田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

戦いのいま/さすらいの塾講師 麻屋与志夫

2010-10-28 10:14:24 | Weblog
第六章 懐かしい過去、悲惨な現実

1

その羽ばたく飛翔体は宵闇の空で乱舞していた。
羽田空港のほうから大森の夕空に飛んできた。
そして、いまは品川方面に向かってとんでいる。
空一面に黒い邪悪な波がひろがっていく。
まさしくコウモリだった。どこにいままで潜んでいたのか???
そう思わせるほど、藍色の空を埋め尽くしてた。

「翔子と純クンが勝則さんのチームに所属したのでさびしくなったわね」
「目指すところはおなじだから。それにエクササイズのインストラクターとして週にいちどはきているじゃないか」
「毎日のように会っていたのよ。さびしいわ」

『GG刀エクササイズ』の入っているビルの屋上にミイマとGGはいた。
夕空を眺めていた。
むかし、この大森にはなんどかきたことがあった。
シナリオ研究所の四期生の仲間と『0の会』を結成した。
『シナリオ現代』を創刊した。
北村篤子さんは卒業をまたずプロデビューをはたしていた。
それにつづけとばかり大森に下宿していた松元が呼びかけてできた会だった。
板坂は作家に、野口は出版社の会長、松元はシナリオライターとして大成した。

懐かしいおもいでだ。
このような未来があるとは、おもってもみなかった。
あのまま東京に残っていたらどうなっていただろうか?
希望をもって若者が生きることのできたいい時代だった。
このような絶望的な異常性にとりこまれた未来ががあるとあのころわかっていたらもっとちがった生き方ができたろうか。わからない。

吸血鬼との戦いにまきこまれた日々があるとは想像もできなかった。
GGはミイマをかえりみた。
妹の娘が西早稲田に少林寺と練馬夢道流の道場をもつ村上家に嫁いだ。
おれのオヤジが野州夢道流の師範だった縁故からだった。
そして翔子がいる。ミイマとGGにとつては孫のような存在だ。
まめに会えなくてさびしくおもうのはGGもおなじだった。

回想は上空のコウモリの群れの異常な動きによってやぶられた。
トルネードのような黒い渦となって品川のKビルを襲っている。
「勝則さんの、ペンタゴン日本支部のあるあたりだ」
すばやくミイマが反応した。
携帯をとりだして翔子を呼んでいる。
ふたりは階段をおりてモニター室に急いだ。

作者注。実名をだしてしまった古い朋よ、お許しのほど。木村正一。



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