悪い響きの言葉です。
時代小説に縁の深い江戸の町を歩く企画で池波正太郎が度々
登場させた場所として紹介された寺社に隣接した公園で
高校入試を終え消化試合のように登校した下校時に
僕達はソコで二塁を省略した三角ベースをしてました。
バットはグーを握った素手、ボールは軟式テニス用でした。
近くには夏はかき氷、冬はおでんの鍋が店に入って直ぐの所に
置いてある駄菓子屋さんに野球の後は必ず寄って間食習慣。
僕が通学していた中学は学区域も広く越境入学者も
多かったので店の作法は地元の同級生が教えてくれました。
作法としては各自が串を持ち一度に二つ以上の具を刺したら
おばちゃんに自分の取ったおでんを申告し、可能な限り
素早く食べる・・・だけのセルフでした。
但し鍋を囲んだ全員が同時に食べ始めるという
古典的ガキの浅知恵を盛り込んだ作法でした。
当然のようにおばちゃんが間違えて多く請求したら
抗議して少なかった黙って払うのです。
連日通っても僕達は「出入り禁止」になりませんでした。
理由はおばちゃんが聖徳太子の生まれ変わりだったこと、
一度に何人もの申告を聞き分け瞬時に品名を金額に変換する
能力に長けていたのです。
またおばちゃんの動体視力はイチロー並みでしかも
ソロバン二級程度の暗算を容易くこなすと思われるほどの
計算能力の高さがあったのです。
地元の同級生だけが「俺は得した」と言うもんだから
連日懲りもせずに皆は店に通い続ける羽目になったのです。
今にして思うと彼は店のキャッチ、引き込み役だったのか・・・
おばちゃんは連日野球景気で稼ぎ
名実ともにガキどもを手玉に取ったと思われます。
仰げば尊し歌う頃、誰かが「やりやがったなババア」と
言っていましたっけ・・・
先輩も後輩達もきっと手玉に取られたと想像します。
味ですか?おでんの味は「単純に熱い!!!」だけでした。
冬の・・・ときたらソナタでもリビエラでもなく
僕にはババアなんです。