田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

蝙蝠、こうもり、コウモリだ!!!/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-10-29 04:39:45 | Weblog
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「品川の街を映してみて」
「どうなってるんだ。これは?」
 いつもの夜とかわりない。
 改札をでてすぐの広いコンコースが映っている。
 帰宅ラッシュでこみあっている。
「街よ。街は」
 とミイマがまた催促した。
 街もかわりない。
 いつものあわただしい宵の街がモニターには映し出されている。
「どうかしたの? ミイマ」
 キーボードを操作していた玲加がふりかえる。
「ミイマ。ミイマ。どうしたの」
 こんどは、携帯の中で翔子の声がする。
 余にとりみだした。翔子に携帯したのを忘れていた。
「ああ、翔子。品川にいるの。なにも変わりない」
「わたしは新宿。純も一緒よ。日名子の行くえ追っているのよ。病院をぬけだしたきりなの」
 そのことはミイマも連絡をうけていた。
 純が街にさまよい出たのに前後してまた日名子は行方不明になっている。
 純が一時は疑われた。もう一週間にもなる。
「あの部屋ね。風俗店になってるの。わたしたちではどうしょうもない。調べようがないの。それで紅子のとこの芝原さんにたのんだの。芝山さんとふたりで入店したとこなのよ」
「品川がおかしいのよ」
 ミイマはいま屋上でみてきたことを知らせる。
「まって。父から連絡がきた」
 ミイマは携帯を耳にあてたままで玲加にいった。
「百子ちゃんたちに、ここに集合するように緊急れんらくして」
「ああ、ミイマ。こちらはいいから……大森にいけって父にいわれた。バイクで向かってる」
 ペンタゴンの日本支部は襲われているのかもしれない。
 支部は品川のMビルの最上階にある。
 街のようすには変化がない。
 そう思いながらミイマは一枚ガラスの壁。
 品川に面したプラスチックのブラインドからのぞいた。
 ぎょっとした。
 ガラス窓にネズミの顔がおしつけられていた。
 いや、ネズミではないコウモリだ。
「なんだ。これは!! ……どうなってるんだ」
 ガラスは厚く、気密性がある。鳴き声はきこえない。
 一匹ではなかった。びっしりとガラス壁にへばりついている。
 あしが吸盤になっているのか。
 ペタッとガラスにすいついて、ときどき移動している。
 平地を歩くようだ。
 品川のビル街がみられない。
 窓いっぱいに、くろいクロスが張られてしまったようだ。
 いや布ではない。
 コウモリだ。
 コウモリの小さな、だが鋭い歯がガラスを噛み砕こうとしている。
 赤い目がこちらをにらんでいる。


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