサンすましたものだ。

すこしたって、そのまちがいの滑稽さに彼女も笑いだしていた。

二人の笑い声が寒空にこだました。

正月いらいの鬱がふきとんだ。

             
       

       

       

                      pictured by 「猫と亭主とわたし



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