９月２日（木） 助かったトンボの話 １

　　”ルリボシヤンマ♀　”（Ｋご夫妻、ありがとう御座いました）

　昔々といっても、昨日のことじゃった
昔もこんな話をやったな
爺さんと婆さんが
山の公園の東屋の下でお昼を食べておった
隣の池の上はやんまがひっきりなしに縄張り争いをしておった
突然羽音がして１頭のトンボが水に落ちおった
　名前はまだ分からんが大きなヤンマじゃ

助かったトンボの話 ２

　力の強いトンボじゃから
すぐに飛び上がると思ってみておった

助かったトンボの話 ３

　足にアオミドロが引っかかったようじゃ
飛び上がりそうになって落ちてしまった

助かったトンボの話 ４

　今度こそ
パワー全開で飛び上がったが
さっきより藻がいっぱい着いている
もがいて余計に藻を絡めてしまったようじゃ
　ちょっと心配になってきた

助かったトンボの話 ５

　２度目、３度目
パワーは少しずつ落ちてくる

助かったトンボの話 ６

助かったトンボの話 ７

　そらがんばれ！
だんだんとむなしさがただよってくる

助かったトンボの話 ８

　ああ！
ついにひっくり返ってしもうた
もうなすすべはないな
このまま死を待つしかないのか

　一部始終をフォーカスしていた爺さんは
なにか助けるものはないかと探すと
東屋の天井に一本の棒が横に渡してあるではないか
昔も誰か同じことをやったのかな
爺さんはアオミドロと一緒にトンボを池から上げおった

助かったトンボの話 ９

　絡み付いた藻を取り除いて
写真を撮ろうとばあさんに「持ってくれ」というのじゃが
「こんな大きなヤンマは持ったことないから怖い」としり込み
仕方なく自分で持って片手撮りをせねばならなかった

助かったトンボの話 １０

　羽を乾かすために池の杭の上に置いてやった
藻とトンボは大の仲良しと思っていたのに
藻に命を奪われかねない関係があるなんて驚きじゃった
　トンボは小刻みに羽を震わせると水滴は見る見る消えていった
やがてやや重そうに池とは反対の茂みに飛んでいった
　人命（虫命）救助じゃ
　恩返しなんか気にせんでいいから
　どうしてもというなら
　大きくなくて小さい方のつづらで結構じゃから
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（おしまい）