9
「この子、こなかった?」
日名子の顔写真を見せる。
翔子が学校のアルバムから引きのばしたものだ。
「ぼく夜からのシフで、かわったばかりだから」
「だれかわかる人いない」
返事はもどってこない。
パーテイドレスをきていたの。
と翔子がまだ押している。
赤と緑のシェイドの縞模様は進め、止まれのシグナルを連想させた。
GGは緑色を見つめた。
進めだ。
翔子たちにつづいて店内に入った。
円山町に隣接しているのに。
ここに澄ました感じの名曲喫茶がある。
ライオンがある。
昔のままのたたずまい。
GGはほっとした。
ノスタルジーにかられた。
だが、店内はヤングのふたり連れ。
あたりまえのことだが。
当然のことだが。
GGはそれらの客のなかで異質だった。
「このひと、見ませんでした」
レジで支払いをすませたふたり連れ。
翔子がまだネバっている。
迷惑をかけたので、GGだけのこって席に着いた。
「あのう。ぼくパーテイドレスの女の子ならみましたよ」
通路を挟んで隣の席の男が声をかけてきた。
翔子がレジで訊いていたときに入店したオタク風の男だ。
「ありがとう。これでなにか飲んで」
GGは万札だす。
遠慮するのに押しつけた。
店外に走り出る。
男が追いかけてきた。
「場所、案内しますよ」
円山町の方面に歩きだした。
「ここです」
古びた苔の生えているような石段の下だった。
きらびやかなネオンがまぶしい。
「ありがとう」
ネオンから脇の男に目をもどすと誰もいない。
「GG……。だれとはなしているの」
階段だ。 怪談だぁ。
今度こそ怪談ダァ。
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「この子、こなかった?」
日名子の顔写真を見せる。
翔子が学校のアルバムから引きのばしたものだ。
「ぼく夜からのシフで、かわったばかりだから」
「だれかわかる人いない」
返事はもどってこない。
パーテイドレスをきていたの。
と翔子がまだ押している。
赤と緑のシェイドの縞模様は進め、止まれのシグナルを連想させた。
GGは緑色を見つめた。
進めだ。
翔子たちにつづいて店内に入った。
円山町に隣接しているのに。
ここに澄ました感じの名曲喫茶がある。
ライオンがある。
昔のままのたたずまい。
GGはほっとした。
ノスタルジーにかられた。
だが、店内はヤングのふたり連れ。
あたりまえのことだが。
当然のことだが。
GGはそれらの客のなかで異質だった。
「このひと、見ませんでした」
レジで支払いをすませたふたり連れ。
翔子がまだネバっている。
迷惑をかけたので、GGだけのこって席に着いた。
「あのう。ぼくパーテイドレスの女の子ならみましたよ」
通路を挟んで隣の席の男が声をかけてきた。
翔子がレジで訊いていたときに入店したオタク風の男だ。
「ありがとう。これでなにか飲んで」
GGは万札だす。
遠慮するのに押しつけた。
店外に走り出る。
男が追いかけてきた。
「場所、案内しますよ」
円山町の方面に歩きだした。
「ここです」
古びた苔の生えているような石段の下だった。
きらびやかなネオンがまぶしい。
「ありがとう」
ネオンから脇の男に目をもどすと誰もいない。
「GG……。だれとはなしているの」
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