田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

野口恭一郎氏を悼む/麻屋与志夫

2010-10-30 21:56:19 | Weblog
10月30日 土曜日

●おどろいた。こんなこともあるのだ。昨日ブログで作者注として、むかしの朋によびかけた。ところが……、今少し前、たまたまネットサーフィンをしていて知った。ネットにも載っていることだから実名をあかしてもいいかな。野口恭一郎が16日に死亡していた。竹書房の創設者。名誉会長だった。彼とはシナリオ研究所の四期生とし共に学んだ。

●神田の喫茶店で板坂と三人でココアを飲んだ。あの熱く香ばしいココアの味はいまでもわすれません。あなたにごちそうになったのでしたよね。

●いちど同窓会をやりたかったですね。元気なあなたに会いたかった。

●ご冥福をおいのりします。

●わたしはいますこしこの娑婆で小説を書きつづけます。わたしの精進を見守っていてください。

●こんど会うときは、おれもお陰で作家になったよ、と言いたいものです。

●それまでは、さようなら。 (木村正一)


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生涯現役/麻屋与志夫

2010-10-30 16:22:09 | Weblog
10月30日 土曜日

●朝から雨が降っている。
午後には、初冬にはめずらしく台風が来るとのことだ。

●昨夜は「さすらいの塾講師」を2時ごろアップした。
思うように書けた。
これで二階の寝室に上って……寝ようかな……とホリゴタツから立ちあがった。
足がカクっとした。
エコノミー症候群だ。
何年か前に罹ったのでおぼえがある。
金曜日で塾の時間がなかった。
十時間ほど座っていたことになる。
歩きだすのが怖くなりそのままホリゴタツでよこになった。
ダブル座布団くらいのおおきさの、カミサン特製の布団が敷いてある。
そのままうとうととした。

●カラスウリの精が夢に出てきた。
「わたしは小野小町なのよ」といっている。
カラスウリが――艶やかに赤く光っていたのに急速に色褪せた。
凋んでしまった。その移ろいいくカラスウリを毎日、悲しく眺めていた。
それから先日「卒塔婆小町」をしばらくぶりで読んだためだろう。
小町の老残、老醜が書かれている。
美しいものが凋落していくのは悲しい。

   

   

●小説を書いていて心配なのは、わたしにはもう若さがないということだ。
実年齢はともかく、小説に若さが、ツヤがなくなるのが怖い。
背筋が粟立つような恐怖。
体がおののくような戦慄を伴っている。
小説はあくまで青春の産物である、とわたしがおもっているからだろう。
ところがこちらは賞味期限切れの作家だ。
いろいろ事情があって、25歳以降、小説を書くことにうちこめなかった。
せっかく雑誌デビュは果たしていたのにと悔やまれる。

●三年ほど前に、塾生が激減した。
これでは老後の生活がヤバイということで、浅ましくもふたたび原稿料がほしくった。三度目のカムバックをめざしてブログで小説を書きだして、現在にいたっているわけである。だから文学年齢は28歳だと自称している。

●同じ志で芸術を選んだ朋は、作家になっている。
文学賞の審査員となり、鬼籍にはいっている仲間もいる。
出版社の社長になっている友だちもいる。
いちばんさきにモノになった者が、あとからくる仲間をひっぱる、助ける。
と……青春のひとコマのなかで約束した仲間だ。
でもいまさらおめおめと……恥ずかしくてそんなことはできない。
「助けて」と連絡はできない。
だいいち、これが木村正一の麻屋与志夫の作品だ、と胸をはって読んでもらえる傑作はまだ書けていない。もし書くことができれば、恩情にすがりたい。

●塾生が増えないかな。
そんな大袈裟なことはかんがえていない。
町内と市の行政から意地悪されていたので国民年金には加入していない。
無収入だ。だから塾の収入がなったら生きていけない。
でも、ものは考えようで、塾で毎晩黒板の前に立っているので心は若いのだ。
孫のような塾生が可愛くてしかたがない。
これであとそうだな……塾生が10人くらい増えれば赤字からぬけだすことができるのだ。月末になるとなけなしの貯金をおろして支払いにあてている。悲しいことだ。

●そんなことをおもって……ウトウトしていた。
朝になっていた。
キッチンからコーヒーの匂いがしてきた。

●朝から雨が降っている。午後には嵐?

●生涯現役。
生涯現役とツブヤキながら、またわが愛するPCのハルちゃんと向かい合った。



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スパークする髪/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-10-30 01:55:15 | Weblog
3

GGもミイマのよこに並んだ。
目の前ではコウモリが折り重なるようにガラスにへばりついている。
防音効果のあるガラス壁のわけなのに、きこえる。
いや、いままでは、きこえなかった。
確かにきこえなかったのに……。
心がどうかしてしまったのだ。
キーンという音まで耳の奥にひびいてくる。
機械の、たとえばドリルの回転音。
頭蓋骨に穴でも穿たれるような恐怖の音だ。
ガラスに蜘蛛の巣状の微細なヒビが走る。
ヒビは、ツッッと伸びる。
このままではガラス壁が、ビルの外壁がやぶられる。

「みんな、耳をふさいで」

GGもはじめてきくミイマの厳しい声だった。
いわれなくても、モニタールームのスタッフは耳をおさえていた。
くるしんでいた。ムンクの叫びのような表情。
「わたしはダイジョウブだから」
玲加がGGにかわってミイマのとなりの位置に立つ。

「このままでは……やぶられるわ」
玲加がつぶやく。
このとき、ミイマがガラスに額をよせた。
曇りでも拭っているようだ。
ワイパーのように何度かガラスを手の平で拭いている。
そして、両手をひろげてガラスにあてた。
ミイマの長い髪の毛がパッとひろがった。
花王のアジェンス。
東洋美髪処方で、芯からしなやかな髪へ。
というCMさながら。
美しい髪がガラス一面にひろがった。

髪が――青白くスパーク。

室内の照明が切れる。

闇のなかで無数の髪の毛が光っている。

「ミイマ」
GGが声をかけて走り寄る。
照明が元にもどった。
ガラス壁も……何事もなかったようにそこに在る。
コウモリは消えていた。
あれほどの数のコウモリが消えた!!!

「ミイマ。いまのは……」
「あなた、初めてのデートの時、打ち明けたでしょう」
「……?????……」
「しばらく使わなかったので……疲れたわ」
ミイマはGGの腕に支えられていた。
「わたしはマインドバンパイアだって……話したわよね」
そこまでいうと、ぐったりとしてしまった。
「わたしがなんとかする」
玲加がミイマの額に額を合わせた。
こんどは玲加の体が青白く光輝を放った。
「わたしたちの念波が青くみえるの。いま補給している」
わたしたち神代寺バラ園のものには特殊な能力があるの。
玲加がそっとGGにささやいた。



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