豆本三昧我褸芥(がるぁくた)ノート & 美人画あれこれ

日本の名作文芸と東西の名画の自作豆本の内容紹介のほか、その資料として集めている東西の美人画をいろいろ紹介しています。 

脱線 葡萄と女 3 Ariadne & Theseus の絵画に関する問題点について

2015年10月16日 | 今日の美女

 脱線後のさらなる寄り道である。
 最初のは、昨日も触れたテセウスが女神アテネの指示に従ってアリアドネを捨てる場面である。

問題 1 二枚目は一昨日掲載作品の一部拡大したものだが、この絵と下の画ではテセウスの退治した怪物は牛頭人身のミノタウロスではなく、人頭馬身のケンタウルスになっている。それと迷宮の外にいるもう一人の女は誰かということ。
     



問題 2 下二枚は Edward Burne-Jones作品で左は一昨日既出であるが、この二作品に出てくるもう一人の女は誰かということである。
一枚目だけでは侍女とも思えるが、二枚目の描き方ではどうしても侍女には見えない。 
  

 そこで考えられるのがアリアドネの妹の Phaedera パイドラ である。その三人を並べたのが左の Benedetto Gennari作品で、中央は既出の一部である。このパイドラはのちにアテネ王になったテセウスの後妻に収まるのだが、義理の息子に恋して撥ねつけられて(三枚目作品)云々というトラブルを起こす淫蕩な女である。
 こうしてバーン・ジョーンズの絵も含めて考えると、アリアドネ置き去りはパイドラが絡んでいるといえそうだ。Benedetto Gennariの作品の愛嬌をふりまくパイドラに鼻の下を伸ばしたテセウス、顔を背けるアリアドネとすれば、昨日のアリアドネの傷心も妹に恋人を奪われ恋人にも捨てられたといういっそう深い悲しみになるだろう。   
       


問題 3 下掲の二作品は アリアドネとテセウス のタイトルを持っていて、テセウスが横たわるアリアドネを残して船に乗ろうとしている場面と見えるだろう。これだけでは特に問題はないように思われるが・・・。
 
   Charles Le Brun  A1 とする                            Mikhail Ivanovich Kozlovsky  A2
  

下三点は Marcantonio Franceschini という同一画家のものである。
 B1・ B2 は「アリアドネ」というタイトルで、B2の奥には「豹」らしき動物も見えるが、とにかくこれまで見てきたものからしても問題はなさそうである。
 ところがB3は上のB1とよく似ているのに「アルミーダ(とリナルド)」という違うタイトルなのである。
 この絵の女性はアルミーダという違う女なのか、タイトルの間違いなのだろうか。
  B1                                         B2
  
  B3


 さらに続けて下を見てもらうと、横たわる女を残して船に乗ろうとしている男の絵であるが、これのタイトルも「アルミーダとリナルド」であってアリアドネではないし男はリナルドである。
 「アルミーダ」というはロッシーニやヘンデルのオペラなどに登場して、十字軍の騎士リナルドを誘惑す魔女である。離れ小島で恋に溺れているリナルドを二人の騎士が強引に連れ帰る所に追ってきたアルミーダだが、リナルドに同行を拒絶され失神した場面である。
   C1  Charles Herrard


   C2  Giovanni Lanfranco


 そこで改めてB1,B3の似たような場面でアリアドネとアルミーダの区別をつけるとしたらどこに違いがあるかといえば、アリアドネは眠っているのだからちゃんとした敷物や布団の上に横たわっているが、アルミーダは失神するのだから当然地面に直に倒れるはずである。従ってB3はアルミーダ、B1はアリアドネで正しいわけである。

 そこで問題3について見直してみると、A1とC1は同じ場面ではないか、そしてA2も地面に横たわる女を残して二人の騎士に連れられたリカルドでテセウスではなかろう、つまりA1,A2の二作品は「アルミーダとリナルド」を描いたものでタイトルは間違っているといえる。

 ところで、アリアドネと「葡萄」とはどんな繋がりがあるのだろうか。
 それに「星の王冠」とか「豹」とかの関係は ?


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