7
夜更けて雨になった。
霧雨だった。
雨のにおいをさせてGGが大森の道場にもどってきた。
「初動調査というものをはじめて体験させてもらった。おれのほうは連絡が遅すぎたとしかられた」
「あれだけ人がいたのよ。……シカタナイシ」
まだ起きていた翔子がGGをなぐさめるようにいった。
話しかけられたミイマはだまってうなずいている。
なにか考えている。
「日名子さんは、あの爆弾騒ぎのまえまでは、お母さんのそばにいたのね」
「そうだ」
「あの……会場から拉致されたってこともある…? と、思わない」
「それはないだろう。あれだけ厳重にホテル側のセキュリティも警備していたのだ」
「都(みやこ)夫人もウカツよね。いつから日名子さんがいなくなったか、わからないなんて……」
「バラに夢中になっていた……と、いうことらしい」
「街にでてから、地下鉄の六本木駅に向かう途中で」
「タクシーにのってココに向かったってこともある」
「タクシーを降りてから……ココの近所で? それはないでしょう」
GGとミイマの推理はまとまらない。
はめ込みの大きなガラス窓越しに翔子は眺めていた。
ライトを暗くした道場では玲加と百子が稽古にはげんでいた。
特殊ウレタン製の模擬刀が美しい弧を描いている。
百子も玲加もフツウの少女ではない。
かたやクノイチ。玲加は本格的には剣道とは無縁なのだろうが。
マインドバンパイァとしての天性の体技がある。
中空にながくとどまって蛍光の光をはなっているのは玲加の刀だろう。
薄暗がりで光りの弧を描く刀の動きは幻想的だ。
ホタルの光のように残像が尾をひいている。
翔子には判定できない。
百子と玲加の剣の技。
どちらが強いのかしら……。
百子の配下のクノイチは夜の街に散っていった。
もちろん、日名子の消息を探るためだ。
刀の光がとまった。
百子が携帯を耳にあてたまま部屋に飛びこんできた。
「渋谷ね。道玄坂の入り口ね。わかった、みんなにも連絡して」
「おききのとおりよ。日名子さんらしい、パーテイドレスの子が彼氏とライオンのほうにあるいていったのが目撃されている」
「なんだ。名曲喫茶の『ライオン』がまだあったのか」
「でかけるわよ」
「純。純」
翔子が隣の部屋でうたた寝をしていた純によびかける。
六人はおっとり刀で秋雨の夜の街に走り出た。
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「あれだけ人がいたのよ。……シカタナイシ」
まだ起きていた翔子がGGをなぐさめるようにいった。
話しかけられたミイマはだまってうなずいている。
なにか考えている。
「日名子さんは、あの爆弾騒ぎのまえまでは、お母さんのそばにいたのね」
「そうだ」
「あの……会場から拉致されたってこともある…? と、思わない」
「それはないだろう。あれだけ厳重にホテル側のセキュリティも警備していたのだ」
「都(みやこ)夫人もウカツよね。いつから日名子さんがいなくなったか、わからないなんて……」
「バラに夢中になっていた……と、いうことらしい」
「街にでてから、地下鉄の六本木駅に向かう途中で」
「タクシーにのってココに向かったってこともある」
「タクシーを降りてから……ココの近所で? それはないでしょう」
GGとミイマの推理はまとまらない。
はめ込みの大きなガラス窓越しに翔子は眺めていた。
ライトを暗くした道場では玲加と百子が稽古にはげんでいた。
特殊ウレタン製の模擬刀が美しい弧を描いている。
百子も玲加もフツウの少女ではない。
かたやクノイチ。玲加は本格的には剣道とは無縁なのだろうが。
マインドバンパイァとしての天性の体技がある。
中空にながくとどまって蛍光の光をはなっているのは玲加の刀だろう。
薄暗がりで光りの弧を描く刀の動きは幻想的だ。
ホタルの光のように残像が尾をひいている。
翔子には判定できない。
百子と玲加の剣の技。
どちらが強いのかしら……。
百子の配下のクノイチは夜の街に散っていった。
もちろん、日名子の消息を探るためだ。
刀の光がとまった。
百子が携帯を耳にあてたまま部屋に飛びこんできた。
「渋谷ね。道玄坂の入り口ね。わかった、みんなにも連絡して」
「おききのとおりよ。日名子さんらしい、パーテイドレスの子が彼氏とライオンのほうにあるいていったのが目撃されている」
「なんだ。名曲喫茶の『ライオン』がまだあったのか」
「でかけるわよ」
「純。純」
翔子が隣の部屋でうたた寝をしていた純によびかける。
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