田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

栃木芙蓉高校文芸部 麻屋与志夫

2010-01-12 19:27:21 | Weblog
part 1 トワイライト/インクの匂い

4

 校門をでたところで携帯がなった。
「リュウ。帰りに玉川堂で墨を買ってきてくれ。手本もな。電話しといたから品物をうけとってくればいい」
「翔太ジイチャン。昼は食べましたか」
「ああ、食った、食った。たらふく食べたぞ」
 祖父の机翔太が栃木のはずれ太平山の麓の雑木林に隠居した。
 祖父の身の回りの世話をかねて龍之介が転校してきた。
 八人いる孫で祖父と栃木の田舎に転居してもいいとおもったのは龍之介だけだっ
た。
 玉川堂で品物をうけとり、大通りにもどろうとして、龍之介は殺気を感じた。
 背筋がゾクッとした。
 おくれて怒号がとんできた。
 見おぼえのある植木が囲まれている。
 すでになんどか拳を交わしている。
 そんな雰囲気だ。
 手本と墨をカバンにいれる。
 薄暗い路地にどす黒い殺気が渦を巻いていた。
「これは」と龍之介は呟いていた。
 植木のあいては中肉中背、さして強そうな相手ではなかった。
 やはり高校生なのだろう。
 いまどき東京ではめったにみられない膝まであるチョウランを着ている。
 だが龍之介にはその男の影が二重にぶれてみえている。
「吸血鬼?」

5

植木にはみえていない。
 能力のあるものにしかみえない。その男の正体。
「おう、転校生。いまみていろ。この下野高校の影番、鬼村をぶちのめしてやる」
 鬼村の影の部分が大きく広がっていく。鬼村の本来の姿がのみこまれていく。植木にはみえていないのか?

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