３月２８日（日） 日本昔話 （川越バージョン）

　むか～し　むかし

　といっても三日ほど昔のことじゃった

　小雨の降る夕方　おじいさんが沼のほとりを通りかかると

　一羽のアオサギが　それはそれは大きな鮒を飲み込もうとしておった

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　おじいさんは　あんな大きな鮒を　どうやって飲み込むのかな、

　と　しばし見ておった

3

　あまり重いので　サギも首が疲れるのじゃろう　

　ときどき首を下ろして　呼吸を整えては　又飲み込もうとしておった

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　そのようすをさっきから　一羽のカモメが見ておった

　カモメは通りがかりの　通行人を装っておるが　

　じつは　サギの獲物が気になって仕方ないことは　じいさんには　よくわかっていた

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　あんのじょう　カモメはだんだん近寄って来おる

6 だんなさん 大丈夫ですか

　もしもし　だんな　大丈夫ですか　カモメはいたわるようなふりをして　近づいてくる

　むかしは　酔っ払いを介抱するふりをして　懐から巾着を盗む悪いやつがおったが

　ちょうど　それみたいだ　ちょっと　気安く近づきすぎだよ

　じいさんは　このあと何かが起こるのではないかと　じっと見ておった

　

7 いい加減にしろ ！

　と　なんとしたことか　のどの奥まで魚を入れて　

　首を持ち上げるのも　重そうにしていたサギが

　両足でジャンプして　蹴りにいこうとするではないか

　カモメも腰砕け状態だ　まさかこんな気迫が残っていたとは

　じいさんもびっくじゃった　

　

　

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　いつまでも　ぼさぼさしてるからいけないんだ　

　サギも気を取り直して　再度飲み込みに集中

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　じいさんは思った

　サギには　つついて細かくして食べるという　知恵はないんじゃな

　反動をつけて　真上に持ち上げて　口を真上に開けてから　頭をゆすって飲み込もうとしているのじゃ

　これは　ニュートンの万有引力の法則を使っているのじゃな　

　うーん　サギは賢いのか　愚かなのか　わからん

10 あれ 魚がない

　ちょっと目を放したすきに　

　あれ　口に魚がない　いつ飲み込んだのかな

　と思ったら　足元に魚が落ちているではないか

　

11 あきらめました

　その後　サギは何度か　魚をくわえましたが　同じことの繰り返しばかり

　じいさんは　飲み込むまでやめないのか　どこかでやめるのか　それが気になりました

　だって　食べることは本能　人間だって　あきらめのいいのと悪いのがいるが

　サギだって　どうしようか考えているに違いない

　やがて　サギは魚からだんだん離れて行き　二度と戻ってきませんでした

　気がついたら　夕方五時過ぎ　じいさんは３０分も見ていました

　「四時には　家に帰っているっていったのに　雨の中なにやってたの」

　家に帰ったじいさんは　迎えが遅れたことで　ばあさんからしかられました　（おしまい）