「反復音楽」の巨匠、フィリップ・グラスの自伝。
反復音楽(当ブログの解釈によるワーディング)とは著者がいうように「刻々と変化する反復」な音楽 。
というくらい、彼の音楽はユニークで、絶賛と批判が渦巻く人生だった。
誰になんと言われても気にしない性格だ、と本人がしれっと述べるのが頼もしい!(笑)
まず冒頭で驚く!
レコードショップを経営する父とともに、売れ残ったバルトークやストラヴィンスキーを聴いているうちに親子で現代音楽ファンに。
そうして シェーンベルグ さえをも仕入れるようになった、というエピソードで一気に掴まれてしまう。
500ページの大著だが、そんなこと全く気にならず読書に勢いがつく!
作曲者を目指し、シカゴ → NYジュリアード → NY → パリ → etc...
その中でも究極の人脈を築き上げた本拠地NYでの数々のエピソードに唸る。
ジャスパー・ジョーンズ、ラウシェンバーグ、リチャード・セラ、ジョン・ケージ、 アレン・ギンズバーグ etc…
時代を創った人物たちが次々と登場するのだ!
そうしてNYを語る中で、痺れるようなフレーズが幾つも登場する。
その幾つかを御紹介したい!
私は今でも、NYは人間のエネルギーや想像力、情熱を養う発電所のような場所だと思っている。
ここに住むアーティストたちの仕事は、この街と複雑に絡み合っている。
私も、少なくとも50代、60代になるまではそうだった。
「あなたの音楽はどんな音楽ですか?」とよく聞かれる。
「NYらしい音楽だと思います」(p.326~)
振り返ってみると、私の音楽に最大の影響を与えたのは、やはりNYという巨大なエネルギーシステムだったと思う。
私の音楽、とくに初期のアンサンブル曲のなかには、常にNYがあった。
グッゲンハイム美術館でのコンサート、〈12部からなる音楽〉〈チェンジング・パーツ〉それに
〈浜辺のアインシュタイン〉でさえ、どれも1976年までの成果だ。
NYという都市から生まれ出たものだ。
生まれ育ったボルティモアと違い、NYは週7日、1日24時間、活動し続ける。
パリは夜になると眠りにつくーメトロはシャッターを下ろし、歩道からは人影が消える。
しかしNYは決して眠らない。
だからこそ、私はここに来たのだ(p.322)
絶賛と批判が渦巻く中、自分の意思を貫くために彼が作曲家以外にした仕事は…
製鉄工場、配管工、タクシー運転手 etc… と多岐にわたる(汗)
しかもタクシー運転手は〈サチャグラハ〉の発注を受けるまで続けていたそう!
大変だなと思う一方、上記の発言から、そこもNYの「懐」のような気もしてくる…
結論:500ページを一気に読ませる強力なエネルギーは、彼自身の執念はもちろん、魔宮 NY パワーによってドライブがかかっている!
追記:来期のMETライブビューイングの予定が発表され、彼の「 Akhnaten 」が上演予定!